673 名前:SS/【実家で兄妹二人きりの夜(とある9月の祝日)】[sage] 投稿日:2011/06/03(金) 08:44:44.59 ID:FRMFJoeb0

【実家で兄妹二人きりの夜(とある9月の祝日)】

「なぁ、桐乃。本当に大丈夫か?」
「仕方ないじゃん。あたしも超嫌だけど、おじいちゃんとおばあちゃんがせっかく準備してくれたんだし…」
俺たち二人は、その空間に踏み込めずに襖のところで躊躇していた…。
「でもよ、これは流石に無いぜ…」
「うん、ちょっと覚悟がいるかも…」
客間にはシングルサイズの布団が一つに枕が二つ、どうしてこうなった…。


こういう状況に俺たちが置かれてしまった経緯を説明しておかなければなるまい。
季節は九月の三連休、親父も偶然休みが取れたため、彼岸と季節外れの盆帰りも兼ね、久々に家族全員でお袋の実家に帰省した。
出迎えてくれた爺さん婆さんは俺たち兄妹が昔のように仲良くなった事に気付き大層喜んでいた。
桐乃は頻りに『こいつが勝手にベタベタしてきているだけで、あたしにとっては超ウザいだけ!!』と否定してたけどね。
どうやら仲良くなれたと思っているのは俺の方だけらしい。
へへへ、だがよ、シスコンを自覚したからには意地でも超仲良くなってやるからな!!

飯を食ったりテレビを見ているときもギャーギャーと兄妹で騒いでいたら、せっかくだから、ついでに昔みたいに一緒に寝たらとの提案が…。
偽彼氏騒動の顛末の影響か知らないが、お袋だけが反対していたが、賛成多数で決まって今に至る。


「どっちから布団に入る?」
「そんなの、お前から入れよ」
「なんか、あんたを待ってたみたいで嫌」
「じゃあ俺から入る、ってことで良いな?」
「それだと…、あんたの布団に侵入するみたいで…、嫌だ」
「ハァ!?それじゃあ、どうすりゃいいんだよ?」
「…仕方ないから、一緒に布団に入る…」
「俺は別に構わねーけど…。それだと新婚さんみたいじゃね?」
「!!!!」
バンッ!!と、久々に俺は頬をぶっ叩かれた。
説教をしてやろうを桐乃の顔を見ると怒っているのか気恥ずかしいのか、焼きリンゴみたいに顔を真っ赤にしていた。(←超かわいい)
「痛てーな、おい。いい加減、いきなり手を出すのは止めろ!」
「あ…、あんたが…。し…、新婚さんなんて…、超キモい事を言うからじゃん!!」
その後も話し合った結果、桐乃の提案を採用することになった。


「…いいな、電気消すぞ…」
「…うん…」
部屋の電気を消し、夏用の薄い掛け布団の左端を俺が、右端を桐乃が持って床についた。

「…狭いな…」
「…うん…」

お互い仰向けの姿勢をとってみてシングルサイズの面積の小ささに愕然とした。
予想以上だぜ、二人で寝るもんじゃねーわ。ちょっと体を動かすだけで桐乃に当たっちまう。
「ドエロ!!妹の太ももをいきなり触んな!!」
「仕方ねーだろ、こんだけ狭っ…」
反論しようと桐乃と顔を向き合わせると、どれだけこの状況がありえないものかが分かった。
月明かりに照らされた俺を見つめる桐乃の顔が近い…、まつ毛の1本1本までハッキリ見えそうだ…。
マズイマズイ、ちょっと顔を動かせばキス出来そうな距離だぞ、これ…。
「………」
「………」
「…ねぇ、あっち向いて寝てよ」
「…ああ、すまん」
予期せず超至近距離で見つめあうカタチとなってしまった俺たちは、気恥ずかしくなり、互いに背を向けた姿勢をとった。

リンリンリン、キリキリ、…虫の鳴く音が心地いい。
窓から入ってくる夜風は室温を程よく下げ残暑の夜であることを忘れさせてくれる。
人工的な音も、冷却風もない寝るには最適の環境。
桐乃と会話をしてから1時間くらいは経ったろうか。
寝返りがうてないわ、桐乃の体熱を背中で感じるわ、桐乃のコロンの良いニオイが鼻孔と煩悩を刺激するわで、さっぱり寝れん。

「なぁ、桐乃。起きてるか?」
「…なに…?」
「桐乃、俺、もう限界だ。このままじゃ悶々として寝れねーわ」
「えっ…?えええ!!」
「いきなりでかい声出すなよ…!親父たちや爺さん婆さんが起きちまうじゃねーか…!」
「だって、あんたが…、あたし、まだ全然…」
「何焦ってんだよ?」
「それは、いきなり京介が…」
やめてくれ、この状況で名前呼びは反則だろ!!俺、アタマがオカシクなって死ぬぞ!!
「だから、こっそり布団を持ってくるから、別々に寝ようぜ。お前だって、こんなに暑い夜なのに、俺と一緒じゃ寝れないだろ?」
「……!!!バカ、死ね!!」
「ブホ、いきなり兄に枕を投げるな…!」

客間を抜け出し、押し入れを開けて布団とタオルケットを見つけた。
ブツを抱えて忍び足で再び客間に戻った俺は、桐乃が寝ている布団とピッタリと付くように持ってきた、追加布団を敷いた。
「で…、何で布団をわざわざくっ付けるわけ?」
「そりゃ、俺はただお前と…」
「キモ…。どーでもいいけど、絶対にこっちに来ないでよ!」
「へいへい、気を付けますよ」
そうして、お互い別々の布団で背中を向き合って再び眠りに就く姿勢をとった。

「なぁ、桐乃」
「…今度は何…?」
「怒らないで聞いてくれよ?」
「内容による」
「去年、俺が麻奈実の家に泊まった事があったろ?」
「………」
「あん時、実は今と同じ状況で寝たんだよ…」
「…地味子とのノロケ話を自慢したいワケ?」
「ちげーよ、話は最後まで聞け」
「…ふん…」
「その時は直ぐに眠れたんだよ。何だろうな?変な喩えだけど、『家族』と一緒にいるような安堵感があったからも知れねーな」
「…ふーん…」
「でもな、実妹とあの時と同じ状況になってるのにさっぱり寝れん。桐乃が傍で寝ているって意識しまって変に緊張してるのかも知れねーな」
「…あたしがウザくて一緒に寝たくなから?」
「ちげーよ、バカ。俺が重度のシスコンだからだよ。桐乃が直ぐ横で寝てる…。その気になれば、一晩中ずっと寝顔を見続けられる…、なんて妄想が止まらねーんだよ」
「…へぇー。京介は、あたしの事を意識しちゃって寝れないワケ?あーあ、キモイキモイ、このシスコン、マジキモ〜イ」
「うっせ。」
「フヒヒ、そういえばささー、大昔の話だけど一緒に寝たことあったじゃん?あの時も京介は眠れなかったの?」
「バカ言え。あんときは普通に眠ってたよ。お前だって、お互いギュっと抱き合って寝てた事は覚えてるだろ?」
「……!!キモイ事を思い出すな…!あーあ、鳥肌立っちゃったじゃん…」
「何、寒いのか?なら、俺が温め…」
「セクハラ発言は止めろ、このシスコン…!幼い兄妹の美しい思い出を汚すな…!」
「なあ、ちょっと位なら抱きしめてもいいんだぞ?」
「イヤ、絶対」
「ちぇ…、桐乃のけーち…!」
「うっさい、京介のばーか…!」

「ピカー、ゴロゴロゴロ…!」
「…はぁ、何?」
「ほら、桐乃。雷が鳴ってきたぞ。怖いだろ?さあ、お兄ちゃんをギュって抱きしめたくなってきただろ?」
「…プッ、クククク…!そんなにあたしに抱きしめてもらいたいワケ?」
「いや、なんつーか引くに引けなくなってよ…。へへへ」
「ホントは超マジなくせに、見栄を張るな」
「へいへい、悪かった悪かった。でも、何だろーな、バカな話したせいか眠くなってきたぞ」
「そうだね、あたしも…」
「今度こそ寝るとするか。じゃあ…、おやすみ、桐乃」
「うん…。おやすみ、京介」
顔を向けあう事は一切なかった背中合わせでの会話だったけど、桐乃の表情はずっと脳裏に浮かんでたよ。
桐乃とおやすみって言い合ったのは何時ぶりだろうか?
そもそも、さっきみたいな他愛のない会話だって、ちょっと前までは出来なかったもんな…。
あーあ、どうも妹が戻ってきてからというもの桐乃の事ばっかり考えてるな…。
どうしようもないシスコン野郎だぜ、俺はよ…。



「―あでっ…」
「あっ…!」
いつの間にか眠っていた俺は朝焼け前、何かに頭がぶつかり夢から覚めた。
ゆっくりと瞳を開けてぶつかった何かを確認すると…。

「―――………。!!!」

桐乃の顔が目の前に!!しかも鼻と鼻がくっつきそうな位の超至近距離じゃねーか!!
これは二人で一つの布団に寝てた時より近いぞ!!
右手は握られていて、左手は桐乃の肩を添えていて…。
ええええええっ、まさか桐乃と抱き合っちゃってる!?

「―きょう…、すけ…」
「きりの…?」

CAUTION、CAUTION!!
桐乃に潤んだ瞳に見つめられ名前を呼ばれた瞬間、俺の理性が、煩悩爆発の警告を発したのを強く感じた。

ほんのちょっと、桐乃を抱き寄せればキスできんじゃね!?
ダメだ、夜明け前の薄明りに照らされている艶ややかな唇は危険だ、見てはいかん!!
唇を見ないように、ちょっと視線を下に向けると…、パジャマの隙間から谷間がおはようございますしてやがる!!
やわらかそうだ…、タッチしたい、っていうか露骨に触りたい…。
いかん、ダメだ、目を閉じろ!!
今度はふわ〜ん、って脳髄をコロンの良いニオイが刺激してオカシクなる!!!!
視覚が無くなったせいで、余計にニオイを意識してしまう…。
ああ、ギュって抱きしめてクンカクンカしたいな、桐乃!!

キスする!?おっぱいタッチ!?ギュッと抱きしめる!?さあ、どれ!?

『コーケコッコー^^!!!』

「「!!!!」」

我に返った俺たちは、バッと密着状態を脱して即座に離れ、また背を向けあった。

危なかった、鶏が居なければ死ぬところだった!!
京介ェ…。てめぇはシスコンの風上にも置けないド畜生だ!!
妹に手を出す兄がいるか、バカ者が!!!!

「ごめん…、寝てたのに勝手に抱きついて…」
「いや、こっちこそ…」
「…言っておくけど、京介が超しつこく抱き締めろって言ったせいだから…」
「…そうか、悪かったよ…」

俺は極度の緊張から脱したものの、触れていた桐乃の柔らかさと、さっきの煩悩が脳裏に焼き付いちまって…、それ以降、寝れなかった。




―――帰りの車中―――
「あらあら、寄り添いあって寝ちゃって…。昨日の夜、あまり眠れなかったのかしら?」
「そうだな、兄妹一緒に寝るなど久しぶりだったろうしな…」
「それに、手まで繋いじゃって。こんな光景を見させられると、二人とも結婚どころか恋人もできない気がしますねお父さん」
「うむ。だがな、二人の子供は見てみたいものだ」
「お父さん!?それって、まさか…!?」
「いや、違うぞ!母さんは重大な誤解をしている」
「ごめんなさい。でも、私の勘違いが当たって…。それで、万が一お父さんが許しても、私は絶対に許しませんからね!」
「………これ以上、騒ぐのは止そう。せっかく幸せそうに寝ているのだからな」
「…そうですね…」

だそうだ、京介。
仮に、本当にその時が来たのならば、去年、お前が俺に桐乃の趣味を認めさせた様に、説得できるか?
あの時の様に勢いだけでは納得せんから覚悟しておくことだ。
それに、俺を説得できたとしても、最難関の母さんがいるのだ…。
…フフフ、期待せずに気長に待っているぞ、京介。


FIN



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最終更新:2011年06月10日 01:11