644 名前:女神様が、見てる…【SS】[sage] 投稿日:2011/06/03(金) 00:37:31.40 ID:07zFjuyUO
「桐乃、二十歳の誕生日おめでとう」
「ありがとう、京介…」
「「乾杯!」」
ここはとあるVIPルーム、中にいるのは二人だけだ。
用意されたシャンパンをいただく俺たち。今日からは、こうして桐乃とおおっぴらに酒を飲めるわけだ。
まあ、ここでの飲食が今日の目的ではないんだけどな。メインイベントはこの後に控えてるんだな、これが……
時間になった。建物の外に出た二人の前には、魔法の馬車ならぬ、ヘリコプターが出番を待っていた。
乗客はやはり俺たち二人だけ。生まれてはじめて、「貸し切り」というのをやってみたわけだ。
「かなりムリしちゃったんじゃないの?」
おっしゃる通り、対価はかなり高くついたが、たまには桐乃に格好いいとこを見せてやりたくてな、まあ、頑張ってみたよ…
二人を乗せたヘリは、夜空に向かって飛び立つ。あっという間に、俺たちの視界に
東京の夜景が飛び込んでくる。スカイツリー、東京タワー、お台場……
「うわあ、凄いきれい」
「確かに綺麗だが、桐乃の輝きに比べればまだまだだな」
「今、何て言った?」
「…二度は言わねえよ」
「久々にキモいと言わせてもらう。キモっ、キモっ」
「……スベったか……」
「ウソウソ、京介の気持ちは、ちゃんとあたしに伝わってるから」
そう言うと、桐乃の暖かい手が、俺の手を握ってくる。
「間もなく横浜みなとみらい地区です。」
パイロットさんの声に我にかえった俺は窓の外に目を向けて目的の建物を探す。
ヨコハマインターコンチネンタルグランドホテル。
俺はその建物の形をずっと半月にイメージしてたが、あれは実は「風をはらんだヨットの帆」なんだそうだ。
その帆船の最上部を見るために、俺は今回のプランを立てたと言っていい。
そこにあるのは、青白い光に照らされた女神像「みちびき」だ。
「なあ、桐乃。あのホテルの女神像に向かって願い事を唱えると、願いを叶えてくれるらしいぜ」
「へえ、じゃあ、ちょっと願ってみるかな…」
「…で、何を願ったんだ、桐乃は」
「何って、京介と同じことに決まってるじゃん」
「俺と?」
「もちろん。だって、
『恋人同士で願うと、二人が結ばれる』
のが、あの女神様のご利益なんでしょ」
「何だ、知ってたのか」
「とーぜん。まあでも、まさかヘリで空から京介と見に来れるとは思ってなかったケドね」
俺もまっとうなデートスポットをいろいろ研究しだして、ここの女神像の話を知ったわけだ。
俺たちの仲を続けていくには、まあいろいろ越えていかなきゃならないことがあるからな。
だから、ちょっと女神様の力も借りてみようって話だ。
きっと女神様は、俺たち二人の歩む道筋を導いてくれるに違いない、そう俺は思ったわけ。
「ステキな誕生日プレゼントをありがとね、京介。
これはあたしからのお礼というか、何というか…」
そう言って桐乃は身を俺の方に乗り出して来た。
「「二人で、いつまでも、一緒にいようね」」
そして俺たちは、女神様の前で、誓いのキスを交わした……
おわり
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最終更新:2011年06月03日 14:32