608 :【SS】ねっちゅうしょうにはご注意を 1/3 :sage :2011/07/22(金) 22:15:05.53 ID:bi6lexR6P(16)
さて、ここらで一本SSを投下しようと思います。
流れ無視御免



 ある真夏の日中、俺は団扇を片手に仰いでいた。
 ――ソファでぐったりと横になる桐乃へ向けて。それが何故かといえば

「あぁ~~~、う~~~~」
「ったく。エロゲにかける情熱は感心すっけどよ、自分の体調ぐらい把握しとけ」
「だって、いつもならこれぐらい全然平気だったし……」
「普段とは条件が違いすぎんだろ。いつもの冷房が効いてて涼しい部屋ならともかく、
エアコンが壊れてむっし暑いサウナみたいな部屋に篭って、ろくに水分も取らずに
エロゲやってれば誰でも倒れるっての。しかもお前、昨日も遅くまで起きてて
寝不足だったじゃねえか。それだけ条件揃ってればそりゃ倒れるわ。反省しとけ」 
「ぐぬぬ……言われてることは正論だケドなんかムカつく」
「いってろ。それよりほれ、スポーツドリンク。とりあえずこれ飲んどけ」
「……ありがと」

 ――とまあ、つまりはそういうことである。

 前日、どういうわけか桐乃の部屋のエアコンが壊れた。
 すぐにでも修理しようと業者に電話をかけたんだが、時期が時期。向こうさんも
時期柄忙しいようで、修理に来るのは数日後ということになっていた。
 そんなこともあって、元々風通しのそれほどよくない桐乃の部屋は今までの
冷房の効いた部屋とは一転、熱の篭るサウナのような暑さの部屋へと変貌した。
 にも関わらず桐乃は、そんな部屋で前述の通りの行動を取ってしまった結果、軽い
熱中症を起こして倒れてしまった。
 その時たまたま俺が部屋に居て倒れた時の音に気付いたからよかったものの、
あのまま放置されていたらとゾッとする。マジで運がよかったと思ったね。
 まぁそんなわけで、倒れた桐乃を発見した俺は桐乃を涼しいところ、今家で唯一
冷房の効いているリビングへと担ぎ込み、ソファへ寝かせたわけだ。
 熱中症に関してはたまたま事前に調べていたこともあって、応急処置は比較的迅速に
できたと自負している。
 そのおかげもあってか、桐乃はそれほど経たずして目を覚ましてくれた。
 そうして冒頭に至る。

609 :【SS】ねっちゅうしょうにはご注意を 2/3 :sage :2011/07/22(金) 22:15:48.56 ID:bi6lexR6P(16)
「そもそも、わざわざ部屋でやる必要あったのか? 今日は親父達も用事で家にいねえし、
誰も遊びに来る予定とかねえんだろ? ノートパソコンここに持ってきてやればよかったじゃねえか」
「…………」

 なんかすげえ目で俺睨まれてんだけど。俺何か悪いこと言ったか?

「あんた……」
「な、なんだよ」
「なんでそれをもっと早く言わないわけ!? ってあぅぅ、頭くらっとした……」
「興奮しすぎなんだよ。ほら、無理せずに横になってろよ」

 てかこいつ気付いてなかったのかよ。
 俺も抜けてるとこ結構あると思うけどさ、桐乃ってどっか天然なところあるよな。
口にはしねえけど。

「とりあえずしばらくは寝るなりなんなりして安静にしてろよ。今のお前には
それが一番なんだからよ」

 ぽん、と頭に手を置いて安心するように撫でてやる。
 いつもなら抵抗されそうなもんだが、弱ってる今はそんな気力もないらしい。

「もう、あんまり子供扱いしないでよ……」

 ま、口だけは相変わらず達者みたいだけどな。
 これだけいえる元気があるならすぐよくなるだろうさ。

「今お前の部屋からタオルケット持ってくっから。さっき渡したやつ飲んで少し寝ろ。
そうすりゃ目が覚めるころには体調もよくなってんだろ」
「変なところ漁らないでよ。あたしのし、下着とか絶対に取ったらダメだかんね」
「んなことするか!」



 桐乃の部屋から普段あいつが使ってるであろうタオルケットを持ってリビングに戻ると
桐乃は目を瞑って横になっていた。
 もう寝たか? そう思って持ってきたタオルケットをかけたところで桐乃が目を開けた。 

「わり、起こしたか?」
「大丈夫、まだ寝てなかったから……ごめんね」
「何だよ急に」
「だって、心配、してくれたんじゃない?」
「そりゃまあ……」

 桐乃には言ってないが、倒れた桐乃を発見した時の俺のうろたえっぷりは多分
相当滑稽なもんだっただろう。

「いつも心配ばっかりかけてごめんね」
「何だよ。どうしたってんだ。そんなこと今更」
「なんか言っときたくなってさ。迷惑だった?」
「迷惑なんて思わねけど……。ま、気にすんなって。お前が元気になってくれりゃ、
俺はそれでいいんだからよ」
「うん。ありがと」

 そう言ってほやっと微笑む桐乃は、いつもより少しだけ可愛かったかも知れない。

610 :【SS】ねっちゅうしょうにはご注意を 3/3 :sage :2011/07/22(金) 22:16:59.17 ID:bi6lexR6P(16)
「んじゃ、そろそろ一回寝とけ。起きるまで傍にいてやっからよ」

 可愛さに見惚れたことが少し照れくさかったのを誤魔化すために、さっきしたように
桐乃の頭を撫でる。
 桐乃はそれをくすぐったそうに、でも嫌がることなく受け入れた。

「うん、わかった。……京介」
「ん? どうした?」

 体調の悪い桐乃を放って場を離れる気にもなれず、桐乃が寝付くまで傍にいようと思って
いたら、クイクイと服の裾を桐乃が引っ張ってきた。
 何かと思い顔を桐乃のほうに顔を向けてみれば、何かを期待するような瞳にぶつかった。

「ちょっと、お願いがあるんだケド……」
「なんだよ」
「やっぱさ、こうやって体調崩しちゃうとさ、ちょっと不安になっちゃうんだよね」
「その気持ちはわからんでもないな」

 俺も風邪引いて寝込んでる時とかは、不意に変に不安になったりすることもあるしな。

「でもよ、今は俺がここにいるじゃねえか。それじゃ不満か?」
「ううん。そんなことないけど、寝る前にさ、おまじないしてくれないかなって」
「おまじない?」
「うん。あたしが寝てから変な夢見ないように」
「そりゃできるならしたいけどよ。そんなおまじない俺しらねえぞ?」
「大丈夫、スゴク簡単なことだから」

 簡単なことねえ……桐乃に負担がかからないなら全然構わないんだが。
 一体俺に何をさせるつもりだ?
 それになんか桐乃の顔赤くなってね? まさか体調悪化したのか?

「えと、さ」
「うん?」
「おやすみのちゅう、してほしいな」
「……マジすか」

 まさかこんなお願いが桐乃の口から出てくるなんて予想外にも程がある。
 これもねっちゅうしょうのせいか。

「あたしさ、京介にちゅうしてもらえたら、きっとすごく安心して寝れると思うんだよね」

 ああ、くそ。なんて顔で俺のほう見やがるんだ。

「だからさ」

 そんな顔でお願いされたら、俺が断れるわけねえってお前知ってるくせによ。


「ね、ちゅう、しよ?」


 ……もしかしたら、今度は俺がねっちゅうしょうで倒れるかもしれねえ。
 真っ赤な顔で可愛らしくおねだりする桐乃の顔を見ながらそんなことを思ったのは、
桐乃には絶対に秘密だ。



-END-




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最終更新:2011年07月27日 19:45