69 名前:【SS】兄妹で妹空を観たら[sage] 投稿日:2011/06/28(火) 20:29:05.74 ID:OY9U/oQD0 [2/13]
急に妄想が浮かんだので投下

【兄妹で妹空を見たら】


『アンタ……あたしのこと、好きなワケ?』
『……ばーか。 じゃなきゃ、ここまでしねえよ』

 少年は少女の長い髪に指を通し、慈しむようにスッと頬に手を添える。
 その視線は、ただ真っ直ぐに目の前の愛しい人を捉えて離さない。
 少女もまた、そんな少年のまなざしを喜びとともに迎えていた。

 やがて、どちらからともなく、「恋人」たちはゆっくりと目を閉じ、震える唇を合わせようと、
 体を抱き寄せあった。そして―――

「うっひょぉおおおぉォ――――――! キスシーンきぃたぁあ――――――!!」

 となりに座っている桐乃が奇声をあげた。
 放り投げたクッションが放物線を描いて、俺の後方にポスンと落ちる音がした。

 妹は気持ち悪い声をあげながらジタバタジタバタ―――ガタン。ソファから落ちて、今はリビン
 グの床を転がりまわっている。
 どうでもいいが、痛くなかったのだろうか。

「うへへへ………えへへへへぇ……」

 桐乃は大変だらしない笑顔(?)でご満悦である。決して他所様には見せられない姿だ。
 なんせ床を転げ回ったせいで、スカートがめくれ上がって、パンツが見えそうになっている。

 ………………………………。

 今の沈黙には何の意味もないから、安心してほしい。

「うるせえぞ、そこのバカ! お前このシーン何回もみてんだろーが!」
「だってさ、だってさ! このシーンちょう良くない!? イイよね!?」

 がばっ!と起き上がって詰め寄ってくる桐乃。
 ふんふんと荒い鼻息が俺の顔にかかりそうな勢いだ。
 うわあ!頼むから…………そんな接近してくんな!このバカ!

 俺たちが観ているのは、『妹空』――桐乃が書いたケータイ小説のアニメ版――の録画DVDである。
 商用DVDはまだない。すぐにヤツのコレクションに加わるだろうけどな。

「あー! もっかい! もう一回見ようっと!」

 ピッ。…………ピッ。

『アンタ……あたしのこと、好きなワケ?』
『……ばーか。 じゃなきゃ、ここまでしねえよ』

「うっひゃぁっはぁああァ―――――――!!」

 危ねぇ!?
 俺は桐乃が振り上げた拳を華麗に回避した。

70 名前:【SS】兄妹で妹空を観たら[sage] 投稿日:2011/06/28(火) 20:29:23.76 ID:OY9U/oQD0 [3/13]
「落ち着けっつの! 危ないだろーが! 親がいないからって騒ぎ過ぎだぞおまえ!?」

 暴走した桐乃は止まらない。イヤンイヤンと頭を振りながらリビングを駆けまわっている。
 ……なんか、昔こども向けアニメにこんなヤツいた気がする。『しゅっぽぽー!』とかってやつ。
 楽しそうでとてもいい事なんだが、流石にウザ過ぎて、ちょっとイラっとしてきた。

『リノ……大好きだ』
『あたしも、好き……』

 苛立つ俺を余所に、画面のバカップルがイチャついてやがる。非っ常に濃厚なキスシーンだ。
 ぶっちゃけちょっとエロい。

「……バカな。 土曜夕方6時から放映していい画なのかこれは……!?」
「ふひ……フヒヒヒヒ…………」

 恐ろしい事に、このアニメの原作者は今隣でキモチワルイ笑顔を浮かべている俺の妹である。
 さらに恐ろしい事は、きっとこのキスシーンが妹モノのエロゲーを参考に書かれたであろうことなのだが。
 …………なにが悲しくて、妹の考えたキスシーン映像を、妹と並んで視聴しなくてはいけないのだろう。

 カオスすぎる。

 だが、桐乃はそんなこと気にならないのだろうか、ハァハァ言いながら画面に集中している。
 うへぇ……ある種すげぇ……。

 ―――と、俺が大変気まずい思いをしていたところで画面がフェードアウトし、録画分の放映は終わった。
 最近売れ出したガールズバンドが歌うエンディングテーマを聞き流しつつ、やっと解放されるという開放感
 を感じながら、んー!っと背筋を伸ばす。
 
「ねぇ」
「あん?」

 声をかけてきた桐乃は、俺の目をじっと見つめ、

「アンタ……あたしのこと、好きなワケ?」

 そう訊ねた。



 あとは脳内補完で



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最終更新:2011年07月02日 00:20