101 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2011/07/08(金) 01:23:37.57 ID:Voo7nYqj0 [3/3]
【SS】そして、二つの星にお願い事を・・・

この時期はあの頃の事を思い出す。
天の川越しにそっぽを向いていたあの頃を。

あたしは例年のように桐の箱を空け中身を確かめる。
多くの飾りが新調されているが、あの頃の飾りもまだいくつか残っている。
黒猫がくれたメルルの折り紙も、あやせと作った星の飾りも、古びてはいるがまだまだ現役だ。
続いて、短冊の箱を取り出す。
いつもの様に一枚一枚当時のことを思い出しながらめくっていく。

『おにいちゃんのおよめさんになれますように きりの』
『おにいちゃんとけっこんできますように きりの』

ずっと昔、京介と一緒になれることを疑ったことがなかったころ。

『テストで100点が取れますように 桐乃』
『お兄ちゃんと仲直りできますように 桐乃』
『もっとキレイになりたい! 桐乃』
『お兄ちゃんと遊べますように 桐乃』
『読者モデルで一番になれますように 桐乃』
『あいつと少しくらい話せますように 桐乃』

京介とずっと口をきかなかったころ。

『好きなことを目一杯楽しめますように! 桐乃』
『あいつに少しでも見て欲しい 桐乃』
『陸上で良い記録が出せますように 桐乃』
『兄貴と一緒に仲良くお出かけできるようになりますように 桐乃』

京介に何度も助けてもらって、少しずつ仲良くなっていったころ。
そして

『妹空がアニメ化しますように 桐乃』
『京介がどこにも行きませんように 桐乃』

お互いを一番大切にし始めたころ。
そして続いていく、年に一度の『お願い事』。

「ふふふ」
何度見ても笑みがこぼれてしまう。
あたしは短冊をまとめると、一度だけギュッと抱きしめる。

今年は織姫と彦星にどんなお願い事をしようか。
今年は京介にどんなお願い事をしようか。
たとえば

『元気な赤ちゃんが埋めますように 桐乃』

と書いたら、あいつはどんな顔であたしの願いを叶えてくれるだろうか。


「桐乃ー?飾りはまだかー?」
中庭から京介の声が聞こえる。
「ちょっと待ってー」
あたしは返事をする。
早く京介の手伝いに行かないと。
お願い事は、その後に考えよう。

でもその前に一つだけ。
毎年続けている『三枚目の短冊』を書かなくちゃ。


この一年のありがとうを込めて。
これからずっとのお願い事を込めて。
天の川を飛び越えたあたしたちから、
天の川が隔たるあの人たちへ―


『織姫と彦星がずっとずっと一緒にいられますように
                        京介
                        桐乃』


今年の七夕も、満天の星が輝いている。


-Happy END-




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最終更新:2011年07月10日 02:23