授業を終え、秘密の部屋の探索をあらかた終えた双子と共に見取り図を作っていたところ。
ふくろうが手紙を届けに来た。
「姫、そりゃなんだ?」
「……って、おい。もう一匹来たぜ」
真っ黒なふくろうが来て、漆黒の手紙を落としていった。
まったくいい予感がしない。
『あー……。二人とも今日はここまでにしてもいいかしら?私、アルバスじいちゃんのところまで行ってくる』
二人にそう言うと、私は校長室を目指した。
『レモンキャンディー』
合言葉を言い、現れた階段を上る。
まったく、どうなってんの。
今回の件は阻止したじゃん。
だから変な事は起こらないはずじゃん。
あれか。
実はこの学校、訳あり物件的な要素があったか。
そんで変な地場とか発生してて、毎年なんかあるんか。
うわー、怖い。
って、まぁ似た様なもんか。
ゴーストいっぱい居るし、いろんな仕掛けあるし。
本来住むには不向きな場所だよね。
「そこで何をしている」
ん?
セブルスの声がしたと思ったら、私としたことが校長室の扉の前で止ってしまっていた。
『あー、ごめん。考え込んでた』
「はぁ。やはりか。そろそろお前のそれにも慣れたが、隙だらけだ。少しは気をつけたまえ」
校長室に入りながら、そう言われる。
『ですよねー。まぁ、物騒になったらそうしますよ。別のスイッチが入るので、大丈夫です』
戦闘スイッチが、ね。
校長室に入れば、フォークスが宙を舞っていた。
「来たようじゃの」
『はぁ……。手紙が二通も来ましたからね。しかも、どちらからもいい感じがしないし』
「それを早く言え。そして見せろ」
『そう急かさないでよ、セブルス。はい、これがそうよ』
手紙二通を差し出せば、セブルスはそれをひったくる様に取った。
アルバスじいちゃんはそれを見て、眉を片方動かし、階段を下りてくる。
「開けても?」
『どうぞ。嫌な予感しかしないけれど』
開封は私でなくとも良いはずだ。
セブルスが封を開け、手紙の文面を見た途端に顔をしかめる。
一通目はそれで一度机に置き、二通目も同じような反応をして(いやこっちの方が眉間のシワが深かった)また机の上に置いた。
アルバスじいちゃんがそれを覗き込む。
「禪。こりゃ、どちらもクセがあるのぅ」
「……おい、本当にこれに行くと?両方とも欠席してもかまわぬぞ?」
もう一度ため息をついてから、私は振り向いた。
手紙の送り主は二つとも違うが、性格はどちらもナルシストの人物だ。
『白い手紙は、ロックハートで、漆黒のそれはルシウス・マルフォイからか』
もう”さん”づけも”先生”とも呼んでいない。
ちょい見下し中だ。
まぁ、ルシウスの方は助けてあげても良いとは思うが。
『なんで文字がすべてピンク色なのよロックハート』
多分、ライラック色大好き―!というところからの拘りなんだろうけどね。
『んで、ああ。やっぱりナルシッサさんの誕生日の招待状ですか。去年の約束もあるし、まぁ幾つか防犯もしてくから大丈夫かな?』
大人二人は驚くが、慧がついている限り、そうそう私は安全圏に居ると言っていいだろう。
「禪。分かっているのか?!そこは――」
『知ってる。でも私は大丈夫。慧がついているよ。それに、今はまだあっちも本格的には動き出さない』
私がそう言えば、アルバスじいちゃんが探るようにこちらを見てきたが、これは本当の話だ。
敵が動き出すのは二年後。
いや、もうそれを切っているか。
どうやら本意と取られたらしい。
アルバスじいちゃんは身を乗り出すのをやめ、ため息をついた。
「ならいい。じゃが、ロックハート先生の方をどうするか」
『そうね』
ロックハートが出した手紙の内容は、嫌な予感がそのまま的中したものだった。
あの時ドラコ達から集めていた署名。
それは彼がその名誉を回復しようとしている、いや誇張しようとしているだけの人気取りの講習会をしようというモノだった。
署名は既にあるバスじいちゃんの元に送られてきており、部屋の一角にその束が置いてある。
束になるとは……怖ろしいよ、主にファンが。
「まだ二年生だというのに……」
『セブルスが心配するのも無理ないけれど、これは本来”あったこと”。ものすごーく嫌なんですけどね』
そうロックハートが署名付きで提案してきたのは、”決闘会”の開催。
あー、ファンの人からはヨダレ物だよね。
そりゃ私も見たかった!って思ったけどさ。
学校が危険になってからの開催だったはずだから、今年の初めに安全を優先したが為にそれをふいにした。
ハズだったのにこの状態。
「署名をふいにするのもあれじゃしのぅ」
「だが、いくらなんでも早すぎ……」
『……』
どうしようか。
問題は例によって、ハリーだ。
……しかたない。
先に狛の原型と話させよう。
それで己の能力に気づいてもらって、注意を促すか。
んで、ドラコの時は私が名乗り出る。
『アルバスじいちゃん、その決闘会は了承してください』
「いいのかね?」
「禪?!」
アルバスじいちゃんの目が光り、セブルスが驚く。
『どうせ近いうちに戦闘が訪れる。それの準備だと思ってください。……それに、ハリーはその仕方を知らねばなりません』
去年は、あわや戦闘に乱入し相手のペースを奪いこちらの読み通りに進めた。
だからハリーは敵に未だその身にかかる魔法の威力を、一回だけの死でしか知らない。
まさか触れるだけで灰と化すくらいの強力な魔法だとは。
だが、それも戦闘と呼べるものなどではない。
ただ一方的な事だ。
そして、この二年生に置いて戦闘の基本を知る筈であったのだ。
私が最初っから止めさせたために、主軸となる彼らは学んでいない。
「奴らにはまだ早いのではなかったのか?」
『今年学んでおかないといけないんですよ。彼らは』
魔法使いの本来の戦闘と自分の力の制御を、ね。
あの後、セブルスを説得して決闘会を開催することを校長室で決定した。
ハリー達には必要だと判断されたのである。
この報せはすぐさまホグワーツを駆け巡った。
ロックハートの攻撃シーンを見れると歓喜するファン。
ドラコ達のように仕返しができると不敵な笑みを浮かべる者。
また変なイベントかとため息をつく者。
どう攻撃をし、どう攻撃を避けるべきかと調べものに走る者。
だが上級生は疑問に思っている者も居よう。
それも分かってはいたが、禪はそれらを眺めながら、ステルスモードで移動していた。
校長の孫だから何か知っているのではと、問い詰められるの避けるためである。
『でも、ハリー達には問われるか。まぁ、明日辺りに狛と話させようか』
別段、驚いた反応ではないねぇ。
予想の範疇を超えない。
……ヴォル様とかも、なんとなーくこういう事を感じながら行動してたのかな?
秘密裏に動くのは意外と性に合ってるんだよねぇ。
友達がもともと少なかったから、単独行動はお手のものさ。
さぁ、ハリー。
覚悟してよね?
これから忙しくなるだろうから。
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