夕暮れは不安も夜空も運んでくる。
『来た』
次第に冷たくなってゆく風を感じながら、私は足を速めた。
もっと早く切り上げて、隠れているつもりだったのに。
予定よりも遅くなってしまった。
雲雀さんがいない時だけの書類が半端なかったんだよ。
事務処理慣れているのになぁ。
追いつかないほど、一気に出されて……
『間に合って』
危険になる予定のランボのところまで。
私は一気に加速した。
地上を行くのでは遅いからと、屋根を走ってゆく。
『見えた』
少し小さいが、あのチビ三人はランボ、イーピン、フゥ太だ。
既にイーピンが怪我を負い、三人とも走っている。
『ちっ、レヴィめ。もう仕掛けたの?といか、いたいけな幼女をいたぶるなんて一度床に沈めないと』
イーピン、女の子だからね。
私は軽々と三人に追いつき、その背に迫る下っ端を昏倒させた。
「あ!櫻ねぇ!」
『大丈夫?!フゥ太、ランボ、イーピン!』
後ろを振り向き、駆け寄るフゥ太。
『無事で良かったわ。イーピンありがとうね』
「謝謝」
「櫻ねぇ!後ろ!!」
フゥ太の慌てた声がするが、私は後ろにフォークを投げて迫ってきていた下っ端その二を倒した。
『はい、これで良し』
「櫻ねぇ。強い……」
『あはは、よく言われてるよ。まぁ、フゥ太には”秘女神”と言えばわかるかな?』
「!?あ……」
『まぁ、この後の戦いでは黙っていてくださいね』
「わかったよ、櫻ねぇ。僕、言わない」
『ランボ、イーピンも。いいです?』
「了解!」
「えー、ランボさん、ケチには嫌」
『……帰ったら私がケーキ焼いてあげますから』
「ケーキ!ランボさん、生クリームいっぱいのフルーツたくさん乗ったケーキが食べたい!」
『いいでしょう。じゃあ、ホットケーキをアレンジして贅沢なケーキを作りますね』
「やったぁ!ランボさん、喋んないからね!」
ケーキ一つで黙っていてくれるとは、いい子だね。
「なっ、櫻姉さん?!」
一分違いで到着したツナに驚かれた。
そこまで驚かなくとも良かろうに。
「ああ、まだいる!!」
あ、そこか。
まだ攻撃範囲に入っていない敵だから無視していたんだけど。
一軒先辺りから敵(下っ端その三)が襲いかかろうとする。
だがその切っ先は私にもフゥ太達にも届かなかった。
敵は別の者にのされてしまったからだ。
「ボンゴレ晴れの守護者にして、コロネロの一番弟子。笹川了平、推参!!」
あ~、笹川兄か。
「お、お兄さん」
ツナがビビッている。
というか、もう兄呼ばわりですか。
まぁ、美形だし、いいけどさ。
「まだだぞ」
ツナと一緒に来たリボーンが言う。
ん?あれ雑魚敵三人じゃなかったっけ?
その後、屋根やら電柱から襲い掛かってきた敵を、駆けつけてきた獄寺君と武君が倒してしまう。
……いいねぇ、ツナ。
頼もしい仲間が出来たじゃない。
そこそこ強くなってるし。
「ったく!なんでアホ牛がリングを……」(獄寺)
「もう大丈夫だぜ」(山本)
「み、皆~」(ツナ)
ツナは少し離れた場所にいたが、駆け寄ってくる。
心配してたのね。
「でも、なんで櫻姉さんも?」(ツナ)
『まぁ成り行きよ』
と、いうよりこれからわかるさ。
「僕は大丈夫だよ、ツナにぃ。でも、……」(フゥ太)
『私がついた時には、既にイーピンが、ね』
「イーピン、大丈夫!戦ったの?!」(ツナ)
「少々。でも、もうまんたい!」(イーピン)
「ちょい、待ち。やるじゃねぇか」(山本)
「謝謝」(イーピン)
イーピンが武君に絆創膏を貼ってもらい、場が少し安心した雰囲気になる。
「ツナ~、ランボさん腹減った~負んぶっぷ~」(ランボ)
「って、道で寝るなって汚いだろ。ったく、狙われたのお前なんだぞ。少しは責任……っておい。そんなところにリング引っかけて、ゴミと一緒じゃん」(ツナ)
まぁ、ランボにとっては楽しくなるためのアイテム、みたいなものでしょうしね。
「しかし、あまり骨のない連中だな楽勝だぞ」(笹川兄)
余裕な笹川兄。
「そいつはあめぇぞ」(リボーン)
『そうそう』
「櫻姉さん?」(ツナ)
ツナが不思議そうな顔をする。
「連中はヴァリアーの中でも下っ端だ」(リボーン)
『雑魚よ』
「本当に恐ぇのは……っ!」(リボーン)
『来ましたね』
上の方から明らかにオーラが違う気配が現れ、リボーンは首をすくめ、私は目を細め右手にフォークを用意する。
「お前たちがやったのか。雷の奴はどいつだ」(レヴィ)
崖の上に現れたのは、レヴィ。
……後で殴ろ。
「そこにいるパーマのガキだな」(レヴィ)
「ち、違います。誤解で……」(ツナ)
「邪魔立てすれば、消す」(レヴィ)
ツナ、下手に出てもダメだって。
「待ったレヴィ」(ベルフェゴール)
「独りで狩っちゃだめよぉ」(ルッスーリア)
「獲物は仲良く、シシシシ」(ベルフェゴール)
来たか。
敵の本体にして、幹部が。
「む」(レヴィ)
「事情が変わったよ。どうやら他のリングの所持者もそこに」(マーモン)
リボーンが上を向く。
どうやら、マーモンに注意がいっているようだ。
「うわぁ、こんなに」(ツナ)
驚くなよ、ツナ。
「ヴォオイ!よく騙してくれたなカス共」(スクアーロ)
『ほぅ、では騙されてしまったそっちは悪くないのね?』
「っち!秘女神か!やはり、てめぇの差し金か?!」(スクアーロ)
「で、でたぁあ!って櫻姉さんなにしてるのぉ!!」(ツナ)
「あら~ん、珍しい。秘女神がいるなんて、ねぇスクアーロ。あの子、私にちょうだい」(ルッスーリア)
「「なっ!」」(獄寺&山本)
「王子の方が欲しいんだけど。あの気の強さ、すごく気に入ったし」(ベルフェゴール)
「ヴォオイ!それより、雨のリングを持つ奴はどいつだ!」(スクアーロ)
「俺だ」(山本)
「てめぇか、三秒だ。三秒で切り身にしてやる」(スクアーロ)
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