244 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2011/07/25(月) 18:00:35.60 ID:AhxHbi6J0 [4/7]
【SS】プロフィール
「ただいまー。
っと、誰もいないのか」
俺が麻奈実との勉強会から帰ってくると、リビングには誰もいなかった。
留守ってワケでもないだろうし、お袋は買い物、桐乃は自室でエロゲでもしてるんだろう。
「ん?桐乃のヤツ、雑誌を出しっぱなしにしてるな」
テーブルの上に広げたままの雑誌を見つける。
桐乃っていつもどんな雑誌を読んでるんだ?
ソファーに腰掛け雑誌を手にとって見る。
「ファッション雑誌か。
前は桐乃もこういう雑誌に載ってたんだよなー。
って今も載ってる!?」
ちょうど開いてあるページに桐乃とあやせのツーショットが載っていた。
二人とも健康的な水着姿だ。
俺は慌てて雑誌の表紙を確認する。
今月号―発売日は明日。昔のじゃないな。見本誌か?
雑誌名も覚えた。明日買いに行って秘密のコレクションに追加しなくては。
「じゃなくて!
あいつ、いつの間にかモデル業を再開してたのか」
そういや仕事の関係で御鏡の野郎と二人きりで会ったとか言ってたが、いつの間にか本格的に仕事してたのか。
もしかして美咲さんが海外に行く代わりに仕事を押し付けられてんのか?
次第にハワイやら上海やらサイパンやらで撮影するようになって、気がついたらほとんどを海外で過ごすようになってると
か・・・・・・
やばい。あの人ならやりかねない。
「後で確認しとかねぇとな」
あやせも一緒にいるから平気だとは思うが、もし桐乃と一緒にいられると誘われたら二人で海外に行ってしまうかもしれない。
もしそうなったら、泣き落としてでも止めないとな。
「それにしても、桐乃の写真写りは相変わらずいいな」
親父のスクラップブックを見たり、桐乃にバックナンバーを押し付けられたり、
それでも手に入らなかった雑誌はオークションを使ってつい入手してしまって知ってたが、
前よりも綺麗になったんじゃないか?
ラブリーマイエンジェルあやせたんも天使だが、物言わず笑っている桐乃も天使と言わざるを得ない。
しかもあやせを中位の能天使とするなら、桐乃は上位の熾天使。
あいつが妹じゃなくて、本性を知らなかったら惚れてたかも知れんね。
まぁ実物のあいつは理不尽な事この上ない、天使とはかけ離れた存在だけどな。
最近は少しは可愛げが出てきた事は認めるてやるが、まだ天使とは認めてやれないね。
「しかし、最近あやせより桐乃を見ているほうが多くなった気がするんだよな」
ついこの間気付いたんだが、秘密のコレクションのさらに奥、たどり着くまで30分はかかる、
隠してあるというより厳重に封印してあるという言葉が正しいあの場所にしまっているコレクションの比率では、
あやせより桐乃の方が倍近く多くなっている。
「確かに正面から桐乃の笑っている顔を見るのは、あやせの笑っている顔を見るのよりレアなんだが」
何故こんなに惹かれてしまうんだろう。
いや、シスコンならこれくらい当たり前か。
赤城のヤツも瀬菜ちゃん写真集を自作してそうだしな。
ただ、雑誌に載ってる桐乃の写真はどれも綺麗なんだが、なんか少し物足りないんだよな。
今までに数えるほどしか見たことのない、桐乃の微笑みには遠く及ばない。
カメラマンの腕が悪いのかね?
そんなことを考えながら雑誌をめくっていると、ある項目に目が止まった。
「モデルのプロフィール?
そんなのまで載ってるのか」
今までは桐乃とあやせの写真しかチェックしてなかったから気づかなかったぜ。
載っている情報はスリーサイズと経歴、本人からの一言か。
桐乃のプロフィールとか、なんて書いてあるんだろうな。
まさか、
『1997年生まれ。千葉県出身。中学三年生で陸上部所属。「休日は大好きなお兄ちゃんと買い物して過ごしてます♪」』
とか、可愛いことが書いてあったりしてな。フヒッ♪
さて、桐乃のプロフィールは―
身長165cm、体重45kg、スリーサイズB82/W54/H81
1997年生まれ。千葉県出身。中学三年生で陸上部所属。
「暑い日はクーラーのきいた部屋で大好きなお兄ちゃんと一緒に眠ります♪」
「想像の斜め上にぶっ飛んだっ!?」
誰こいつ!もしかして編集のときに誰か他の人と間違えたのか?
確かに経歴は正しいが、スリーサイズは去年のままだしな!
今は俺の見立てではB84/W54/H83だっつーの!
胸のふくらみが豊かになって、加えて、さらにいいケツなったってのにウェスト据え置きとか、どんな女神だよ!
それなのに家の中じゃタンクトップとホットパンツとかラフな格好しやがって、
俺じゃなけりゃ一日一回は抱きしめてるか押し倒してるっつーの!
その上こんなお兄ちゃん大好きっ子なら、俺の精神はとうの昔に理性と共にぶっ壊れてるわ!
「どうかしたの!?」
ハッ!あまりの衝撃に我を失っている間に、俺の叫び声に驚いた桐乃が下りてきやがった!
「あ、あんた、何勝手にあたしの本見てんの!?」
桐乃が雑誌を奪取しようと飛びかかってくる。
とっさに俺は桐乃の手が届かないように雑誌を頭上に掲げる。
「勝手に見たのは謝る。返すのはいい。だが、その前に質問に答えてくれ」
あと雑誌を奪い取ろうとして身体を押し付けてくるのも止めてくれ!
俺のリヴァイアサンは親の言う事をきかない暴走息子なんだぞ!
「な、なによ」
桐乃は一歩下がって俺を睨みつけてくる。
ふぅ。いつもどおりの桐乃だ。その冷たい視線が俺を落ち着かせてくれる。
だが、少し体が震えているようだ。あのページを見られたと思って怒ってんのか?
「おまえ、モデル業再開したのか?」
俺の質問に、件の事について知られていないと判断したのか、桐乃は表情を和らげた。
「ううん。本格的には復帰してないよ。
ただ時々美咲さんに頼まれたり、あやせにヘルプをお願いされたりして仕事する事はある。
留学のときに貯金も減っちゃったし、色々欲しいものもあるからお金は必要だし」
やっぱり美咲さんに頼まれてんのか。
美咲さんに目をつけられる事を承知であやせが桐乃に頼むのは、桐乃との接点を失いたくないからか?
昔桐乃に世話になったって言ってたし、あやせは桐乃にモデルを続けてもらいたいのかもな。
「美咲さんはなんか言ってこないのか?
ロケ地で海外行く事が多くなって、気がついたらほとんど海外で過ごすようになっていた、
ってことになるかも知れないぞ」
「それは平気だと思う。ちゃんと説得してわかってもらえたから」
「本当に平気か?
御鏡に聞いたんだけどよ、美咲さんは俺たちが兄妹だってこと気づいてたらしいぞ」
「それは知ってる。
だから、仕方ないけどなんであの時兄貴を連れて行ったのかとか、
一度海外で失敗しちゃって、しばらくは海外で何かすることは許してもらえない事とか話して理解してもらったから」
「そうか。それならいいんだ」
「あたしを海外に連れて行きたいなら、まず兄貴を説得してって言ったら
『貴方たちの仲を引き裂くのは難しそうね。これからも二人でお幸せに』だってさ。
あんた、美咲さんにも超ド級のシスコンだと思われてるよ」
桐乃がからかう様に笑う。
「うるせぇ。おまえだって同じだろうが」
彼氏に兄貴を見繕うとかな。
まぁ桐乃の彼氏なら何度だって引き受けてやるけどよ。
「じゃあ次の質問だ。
これって何なの?」
桐乃に先ほど見ていたページを突きつけた。
「ぎにゃぁぁぁぁぁああ!」
桐乃は奇声を上げると、俺から雑誌をぶんどって胸元に抱きしめた。
「なに?おまえ、やっぱり俺のこと好きなの?」
「京介の事が好きっていうのとは関係なくて!
これはそういう意味で書いたんじゃないから!」
桐乃が顔を真っ赤にして睨みつけてくる。
やっぱり、勝手に見ちまったことを怒っているらしいな。
「さっき言ったでしょ?美咲さんにあんたが兄貴だってこととか話したって。
そしたら美咲さんが
『今まではお兄ちゃん大好きっ子っていう設定だったけど、これからはお兄ちゃん超好きっ子っていう設定でいきましょう』
とか言い始めて、勝手にこんな事書かれちゃったの!」
なるほど、美咲さんのせいか。
海外行きを断られた腹いせに、桐乃のことをからかって遊んでるんだろう。
「他の候補は
『ご飯はいつもお兄ちゃんにあ~んしてもらってます♪』とか
『いつもお兄ちゃんに抱きしめてもらいながら寝てます♪』とか
『ファーストキスの相手は大好きなお兄ちゃんです♪』とか
『いつもお兄ちゃんと一緒にお風呂に入ってます♪』とか
『お兄ちゃんとキスするのが大好きです♪』とか
『今一番欲しいのはお兄ちゃんとの子供です♪』だったんだから。
これでも一番マシなのを選んだんだからね」
「ますますぶっ飛んでんなあの人!」
特に最後はまずいだろう、年齢的に。
というか、候補を選ばせてもらえるなら、その時点でもっとマシなのに変更してもらえよ。
「その・・・・・・イヤだった?」
桐乃が節目がちにたずねてくる。
ちっ。そんな顔で言われたら文句なんて言える筈ないだろ?
「イヤじゃねえよ。むしろこんな雑誌に堂々と『大好きなお兄ちゃん』って書いてもらえて嬉しいぜ」
「・・・・・・キモ」
桐乃はプイッとそっぽを向いた。
だが、そこまで気持ち悪がっているわけじゃないみたいだな。
「まあ、このコメントのおかげで変な男も言い寄ってこないし、役に立ってるんだけどね。
だから、あんたが構わないならコメントはこれからもコメントはこんな感じにするから」
そうか。
ただ美咲さんの趣味ってだけじゃなくて、実益もあるのか。
しかも桐乃に男が近寄らない効果があるっていうなら俺が反対する理由はないな。
「俺は構わないぜ。
なんなら、そのコメントどおりに実行するか?」
「え!?京介はあたしと子作りしたいの!?」
「なんで一番ヤバイコメント載せようとしてんの!?
美咲さんといい、御鏡といい、おまえといいモデル業界ってエロゲ脳ばかりなのか!?」
顔をさらに赤く染めて、モジモジと可愛らしく自分の身体を抱きしめながらそんなこと言うんじゃねえ!
「第一おまえはまだ中学生だろうが。
手を出したら淫行罪で親父に捕まるわ!」
「そうだよね。
そういうことはあと三年たってからだよね。
今は一緒にお風呂に入るくらいで我慢しないと」
「わかってんじゃねえか。
・・・じゃねえよ!いくら兄妹でも混浴は世間的に十分やばいわ!
ていうか、おまえ俺をからかってるんだろ」
ま、まさか本気で言ってるわけじゃないよな。
「あ、あたりまえじゃん。
あんたがキモいこと言うから、調子を合わせてあげたの。
でも、ふ~ん。
そうなんだ。そんな理由なんだ」
桐乃はまだ少し赤みの残る顔で俺の顔を覗き込む。
「な、なんだよ」
「なんでもない。
ただ意外と乗り気だったなーと思っただけ」
「?」
「とにかく、あんたが言い出したんだし子作りとか、混浴の件はともかく、コメント通りの行動はなるべく取って貰うからね。
もともとあたしもあんな嘘が書かれてるのはイヤだったし」
嘘つくのがイヤだからプロフィールどおりに振舞う、か。
桐乃らしいな。
「ああ。頑張って『大好きなお兄ちゃん』役をやらせてもらうぜ」
「ん。それじゃあ、参考資料としてこの本はあげる。
これからは雑誌が出るたびにあんたに恵んであげるから。
あたしに貰うんだから、いつでも読めるようにあんな変なところに隠さないで、本棚に堂々と置いておくこと!」
なんで桐乃にあの場所がバレてんの!?
大掃除でもしない限りあんなところを見るはずないのに!
そんなことを考えながら、桐乃から差し出された雑誌を受け取る。
「ヘンな事に使ってもいいケド、ちゃんと大事にしなさいよ?」
「使わねえよ!」
おまえ、自分の兄が自分が載ってる本を使ってナニをしてると考えてんだ。
大体、写真を見なくてもいつも近くにエロ―じゃなくて薄着の格好の実物がいるじゃねえか。
いや、別に桐乃をそういう目で見てるってわけじゃないからな?
もしそういうことをするならっていう仮定の話だぜ?
それにだな―
「なぁ、桐乃。
おまえんとこのカメラマンて腕が悪いのか?」
「は?そんなはずないじゃん。あたしを撮るんだもん、超一流のカメラマンを使ってるよ」
「それにしては前と比べてなんか物足りねえんだよな」
「それどういう意味?
・・・まさか、あたしが前より不細工になってるって言うつもりじゃないでしょうね」
言ったら殺す、と桐乃の目が訴えてくる。
「そうじゃねえよ。
むしろおまえ、前より綺麗になってるって。
なんていうか今を力一杯生きる恋する乙女みたいな」
「え?」
桐乃の顔が朱に染まる。
なんだその反応。今の例えは適当に頭に浮かんだ言葉を言っただけだったんだが、まさか
「まさかおまえ、誰かに恋してるのか!?」
それなら綺麗になったのも頷けるが、お兄ちゃんは絶対にそんなの認めないからな!
「そんなはずないから!
・・・あたしはずっと京介だけの傍にいるから、安心していいよ」
そ、そうか。それならいいんだ。
「それで、あたしがますます綺麗になったのに、なにがダメなの?」
「なんか、いつものおまえと違うんだよな。
いつも俺の見ているおまえの方が生き生きとして輝いてるって言うか・・・
大好きなことに夢中になっているって言うか・・・
なぁ、一体なんでなのか知らないか?」
桐乃の顔がさっきよりも赤くなっていく。もう首まで真っ赤だ。
「知らない!」
桐乃はそう言うと、後ろを向いて階段のほうへ走っていってしまった。
「おい、桐乃!」
わけがわからず、とっさに呼び止める。
桐乃は足を止め振り返ると、べーっと舌を出し、
「ばーか」
と言った。
その顔は、その表情は、その雰囲気は今まで見た全ての雑誌にも載っていなくて―
なんだ。
やっぱり、たとえ怒ってても、写真で見る桐乃より本物の桐乃の方が何倍も魅力的じゃないか。
余談だが、次の日の夜親父に渋面で「京介の部屋にもクーラーを設置してやる」と言われた。
何でそう言い始めたのか理由はなんとなくわかるんだが・・・・・・
まさか本当の話だと思っていないよな?
まぁ、その話は節電を理由に桐乃によって白紙に戻されたんだがな。
-END-
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最終更新:2011年07月29日 00:11