589 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2011/08/03(水) 02:18:55.56 ID:slyM7r1C0
SS『高坂邸殺人事件』
※あくまでフィクションです。決して真似しないでください。
「………死んでますね」
「しっ、死んでるっ………!?」
8月に入ったばかりのある日、俺たちは恐怖の渦に包まれていた。
「く、黒猫っ!あ、アンタっ!アンタっ!」
「黒猫氏、う、ウソでござるな?うそですな?」
「やっべ、加奈子、マジやべーところに来ちゃった?」
「お兄さん。黒猫さんは確実に死んでますよ。埋めちゃいましょうか?」
ど、どうしたらいいんだ!?
事の起こりは、7月の末。
桐乃が珍しく、予定をバッティングさせてしまったのだ。
つまり、『表』の友達と、『裏』の友達が同時にウチに来てしまうことになってしまったわけだ。
はじめのうちは、片方を後に回す事も考えていたようだが、ほら、俺の妹って忙しいだろ?
結果、性格も趣味も違う桐乃の友達が一堂に会してしまったというわけだ。
はじめはさすがに遠慮がちだった4人だが、沙織の無茶振りトークのおかげも有ってだいぶ打ち解けてきてくれた。
こういうときの沙織はホント助かるぜ。
心配していたような衝突も無く、このまま平穏無事に終わると思っていた。
だが………
昼食の際、体調不良のため黒猫は一人桐乃の部屋に残っていた。
だが、それを迎えに行った俺たちの見た物は、部屋の中央でうずくまるようにして倒れている黒猫の姿だった。
皆が固まる中、あやせだけが即座に黒猫の容態を調べて、そして………
「ど、どうしよう!?あ、兄貴っ!れ、霊柩車呼ぶ!?」
「待て、落ち着け!消防車と機動隊とっ!」
「き、京介氏も落ち着くでござる」
「やっべ、マジやっべ~」
「お兄さん。まずは特殊清掃員の方を呼ぶといいですよ?」
俺も相当焦ってるようだが、皆平静では居られないようだ。
そりゃ当然だ。親しい友人が、目の前で死んでしまうなんて………
異常に蒸し暑い桐乃の部屋の中、かつて黒猫だったものが、ゆっくりと胸を上下させて息を………って!?
「おい、あやせ。………息、してるぞ?」
「………お兄さんの見間違いじゃないですか?」
「いや、ぜってー息してるって。ほら、今も!」
「………わたしの勘違いだったみたいですね」
か、勘違いだぁ!?
「んっ………うっ………あ、あら?私は、どうしたのかしら?」
「く、黒猫っ!あ、アンタ生きて………生きて………うぅっ」
「黒猫氏。拙者もさすがに焦りましたぞ?」
「つうかぁ、失神してたってのかよぉ」
た、助かったぁ………何にしても、自分の見てる前で友達が死ぬってのは洒落にならねーからな………
つか、桐乃に至ってはもう半泣きじゃねーか!
ほんと、心配させんなよなぁ………
「とりあえず、病院に行くか?」
「いえ、いいわ。扉が開いて、涼しくなったら気分が良くなってきたわ」
「で、でもっ!」
「きりりん氏。黒猫氏は大丈夫と言っておられますから、ご心配なされるな!」
つか、安心してきたら周りが色々見えてくるよな?
特に、黒猫のめくれあがったスカートの下に見えるかぼちゃぱんつとかな!
いや、それにしたって………
「つぅかぁ、誰だよぉ、この部屋に暖房なんてつけやがったのはよぉ?
てめー、元から調子悪かったんだろぉ?こんなんじゃ倒れて当然じゃねーかよぉ」
加奈子は地面に落ちていたリモコンを取り、冷房に切り替えた。
ひんやりとした涼しい風が部屋を満たしていく。
それにしても、その通りだ。
俺たちが部屋に居たときは、普通に冷房がかかっていたハズだ。
「これは、何者かによる、黒猫氏を抹殺せんとの犯行でおじゃるな」
「えっ………!?そっ………私は………」
「いいからっ!アンタは調子悪いんだから、とりあえず休んでなさい!」
いったい誰なんだよ。
桐乃を悲しませようとするやつは、ぜってー許さないぜ。
「外部犯でおじゃるか?」
「でも、あたしたちが戻るとき、鍵がかかっていたよ?」
「すると………これは完全な密室殺人でおじゃるな!」
「………死んでないわよ………」
部屋の外から誰かが侵入したわけではない。
考えたくはねーが、俺たちの中の誰かがやったって事なのかよ………
「お兄さん。お兄さんの考えていることは分かります。私とお兄さんで、ちゃんと犯人を捜しましょう」
「あ、あやせ?………そうだな。桐乃を泣かせた奴、ぜってー捕まえてやるぜ」
それにしても、こういう時の捜査の基本は………
「なぁ、黒猫。おまえ、気を失う前に、何か見なかったか?」
「………えっ!?な………何?」
完全にふらふらしてやがるな。大丈夫かよ?
「気を失う前に見た物は何だ?」
「………倒れる瞬間に………水色の………下着を見たわ………」
「なるほど。つまり、今犯人は水色のパンツをはいているわけだから、今ここでぬがs」
「死ねェェェェェェェェッ!!!」
あやせたんのハイキックが見事に俺のアゴに直撃する。
さ、さすがだぜ、あ…やせ…たん………あ…水色………?
「兄貴、兄貴っ!」
「う………ん?」
気がつくと、心配そうな顔をしている桐乃の顔が目の前にあった。
俺に馬乗りになって―――って、あの時と違ってやべーよっ!?
「桐乃。とりあえず、どいてくれ」
俺は努めて冷静に声を出す。
………正直危なかったぜ。よく耐えた。俺のリヴァイアサン!
「あやせは?」
「え、えーと………一階で他のみんなと一緒。加奈子を緊急逮捕した?みたいな」
「ま、マジかよ!?」
な、なんだとっ!?加奈子がやったのか!?
「う、うん。何でも、最後に部屋を出たのが加奈子だからって………」
………いや、何かおかしい。
俺は記憶を失う前に、とても大切なものを見たハズなのだが………
「思い出せねぇな?」
「何が?」
「あやせに蹴られた瞬間に、この事件を解決する、非常に重要な手がかりを見たんだよ」
「えっ?それ、マジ!?」
「ああ。だが、蹴られたショックか、一体何だったか思い出せねーんだよ」
ホント、何だろうな?
三角形………?よくわからん。
クソッ!断片的過ぎてこれじゃあ何の役にもたたねーよっ!
「あ、あのさ………さっきと同じ状況を作れば思い出せる………かな?」
「ん?………ああ、そうだな。思い出す可能性が出てくるかもな!」
「じゃ、じゃあ、あんたはそこに居て!」
「ああ………?」
まだよく働かない頭のまま、桐乃の方をぼぉっと見てしまう。
ホントにこいつ、可愛いよなぁ。さっきはマジで危なかった。
あんなに密着されたら、俺のリヴァイアサンが我慢出来なくなっちまうじゃねーか………
そんなふうに考えているうちに、桐乃は何かを決意したような面持ちで、俺の前に立ちはだかった。
………………………ま、まさかっ!さ、さっきの再現って!?
「い、行くよ?」
「ま、待てっ!?」
俺の必死の制止も実らず、桐乃は足を大きく蹴り上げて………………………アレ?
俺の目の前には、想像もしていなかった光景が浮かんでいた。
まさに桃源郷。
つまり、桐乃のパンツが、だ。
「は、はやくしなさいよねっ」
はやく?なんのことだ?ああ、このぱんつを、はやくかんしょうすればいいんだな?
純白で染みひとつ無い。
女の子のふくらみと、その間に走るシワが目に心地よい………いや、目に毒な、桐乃のパンツだ。
それにしても、着ている服からは想像できないくらいシンプルなパンツだな?
さすがに女の子らしく、リボンの飾りみたいなのはついてるけどよ。
そして、このお尻にかけてのラインがむちゃくちゃエロい………
「き、京介!な、何か思い出した!?」
『何か思い出した』だと?
ああ、そうか。
「子供の頃と比べて、すっげェエロい………」
「ばっ、バカッ!死ねっ!変態ッ!」
な、なんで正直に感想を述べてんのに怒られてんの?俺?
「だっ、だからっ!黒猫のっ………犯人のっ………!」
………………………あーーーーーーーーー!そうだった!
俺、何、妹のパンツに見入ってんだよっ!?
ん?パンツ?………!!!
「わかったぜ!思い出したっ!」
「や、やっと思い出した?」
「ああ、もう、犯人も何もかもわかったぜ!」
「………で…も、もうわかったんでしょ?」
「ああ、そうだが?」
「じゃ、じゃあ、あたしのぱんつ、見なくたっていいでしょ!」
「………………………す、すまんっ!」
ああ、もう、俺は妹のパンツを食い入るように見続けるような変態らしい………
もう、人間として堕ちるとこまで堕ちてしまったような気分だぜ………
それはそうと………!
「それじゃあ、俺の推理を述べることにしよう」
俺の前には、桐乃、黒猫、沙織、あやせ、加奈子。全員が居る。
黒猫はまだぐったりして、ソファーに横たわっている。
沙織はいつも通り。桐乃は………少し不安そうな表情だな。
加奈子は………おいおい、いくら手錠につながれてるからって、そんな格好じゃぱんつが見え………見え………うん、見えるよな。
さすが、お子様らしいぱんつだな。覗き込んで損した気分じゃねーか。
………って、そんなことしてる場合じゃねーな。
「まず、状況証拠からだ。
初めの、黒猫が倒れている状況だが、俺たちは、それを『死んでいる』と考えてしまったわけだ。
そして、倒れた黒猫を介抱するどころか、妙なものを呼ぼうとした人物が居る。
さらに、俺が決定的な証拠をつかもうとしたその時に、邪魔が入った。
………………………この全てに関わっている人物が一人だけ居る!」
「あんたじゃん」
「京介氏でござるな」
「てめーじゃん」
「お兄さん、ですね」
てめーらっ………
俺、もう泣きそう………
「そ、そうじゃなくってだな?
………新垣あやせ。犯人はおまえだっ!」
「えっ!?………な、何のことですか?お、お兄さんっ!」
「その焦り方が何よりの証拠っ!
それに、初めからおかしかったんだ。
倒れた黒猫をいきなり死んでいると判断したり、埋めようとしてみたり、挙句に死体処理班を呼ぼうとしたりっ!」
「ち、違いますっ!わたしはただ、本当に死んでいるとっ!」
「いーやっ!加奈子を逮捕したのだって、自分から疑いをそらすためっ!」
「そっ、そんなっ………」
俺の前のあやせは、涙ぐんで哀れそうな表情を見せる。
だが騙されちゃいけない。俺はこれまでに何度も何度も騙されてるもんな!
「何より決定的なのは、黒猫が倒れる前に見た光景………即ち、水色のぱんつだっ!」
「な、なっ、何を言ってるんですかっ!?へ、変態っ!」
「さっきのおまえのハイキック。あの時に俺は見ちまったんだ………
おまえのはいている、その水色ぱんつをなっ!!!」
「キモッ」
「うわぁ………」
「うへぇ」
おっ、おめーらっ!!!まるで俺が変態のような目で見んなっ!
「そう。あやせたんのハイキックで頭から消し去られていたが、桐乃のぱんつで思い出すことができたんだよっ!」
「あ、あ、あんたっ、な、何言ってっ!?」
「何にしても、これで決定的だろ?あやせが犯人だってなっ!」
「あの………先輩………」
「おっ、黒猫?大丈夫か?」
「先輩の推理………全部………間違っているわ………」
「………………………………………………」
あれ?
「みんな………ごめんなさい。たぶん、私が………『犯人』よ」
「な、何いってんのよ、アンタ?」
「あなたたちがお昼に行く前、部屋が寒すぎて、送風に切り替えた………切り替えた、と思ったのよ………」
「その時から、もう、朦朧としていたのでござるな?」
「ええ、たぶん切り替えを誤ったまま、気を失ってしまったのね」
えっ、えっ?
そ、それじゃ、お、俺のしたことって………?
「だ、だが、水色のぱんつって?」
「………私が言ったのは、あくまでも下着、よ?
加奈子が部屋を出て行くとき、心配そうに私を覗き込むものだから、ブラが見えてたのよ。
印象的だったから良く覚えていたのよ。」
「………………………………」
お、俺………オワタ?
「お・に・い・さ・ん?」
「ヒィィィッ!?」
「今回の事は、お兄さんのいつもの暴走ということで、とりあえず、わたしを犯人扱いしたことだけは許してあげますね?」
「そ、そうか。それはよかっ………………………『だけ』?」
「わたし、以前言いましたよね?桐乃にいかがわしい事をしたらブチ殺すって」
「あ、ああ。い、言った………よね?」
「『桐乃のぱんつで思い出すことができた』!?」
「ま、待て、おまえはまた何か誤解をっ!って、いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
まあ、俺があやせたんに全殺しされてる間にも、女の子同士は仲良くやっていたようで………
気がついたときには、ひとり満足そうな桐乃が、俺の目の前に座っていたというわけだったのさ。
「みんなは?」
「もう帰った」
「そっか」
「うん」
騒がしさが去り、二人だけの時間が流れる。
「あんたって、ほんと変態」
「何も言い返せねーのがツライぜ」
兄妹とは違う。友達とも違う。
何か暖かい空気。
「つか、ぜんぜんダメじゃん?
黒猫の事途中で忘れて、あたしのぱんつに夢中になってたりぃ、
『桐乃の事を泣かせるヤツは絶対に許さん』とか言ってみたりぃ?」
「ほ、ほっとけっ!」
幼馴染や恋人と一緒の時とも違う。
「こんなダメ男に彼女なんか出来るワケないよねー。あーかわいそー」
「そ、そうだな………」
でも、もしかすると、この空気は………
「だから、あたしがずっと一緒に居てあげる。あんたに『彼女が出来るまで』ね」
「ああ。俺も、おまえに『彼氏ができるまで』ずっと一緒に居させてくれよな」
「うんっ!」
End.
※熱中症には気をつけましょう。
―おまけ―
「そういや、ひとつだけ疑問が残る」
「はぁ?」
「いや、例の犯人探しの件だ」
「だからぁ、黒猫がクーラーの操作をミスっただけでしょ?」
「ああ、それはいいんだが………」
「じゃあ、何よ?」
「あやせが、黒猫が死んでる、って言った件だ」
「あーそれ?あやせが勘違いって言ってたじゃん?」
「………だがその後も、埋める、死体処理班を呼ぶといった、かなり過激な行動に出ようとしてなかったか?」
「………………………え、ええと」
「も、もしかして、ほ、本当は………?」
「そ、そ、そんなこと、あ、あるわけないって?」
「なぜ疑問系?」
「え、えと………あ、メール。………あ、あやせから?」
「内容は?」
「『お兄さんがまた変な事を言い出しても、桐乃はゼッタイに耳を貸しちゃダメだよ?』」
「………………………」
「………………………」
「とりあえず………」
「この事件の事は、忘れよっか?」
「そう………だな」
こうして、この事件は終結した。
疑問点なんて、あるわけない。
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最終更新:2011年08月03日 07:37