724 名前:時をかけるあやせ【SS】前編[sage] 投稿日:2011/06/23(木) 22:47:34.16 ID:lrzbn46HO [8/9]
私、新垣あやせは人生最大のピンチを迎えています。
桐乃が……私が大好きな桐乃が、よりにもよって、あのお兄さんと結ばれようとしてるんです!!
今更お兄さんの悪業を言い出してもきりがありませんが、
…一度は私に結婚してくれとまで言ってくれたのに…
絶対お兄さんを許せません!!
とは言うものの、もはや二人の仲を引き裂くのは不可能です。
だいたい、そんなことしようものなら、お兄さんはともかく、桐乃が悲しみます。
桐乃が悲しむ姿は見たくない。でも桐乃が、お兄さんと結ばれる未来を見るのは嫌なんです。
私はどうすればいいんでしょう……
そうだ、未来を変えたいのなら、過去に行けばいいんです!
※※※
というわけで私は今、七年前の千葉市に来ています。
私には秘められた力があるんですよ。賢明な桐乃スレの住人の方々ならお気づきのはずです。
私が、桐乃スレで変態レスをつけた人物を特定し、すぐさまその人の背後に立てる訳を……
さて、桐乃とお兄さんに会ってどうするか? どうするか??どうするか???
…はっ、考えてませんでした!
えっと、桐乃とお兄さんが結ばれないようにするには???
・お兄さんを始末する……これはさすがに無理ですね
・桐乃を誘拐する……かわいい盛りの桐乃はできれば手元に置いておきたいですが、これも無理です
・桐乃がお兄さんを大嫌いになるように仕向ける……これが無難ですね、そうと決まれば。えへっ♪
※※※
私の目の前に、小学校帰りの桐乃とお兄さんが手をつないでやってくるところです。
くぅ……こんな小さいのにラブラブオーラを周囲に見せつけています。
これは由々しき事態!早速作戦開始です!!
「高坂京介くんですね」
「はい、そうですけど、お姉さんは誰ですか?」
「私は田村麻奈実さんの親戚です。麻奈実さんから京介くんを呼んでくるように頼まれたんです」
「そうですか…じゃあ桐乃、先に帰ってて」
「うん、わかった。じゃあね」
どことなく淋しそうな桐乃。もうシスコン野郎の汚染が始まってるようです。 早く何とかしないと……
「じゃあ私が桐乃ちゃんを家まで送っていきますね」
こうして私はまんまと桐乃をひとりにすることができました。
後は桐乃に、お兄さんへの嫌悪感を植え付けるだけですね。
「桐乃ちゃん?」
「なーに? えっと、お姉ちゃんの名前は?」
「あや……あやか、藤崎あやかです」
「あやかお姉ちゃんかぁ」
かわいい、可愛すぎます。私にも、こんな愛らしい妹がいれば……妹が、欲しいかも……
おっといけない、今は作戦遂行です。
しかしながら、桐乃にお兄さんへの嫌悪感を植え付ける作戦は上手くいきませんでした。
どんなに私がお兄さんの極悪非道ぶりを説明しても、
「お兄ちゃんはいつもやさしいもん!」
「お兄ちゃんはそんな悪い人じゃないもん!!」
挙げ句の果てには
「きりのは大きくなったらぜったいにお兄ちゃんとけっこんするもん!!!」
…もしかして、私のやってることは、逆効果なのでしょうか?
そうこうしてるうちに
「お父さん、あの人がウソをついて桐乃を連れていこうとしたんだ」
「お嬢さん、ちょっと話を聞かせてもらえないかな?」
お兄さんがおじ様を連れて戻ってきてしまいました。警察官のおじ様に拘束されたら厄介です。
ここは、ひとまず退散です。
725 名前:時をかけるあやせ【SS】後編[sage] 投稿日:2011/06/23(木) 22:49:06.13 ID:lrzbn46HO [9/9]
※※※
「待ちなさい!!」
おじ様は必死に追い掛けてきますが、私も能力者です。うまくおじ様の追跡をかわすのに成功しました。
しかし、
「いたたたたっ……」
着地の際にバランスをくずして転んでしまいました。擦り傷だらけです。
「あやかお姉ちゃん…」
そこには、桐乃の姿がありました。
「お姉ちゃん、ケガしちゃったの?」
「大丈夫ですよ。このくらいの傷、たいしたことありません」
「お姉ちゃんも、お兄ちゃんみたいなこというんだね。でもいたいんでしょ、
ほんとのこと言わないとダメだよ」
桐乃の純真な目に見つめられると私は、それまで桐乃にやってきたことが恥ずかしくなって
涙が、涙がどんどん溢れてきました……
「やっぱりいたかったんだね。なかないで、いい子いい子。
きりのがあやかお姉ちゃんをなおしてあげるね」
桐乃は水で濡らしたハンカチで私の傷口を拭うと、ポーチから絆創膏を取り出して貼ってくれました。
「桐乃ちゃん、上手だね」
「うん、だってお兄ちゃんがケガしたときにも、こうしてお兄ちゃんをなおしたんだよ」
そう言う桐乃の顔は、本当に嬉しそうでした。
※※※
私は、もう一度だけ、桐乃に聞くことにしました。
「桐乃ちゃんは、誰が好きなの?」
「お兄ちゃんだよ。いちばん、いちばーんお兄ちゃんがすき!
だからきりのはね、大きくなったら、ぜーったいに、お兄ちゃんとけっこんするんだよ!!」
私にはもう迷いはありませんでした。
桐乃がお兄さんを好きなのは、こんなに小さい時からの、偽りのない気持ちだと、わかったから。
※※※
「桐乃ちゃん、ありがとう。私、そろそろ帰らないと」
「そうなんだ、またお姉ちゃんにあえるかな?」
「わからない。でも一つだけ、お姉ちゃんの願いを聞いてくれるかな?」
「なに、なに?」
「お姉ちゃんのよく知ってる女の子で、新垣あやせちゃんという子がいるの。
その子にあったら、桐乃ちゃんの一番のお友達になってくれるかな?」
「いいよー。じゃあやくそくね」
私は桐乃と指切りをして、元の時間に戻りました。
※※※
「お兄さん、どうあっても、桐乃と結ばれるおつもりなんですね」
「ああ、男に二言はねえ」
「じゃあ、過去の私への発言『結婚してくれ』の精算と償いをして貰います。いいですか?」
「わ、わかった……」
「では、目を閉じてください。覚悟はいいですか」
意を決して目を閉じるお兄さんの唇を、私は奪いました。
さようなら、私が大好きだったお兄さん……
そして、これからは桐乃を宜しくお願いしますね、お兄さん……
これから先、桐乃じゃなくて私や他の女の子に色目を使ったら、ブチ殺しますからね、約束ですよ……
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最終更新:2011年06月25日 00:50