76 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2011/07/01(金) 13:22:10.11 ID:wQdSikth0 [2/5]

SS『フェイトさんの合同誌』


9月も半ば頃。
あたしは冬コミに向けて同人誌を作り始めていたんだけど………

「ねっ、桐乃ちゃん。他の二人には承諾してもらったからっ、ねっ!」
「………まぁ、いいですケド………」

正直に言えば不本意だけど………



あたしの目の前に居るのは、伊織・フェイト・刹那さん。通称フェイトさん。
あたしの小説を盗んだり、あたしからお金を借りていたり、
挙句にあたしのお金をFXで溶かしたり………正真正銘のダメ人間。

こんな人に、あたしの部屋を見せたら、何をしでかすか分からないので、
とりあえず兄貴の部屋で話を聞いている。

………でも、確かに腕は有る。
編集者としての能力は確かで、この人の主催する合同誌の企画が大成功してるのも事実だ。

あたしとしても、有名サークルの人たちと名前を並べて同人誌を出せるのは嬉しいし、
たぶん、フェイトさんの様子を見るに、今回も成功しそうな雰囲気は感じ取れる。

でも、でもっ………!

「それじゃあ、桐乃ちゃん。近親相姦もので、短編の小説お願いね~♪」

よりにもよって、近親相姦がテーマなんてっ!!!
どうしろってのよ、全く………

「き、近親相姦って、やっぱり、え、エロシーンも、ですよね?」
「当然じゃない!男性向け同人誌だから、むっちゃくちゃ濃厚なのをお願いね~♪」

そ、そんなの書けないって!!!
あたし、妹空でも、エロシーンは出来る限り飛ばしてたし!
で、でも、エロゲーを参考にすれば何とかなるかな………?

「やっぱり、難しい?」
「か、書きますっ!」

あたしの悪い所だ。
ぎりぎり出来そうだと思ったら引き受けてしまう。

それに、せっかくのチャンスなんだ。
これで、あたしたちのサークルの名前が売れれば、あいつらも嬉しいだろうし、
どこかから仕事が来る可能性だって有る。
大好きなもので生きて行く事が出来るようになるかもしれない。

そっか………それなら妥協は許されない。

「そ、そのっ」
「どうしたの?桐乃ちゃん?」
「やっぱり、今のあたしじゃ、色々と経験も無くって………
 お話を作るのに、参考になるものとか無いですか?」
「そうね、それなら~」

フェイトさんは、自分のバッグの中をごそごそと探して………ひっ!?

「じゃ~ん!やっぱこれよね~」
「そ、そ、それっ!」
「ただのエロ本よ~♪やっぱり、現実を参考にするのがいいでしょ~?それと~」

ま、まだ有るのっ!?

「やっぱ、エロビデオよね~♪
 タイトルは『ロリ巨乳の妹~はじめてなの、お兄ちゃん~』?」
「な、何考えてんですかっ、え、エロビデオとかっ!」
「えっ?参考資料が必要なんでしょ?」
「た、確かに、そうですけど………」

中学生にエロビデオ貸すとかっ………!

「実はね、エロゲーとかも持って来たんだけど~」
「え、エロゲー………ですか?」

あたしは、フェイトさんにバレないよう、慎重に聞き返す。

「やっぱり、中学生の女の子に、こんなものを貸すのって悪いじゃない?」
「そ、そうです………か?」

その基準はどこにあるのだろうか?
エロゲの方がよっぽどソフトで、普通の女の子でも全然問題ないと、
あたしなんかは思うのに………

「同じエロにしても、本物の方が小説の参考資料としては役に立つし、
 それに、本当の参考資料にもなるわよ~♪」
「な、なっ、なっ!!!」
「それじゃあ、桐乃ちゃん。頑張ってね~♪」

フェイトさんは有無を言わせぬ勢いで、帰っていってしまった………
コレ、ほんと、どうしよ?
とりあえず、京介の『お宝収納BOX』に押し込もっか………

「ただいま~」

って、兄貴帰ってきた!?
す、すぐに押し込まないとっ!

激しい動悸と震える腕が、中々作業を進めてくれない。
やっと、モノを隠し終えたと思った瞬間―――

ガチャッ

「………桐乃!?」
「………な、何よ?」

兄貴はいつもの冷めたような視線であたしを睨んでくる。
あたしも、そんな視線に負けじと兄貴を見返す。

「………おまえ、また、何か落としたのか?」
「そ、そんな事あるわけないじゃん!」
「………それじゃあ、何でおまえは俺の部屋にいるんだ………?」

ムカツク、マジ、ムカツク。
あたしは別に悪い事してたわけじゃないのに、なんで問い詰められてるワケ?

「別にいいでしょ?」
「………さっき、フェイトさんとすれ違ったんだが、関係あるのか?」

意外と鋭いヤツだ。
でも………あれ?兄貴、何か顔がヘンだよ?
泣きそう………みたいな?

「おまえ、何か憔悴してる感じだろ?俺はおまえの事が心配なんだよ」

心配?
あたしがフェイトさんに、何かされてないか心配して、
怒ったような口調になってるの?

「その………同人誌の話し合い。ここでしてた」
「同人誌?ま、またおまえの原稿盗もうとしてるんじゃないだろうなっ!」
「ち、違うって。本当に、ただの打ち合わせで………」
「この前だって、そうだったろ!?」
「今度は、あいつらも一緒だから大丈夫。
 それに、他の人たちも一緒だから、そんな事できないって」
「そ、そうか。それならいいんだけどよ」

こいつ、本当にあたしを心配してくれてるんだ。
ほんと、シスコン………

「桐乃」
「何?」
「やっぱりどうしても心配だから、一つ条件がある」

条件?あたしを心配してくれるのは嬉しいけど、でも、あたしはやるといったらやる。
どんな条件でも、あたしはあたしの仕事を投げ出したりしたくない。

「俺も参加させろ」
「えっ、あ、あんたが?同人誌に?」

意外すぎる申し出だった。
兄貴、もしかして………

「そうだ。俺も参加してれば、フェイトさんに目を配れるし、文句も言いやすいだろ?」
「あ、あんた、そこまでして、あたしと一緒に居たいの!?
 キモっ!キモすぎっ!マジキモいしっ!」
「ま、まあ、いいじゃねーか。俺はシスコンなんだろ?」
「うっ………」

あたしが、兄貴の事、シスコンシスコン言っている以上、反論のしようがない。
でも、嬉しい………

「で、でもさぁ、あんた、絵も描けないし、小説も書けないでしょ?」
「おうよ!だから、今度も写真で参加するぜ!」
「○×□△!?」

しゃ、写真!?
ま、まさかっ!?で、でも知らないハズだよねっ!?
まさか、フェイトさんと話して!???

「あ、あにっ………京介!?」
「ん?どうしたんだよ。今回は俺の勝手だしな。兄妹二人だけの写真ってのもいいだろ?
 世間の奴らに、俺たちの仲のよさを見せ付けてやろうぜっ!」

や、やっぱり、京介、今回のテーマを分かってる!?
ってことは、ってことは………あ、あ、あたしとっ!!!
え、え、え、えっちなっ………!!!

「あ、あんたっ、じ、自分の言ってる事、分かって………!?」
「ん?俺、変な事言ってるか?仲の良い兄妹なら、当然の事だろ?」

そ、そうなんだ………当然なんだ………
それならっ、い、いいよねっ!『そういう』事なんだよねっ!

「そ、それじゃ、さ、さっそく………い、い、いいよねっ!?」
「勿論だぜ!………にしたって、どもり過ぎじゃね?」
「う、うっさい!あ、あんたのっ、せいなんだからっ!
 家じゃ、まずいから、ちょっと離れた………渋谷に、また………!」
「お、おう?まあ、いっか、行こうぜ!」



その後の事は、ココでは詳しく書けないんだケド………

何故か兄貴、途中でゴネだしちゃって、
でも、無理矢理連れて行ったら急に乗り気になっちゃって………
それとも、アレ、自棄になったって言うのかな?
それに、あんなに激しいとか♪

………ええと、とにかく色々あって。

結局、さすがに、写真はダメってことになっちゃった。
でも、京介のおかげでものすごくリアルな小説になって、超話題になってくれたし~♪
あいつらも、有名になったし、最高の冬コミだったよね!

そうそう。あたしは今、陸上も、モデルも、とりあえず一休みして、
お母さんやまなちゃんに、お料理や掃除を教えてもらってる。

まだ先は長いけど、一生懸命頑張れば京介にも喜んでもらえるよね!


End.




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最終更新:2011年07月02日 03:24