321 名前:婚前旅行【SS】[sage] 投稿日:2011/06/26(日) 01:36:19.56 ID:5UPAdi2IO [1/2]
http://www.gakko-bijutsukan.com/
このプロジェクトのとある企画から妄想

『ながの ながのです ご乗車ありがとうございます』
やたらテンション高い桐乃と共に、俺は長野駅のホームに降り立った。
桐乃と二人で行動するのにはもう慣れたが、今回の旅は分からんことはかりだ。
まず目的が、桐乃の学校での研究発表の為の美術鑑賞ということ。それでわざわざ長野まで行くもんなのか?
そして俺。まあ他県だから付き添いはわからんでもない。しかし、なぜ桐乃は俺にスーツを着させたのだろうか。分からん…
「ほら、早くはやく」
上機嫌な桐乃に引きずられるように俺は長野駅を後にした。

しばらく歩いてたどり着いたのは、地元の中学校だった。なんでも、『学校を美術館にしよう』ということで、
芸術家や大学生、そして生徒が一体となってつくった様々な作品で学校を埋めつくすそうだ。
確かに、見てて面白い内容だ。教室の真ん中にクジラの尾びれがあったり
まるで自分が空を飛んでいるかのように、教室の中に四季折々の下界がつくられていたり……
桐乃と一緒に、俺はしばし不思議な世界を旅していた。

※※※
そんなこんなで教室をまわっていると、いきなり元気な声で呼び止められたのだった。
「こんなきれいな彼女連れてデートとはねえ、この色男!!
せっかくだから寄っていきなよ」
大学生くらいのお姉さんが指差すそこには『ブライダルウェディング櫻姫殿』の文字があった。
「ブ、ブライダル??」
「今更照れんなって、そんな気合い入った格好してるクセに。
それじゃ、彼女には素敵な衣装を着てもらうから、彼氏はしばらく待っててね」
そういうとお姉さんは桐乃を連れて奥に入って行った。
どうやらこれもアート企画の一つらしい。見ると中学生が何人もウェディングドレスを着ていた。
ドレスを着ていたみんながみんな、とても嬉しそうな顔をしていた。
(そうだよな、花嫁姿は憧れだよな。桐乃も、きっとこれが目的でここに来たんだな。
そうすると俺は、その気持ちにどう応えてやればいいんだろうな?)

「おまたせ、京介」
その声に顔を向けると、眩しいばかりの純白のドレスに身を包んだ桐乃の姿があった。
「……どう?似合う、かな?」
顔をほんのり赤らめて尋ねる桐乃に、俺もなんだかどぎまぎしてしまったが、
「綺麗だよ 桐乃……」
俺は本心から、そう言えた。
「ありがとう、京介……」

※※※
「さて、それでは桐乃さんと京介さんの結婚式を執り行います!」
先ほどのお姉さんが高らかに宣言しやがった。いったいどうしてそうなるんだ?
しかしそんな俺の気持ちにお構い無しに、お姉さんがどんどん場を盛り上げて行くのだった。
いつの間にか、いかにも結婚式らしいBGMが流れ、周りにはどんどんギャラリーが集まってきた。
今度は、俺が顔を真っ赤にする番だった……

用意されてた小道具の指輪を、俺はやっとの思いで摘んで、桐乃の指に通す。
「なに緊張してんの?」
「うっせえ」
だってこの姿をみんなに見られてんだぜ。しかもカメラマンが撮影までしてる。
しまいには「キス♪キス♪キス……」
ギャラリーが合唱し始めやがった。学校なのにいいのかよ?
俺はたまらずお姉さんの方を見ると彼女は大きくマルのサインを出してた。

「桐乃?」
桐乃は黙って、目をとじていた。
俺は覚悟を決めて深呼吸をすると言った。
「桐乃、大好きだ」

心臓が飛び出しそうなくらいに、でも、とても心地よい、二人の甘いひとときが、そこにはあった……


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最終更新:2011年06月29日 23:34