114 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2011/06/28(火) 21:46:06.89 ID:Had/pIA70 [6/7]
>>69
俺脳内ではこうなった。


どうせいつもみたいに俺をからかってるんだろう。
たとえ真面目そうな顔をしていても、こんな事を言いはじめた桐乃をそのまま受け取るのは危険すぎる。

・・・・・・けど、俺が引っかかってやったら、こいつ喜ぶんだよな。

俺は内心ため息をつくと先ほど少年が口にした言葉を脳内から引き出す。

口を開け、

「―――」

しかし言葉は出なかった。

セリフを忘れたわけじゃない。このシーンはもう十回以上もつき合わされ、完全に覚えてしまっている。

桐乃は変わらず真剣な表情で俺の目を見つめている。
―いや、よく分からないが、少しだけ先ほどとは違う心が伺える気がする。

「おまえさ、俺をからかって楽しいの?」

気づいたら、俺はそう口にしていた。

「え?」

「桐乃は俺の事嫌いなんだろ?そんな俺に『好きだ』って言われて嬉しいのか?」

「それは―」

「俺だってさ、こういうの結構疲れるんだよ。
 お前が喜んでくれるなら何度でも言ってやるけどさ、
 ただ俺をからかうのが面白いってだけなら止めてくれねえか?」

「あ、あんたは―」


119 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2011/06/28(火) 21:47:25.34 ID:Had/pIA70 [7/7]

桐乃が俺を睨みつける。先ほどまでの機嫌の良さなど見る影もない。
だが、俺の意思とは関係なくあふれる何かが、俺に言葉を続けさせる。

「そういうのはさ、嫌なんだよ。
 心が、疲れるんだよ」

桐乃の目が一瞬大きく開かれ、次に伏し目がちになる。

「―あんた、あたしが一番なんでしょ?
 なら良いじゃん。疲れるくらい。
 あたしに、何度でも言ってよ」

「聞きたいのなら、何度でも言ってやる。
 でもな、からかわないでくれ。嫌いなのに思わせぶりなことを言うのはやめてくれ。
 『好きだ』ってからかうのは『好きじゃないから』だろ?
 
 
 『好きじゃない』って伝えられると、心が痛むんだよ」


桐乃は顔を伏せ、一言だけ

「ばか」

と言った。


エンディングテーマはいつの間にか終わっていた。
妙な雰囲気のままスキップもせずに宣伝を眺める。

「京介ってさ、言わなくちゃ分からないヤツだと思ってたけど」

桐乃が俺の隣に座りなおす。

「たぶん言っても分からないんだよね」

「・・・わるいかよ」

「べっつにー。
 それならあんたから言ってもらうだけだし」

「?」

言葉の意味が分からず隣を見ると、桐乃が俺に体を預けてきた。
少し戸惑いを覚えたが、気にせずに俺も桐乃に体を預ける。

テレビでは次回予告が始まっている。

先ほど恋人になったばかりの少年少女が言い合いをするカット。
泣く少女のカット。

そして、

『言葉にしなくても、ちゃんと分かってよ』


―俺も少年も、これからまだまだ前途多難だ。



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最終更新:2011年07月02日 00:25