512 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2011/08/02(火) 19:58:24.90 ID:JNNlVXpKP [5/7]
今日は8月2日。
一般的に知られているかはどうかはさておき、8月2日といえばカレーうどんの日である。
少なくとも俺の家では周知の事実だ。
なぜならば、毎年この日の夕飯はカレーうどんだと決まっているからだ。
去年も一昨年も、例外なくカレーうどん。そしてそれは今年も変わらないようで。
「はいこれ。あんたの分ね」
「おう、サンキュ」
トン、と目の前に置かれるどんぶり。
その中にはなみなみと注がれたカレーの中を漂ううどんが顔を覗かせている。
俺にどんぶりをくれた妹―桐乃も自分の席についた。と、そこであることに気付く。
「おい桐乃。お前そんな格好で大丈夫か?」
「は? どういうこと?」
「だからよ、そんな真っ白な服着てて大丈夫なのかって聞いてんだよ」
「そんなのあたしの勝手じゃん。・・・・・・えと、もしかして、変、かな?」
「え? いや、別に変なんかじゃないぞ。今日も桐乃は可愛い――じゃなくてだな、
そんな白い服着ててカレーが飛んでしみになってもしらねえぞ?」
「ふーん・・・・・・可愛いんだ。えへへ」
「人の話を聞け」
今重要なのはそこじゃねえだろ。確かにそっちも大事だが。つかお前はどんな格好してても可愛いだろうが。
「聞いてるって。大丈夫大丈夫。あんたじゃないんだからそんなヘマしないって」
「本当か? 去年、カレーが飛んで、シミになる! って大騒ぎしてたの誰だよ?」
「―っ! あ、あれは・・・・・・わ、忘れなさいよ! いつまでも去年のあたしじゃないんだから!」
「へいへい。とにかく、気をつけろよ」
「・・・・・・わかったわよ」
若干拗ねたように桐乃は口を尖らせた。
そんなところも可愛いと思ってしまう辺り、俺はもう色々手遅れかもしれん。否定する気もないが。
「「「「いただきます」」」」
誰とも言わずに、全員が席に着いたのを見計らって家族全員で唱和する。
一々音頭をとらずともタイミングが合うのは、家族の絆の賜物か。
TVの音を背景にずるずるという音だけがリビングに響く。
アレだよな。こういう麺類喰ってるときって何故か無言にならね? 言葉を挟みにくいって言うかさ。
ちらっと横目に桐乃を見てみると、なにやら慎重にずる、ずるとうどんをすすっている。
まあ仕方っちゃない仕方ないわな。勢いよく吸えばルーが飛び散ることは必至。
さっきも言ったが、桐乃は今真っ白なシャツにハーフパンツというラフな格好だ。
白い服にカレーが飛ぶのは避けたいんだろう。
だが桐乃よ。カレーを飛ばさないことだけに気をとられてばかりだと足元を掬われるぞ。
いや、すでに掬われているというか。
「桐乃」
「? んぐ、コクン。何よ」
「ほっぺににカレーついてるぞ」
「え?」
「ほら、動くなよ」
箸を一旦置いて、左手で桐乃の顔を固定。ズイッと顔を近付けて右手の指でほっぺについたカレーを拭ってやる。
・・・・・・今思ったがこの体勢、まるでキスを迫ってるみたいだな。
やけに冷静な自分とは裏腹に、桐乃は驚いたように目を見開いて顔を真っ赤にしていた。ついでに口もパクパクしてる。
「あ、あ、あ、あんた!?」
「・・・んだよ。カレー拭ってやっただけだろうが」
「く、口で言えばいいだけでしょ! てか近い! 顔が近い!
お父さん達が目の前にいるのに何考えてんのよ! 離れてよ、このシスコン!」
バシッと顔を固定していた手を払われてしまった。
フーフーとこちらを威嚇するように睨んでくる桐乃は非常にご立腹のようだ。
部屋じゃそのまま甘えてくるくせに親父達の前では恥ずかしいらしい。
「ちょっとあんた達、イチャつくのは部屋に戻ってからにしなさい」
「そうだ。ここは団欒の場で、今は食事中だ。その程度は自重しろ」
「なんでお母さん達そんなに普通なの!?」
今更じゃねえか。
ふと、手についたカレーが目に付いた。さっき拭った桐乃についていたあれだ。
――ペロリ。・・・・・・カレーだな。当たり前だが。桐乃の味がするかも、とちょっと変態チックな期待した俺が憎い。
と思っていた矢先、ガシガシと足をけられているのが分かった。
いってえよ! 誰だ俺の足を蹴ってるやつ! そんなことするやつここじゃ一人しかいねえけどさ!
横を見てみれば今度は更に首元まで真っ赤にした桐乃と目が合う。
桐乃は俺にべーっと舌を出して睨みつけた後、そのままうどんをすする作業に戻っていった。
食事後、部屋に戻った俺に桐乃が
「京介、口元にカレーついてるよ」
と言って、とある部分でカレーを舐め取ることで俺を真っ赤にさせたのは余談である。
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最終更新:2011年08月03日 00:16