マートルを含めての会議の翌日、スグに私達は行動を開始した。
双子は通常運転に加えて、ほんの少しずつロックハートに悪戯してゆく。
ハリーとロンは情報収集に専念。
ネビルはスプラウト先生に同意を得て、色々薬草などで思案し始めていた。
スプラウト先生はロックハート反対派である。
んで、マートルはというと、幽体であることを活かして彼の部屋へと侵入し、部屋を水浸しにするなどの悪戯をしている。
私もチョイとばかしそれに同行して見学していたが、かなり凄い事になっていた。
……ファンレターとか濡れて読めない!とかになっていないといいね。
私はこれらの悪戯の総集編というか、最後の一押しというか、とりあえず、最後のおおとりを思案しながら作成中である。
ただ、これを作りながら他の魔法薬作りつつなので結構忙しい。
それに何のかんので、私が作るものはこちらには存在しないもの。
つまりは新薬。
なのでアルバスじいちゃんやセブルスから「特許を取ってはどうか」と言われている。
でもなぁ、それって敵の目標になるって事じゃん。
昨年のでもう目を付けられてるっていうのに、これ以上私の利用価値を上げてどうするよ?
まぁ逆に考えて、護衛を堂々とつけられる!っていうメリットが発生してるんだろうけどさぁ。
それを引き替えにしても、ちょっとリスクあるよね。
『しかし、まぁ。ちょいっと無謀かもなぁ』
魔法薬を作りながらそんな言葉を口にする。
それもそのはず。
今いる場所は秘密の部屋であり、大鍋の中身もセブルスには秘密で調合中の品物だったりする。
もう完成間近なので気を抜くことは出来ないが、思わずそんな言葉が口から零れ落ちてしまうほど、危うい事をしているという自覚だけは持ていた。
鍋を数度かき混ぜて、文章と映像だけでしか分からないそれが完成しているかどうかを、どう判断しようと考え込む。
一度ため息をついて、私は己の杖を取り出した。
杖に宿る蛇の神様である慧に出てきてもらい、中身を鑑定してもらった。
相変わらず、赤と黒の気品と威厳を描いたような着物を着ている彼は、私から事のしだいを聞くとすぐに鑑定に移る。
なぜかため息をついてから鑑定に移った慧は、真剣にその薬液を分析していた。
人がそれを鑑定するにはネズミを実験に使ったりしなければならないが、神である慧にはそれは必要なく、ただ見つめているだけである。
といっても、彼に一度聞いたところ【私の視界のみに数値のようなものが出ている。そうだな、禪の世界のアイテム分析のようなものだ】と言われた。
リアル・○カウターか。
いや、分析の面ではリアル・リア○ターかな。
命名だけでなく、私の創造魔法の影響もあるらしい。
まぁ神様だし、いいんじゃないかな?
鑑定結果は八割がた完成しているとのこと。
やはりレベルの高いものは、完成度九割五分という具合にはいかないらしい。
だが、用途を察した慧は【この間制度であるならば、漬け込み期間を少し伸ばすことで禪の望んでいる結果は可能だ】と言う。
私はそれを察せられたことにも吃驚したが、相手は神様だとローブの中から一冊の本を取り出した。
古いはずのそれは、魔法の気配が浸み込んでいる。
元司書候補としては胸が痛むが、その本を大鍋に投げ込んだ。
魔法薬がちゃんと本のページに浸み込んでゆくのを見届けてから、杖を振って大鍋の周りに結界を張る。
それから天上から土などが落ちて入って行かないように、鍋の上に薄い天蓋のようなものを作り出した。
天上は鉱石だから、そうそう土などが入る事は無いだろうが、念には念をである。
これでいい。
あとは時間をかけるしかない。
部屋の隅にまた別の大鍋を出しながら、私はそう思う。
慧がその様子を見ながら、大鍋の結界に手をかざしているのを私は知らずに別の魔法薬の作成に手を付けた。
放課後の大半は秘密の部屋で過ごす事となった。
真っ黒な事を考えることはしていないが、薬づくりと探索に精を出している。
狛に聞いたところ、連れて行けと言われてミネルバという保護者を伴いながらも連れて行く事に。
彼は北にあった二部屋と南の三部屋を見て懐かしんでいた。
またこの間に双子が西の部屋を見つけた。
相当解らないように隠してあった様で、部屋の前のところに即席で設けた作業台には、何枚も紙を使って面倒な計算をした跡だった。
ミネルバと狛、双子と共にその部屋に入り、中を確認する。
他の部屋と同じように質素ではなく、最初からイメージカラーを出した部屋だった。
しかも黄金細工がそこらかしこに置かれていて、金庫な感じだ。
『これ……』
明らかにひと財産のそれらを前に、私達は言葉を失う。
『ねぇ、ミネルバ。ここ見つかんなくてよかったね』
しばしの沈黙の後に、私はそう言う。
「ええ、そうですね禪。これだけの財産が入れば、一気に加速してしまったでしょうから」
ある意味、不幸中の幸いだ。
「「すっげぇが、なんでグリンゴッツに預けなかったんだ?」」
『もっともらしい疑問ですね、ジョージ、フレッド。でもあの遺書を知っているならば、こういう事があっても何の疑問はありません。あの銀行の金庫は、鍵さえあればその子孫は財産を手にするでしょう。それを分かっていて、その子孫が暴走した時に反逆できるよう別に財産を隠していても、何ら不思議はないと思います』
何手先まで読んでいたかは、わからない。
だが用意周到なのだけは確かだ。
『つまり私の一存で動かせって事か。まぁ、今は動かさないけど』
するなら、アルバスじいちゃんにもらった財産から出したという形にしての暗躍か。
私は基本、降って沸いた金は貯金か募金している。
決して湯水のように使ったりはしない。
『ま、この部屋には移動用魔法陣は無いようですし、東側を探しましょう』
「「了解」」
『あ、二人とも欲しいとか思いますが、換金とか色々足がつくので、要り様になったら私に言ってくださいね。ある程度の都合はしましょう』
「姫?」
「俺たちは」
「「そういうつもりないんだが?」」
「禪。もう少し考えてから行動と発言をしなさい」
口々に言われるが、ま、ただの布石だ。
『冗談ですよ。さぁ、次を探しに行きましょう』
次ページ:忙しさの中のクディッチへ