偽りと経済事情

 

「ダメーーーーーッ!!!そんなのノーサンキュー!」(ナルト)

 

  猫がいやいや引き取られていくのを見送りながら、ナルトの声が響いた。

 

「オレってば、もっと、こう。スゲェー任務がやりてーの!他のにして!!!」(ナルト)

 

 駄々をこねているようだ。

 確かに彼ら、カカシ班に与えた任務はイージーで平々凡々なモノばかり。

 争いなどないもの。

 

 猿飛さんは一瞬こちらを見て、ため息をついた。

 

 私は彼にナルトは”運命の子”と言ってある。

 だが、彼には言えぬ事実に、”運命の子”は複数いるという事項がある。

 一人では行えぬのだ。

 あんな予言、理不尽にもほどがあろう。

 

「ナルト、お前には任務というものがどーいうものか説明しておく必要があるな」(猿飛)

 

 イルカ先生が罵倒した後、なぜか猿飛さんが説明を始める。

 

 曰く、依頼は大きく分けてA・B・C・Dの4種類(裏任務はこのどれにも属さない特別枠:通称S・SS・SSS)。

 一方の忍者の方は、下忍・中忍・上忍・火影というふうに能力ごとに分けられている。

 ようは能力や、その任務の内容を検討し、振り分けているのだ。

 その振り分け作業を担っているのが火影(今は猿飛さん)・暗部総隊長(私だな)・元老院(猿飛さんの同期など)の三権。

 どれもそうそうなれるモノではないが、私は名を変え、姿を変え、ずっと暗部総隊長のままいる。

 知るのは、火影になった者のみ。

 いや知らせて、契約で縛るのだから、半分脅しではあるが。

 

 まぁ、さておき下忍であるナルト達にはCかDのどちらかが精いっぱいだ。

 実力ではなく、経験が浅すぎるため任務には不向きなのである。

 

「ど、どーもすみません」(カカシ)

 

 カカシがチラリとこちらに視線を向けるが、うん。

 勘がいいね。

 

「仕方ないのぉ。お前たちにはCランクの護衛任務をしてもらう」(猿飛)

「アハ!」(ナルト)

 

 猿飛さんはわざとらしく咳払いし、そう言った。 

 

「だれ?だれ?大名!?いやここは、お姫様?!」(ナルト)

「慌てるでない。翠殿呼んできてはもらえるかな?」(猿飛)

『承りました』

 

 その場で分身を出し、呼びに行かせる。

 

「ねね?どんな人だってば?!」(ナルト)

 

 ナルトが私の方に聞いてくる。

 ……もう着いたことがバレたのか?

 いや、ただ単に待ちきれないだけであろうが…………。

 猿飛さんの方に視線をやり彼がうなずいてから、ナルトに答えた。

 

『背が高い方ですね』

「性別は?」(ナルト)

『それは依頼人の方と考えてよろしいでしょうか?』

「もちろんだってば!」(ナルト)

『男の方ですね』

「ちぇ~、お姫様じゃなかったてばよ……」(ナルト)

『もうそこの扉まで来ていますので、直接ご覧になるのが良いかと思います。火影様、入ってもらってよろしいでしょうか?』

「ああ」(猿飛)

『では』

 

 すっと扉の方を振り向けば、分身が扉を開け例の依頼人を通した。

 依頼人が部屋に入ると同時に分身を消す。

 護り?

 関係ない。

 本体である私がいれば充分。

 カカシですらいらないレベルだ。

 

「なんじゃ、ガキどもばかりじゃないか」

 

 最悪の依頼人だな、まんま。

 昼間っから酒を飲むな。

 

「特にそこのチビは、わしを守り切れんのか?」

 

 もろに喧嘩売ってますね

 ナルトはその言葉にほかの二人を見て、自分の事だと気付いたらしい。

 

「ムキ―!!ぶん殴る!」(ナルト)

「これ、ナルトやめなさい。すみません」(カカシ)

『カカシさん、もう少し弟子の方々に気構えを話しておいてくださいね』

「わしは橋づくりの超名人、タズナというもんじゃわい。これから国に戻って橋を完成させるまでの間、命をかけ超護衛してもらう」(タズナ)

『では、タズナさん。こちらに署名を』

「ああ、契約書か。ほい、これでいいじゃろ」(タズナ)

 

 

 原作にはないこの契約書への署名。

 もちろんだが、私が導入したものだ。

 依頼書だけでは不安すぎる。

 大体が、紙切れ一つで人の命を動かそうなどもってのほかだ。

 だから、この契約書の中身に書かれた一見マークみたいな絵に、びっしりといろいろ書いてある。

 例えば、依頼内容と全く違う時にはたとえ別の形であっても、料金をきっちり払ってもらいますとか。

 偽名での署名しても特定してしまうので意味はないとか。

 倫理に反せば、その場で打ち切る場合もあるとか。

 まぁ、その他諸々だ。

 中には食中毒に関することや病気関連の事もある。

 始まりの二人に任せられたからには、こういう忍者側の保障・保険は力を入れて作った。

 

 さぁ、この依頼人どういたそうか……な?

 

 


 

 

「しゅっぱーつ!」(ナルト)

「何はしゃいでんの、アンタ……」(サクラ)

「「…………」」(サスケ、カカシ)

「だって、俺この里から出たことねぇーからよ!」(ナルト)

 

「ほんとにこのガキで大丈夫かのぉ」(タズナ)

「まぁ、今回は俺もいますので、大丈夫ですよ」(カカシ)

 

「忍者なめんじゃねぇよ、じじぃ。オレってば火影になって皆に認められるんだってば!すごいんだってば!やればできるんだってば!!」(ナルト)

「火影か、確か一番偉い里の長だろう?責任も重い。お前のようなガキに務まるもんじゃねぇ」(タズナ)

「ムキ―!絶対認めさせてやるってば!」(ナルト)

 

「認めやしねぇよ、クソガキ。そんなんじゃぁな」(タズナ)

 

 

 なかなか鋭い目をする依頼人だ。

 やり取りを上から見下ろして思う。

 今、私を含む上層部組の四人は門の上にいた。

 見張り台の更に上、屋根の少し上にステルス状態でプカプカ浮かびながら。

 

 

『ナルトはいつ気づくのか……楽しみだね』

「瑠威殿は意地悪ですな」(猿飛)

「瑠威姉ぇ、ナルト大丈夫かな?」(レイスケ)

「そんなに心配することはない。なるようにしてなるのだ」(ガロ)

『ガロは難しいこと言わないの。ま、こうやって世間にもまれることも成長に必要なのよ』

「うん……」(レイスケ)

『今はこれでいいの』

「……では、瑠威殿」(猿飛)

 

『我の問いかけに応じ、この場に降臨されよ”朱鶯(シュオウ)”』

 

 召喚したのは、赤い小鳥。

 実はウグイスなのだが、力の影響で赤いのだ。

 

<へぇ、今日は何だい?>

『朱鶯、すまないけどこれから少し偵察に行ってほしい。もしも行った先で事が起こったら、見守るだけでいい。なり行きを見守って落ち着き次第こちらに戻ってきて』

<ふぅん?まぁいいか>

 

 スイっとその場から飛び立ち、朱鶯はナルト達を追いかけて行った。

 赤いから目立つには目立つ。

 だが、高度を高く持てば視力がずば抜けて怪物な奴ら以外には見つからない。

 

『さて、これで』

「待つだけじゃな」(猿飛)

「”矢は放たれた”だっけこういう時に言うのって?」(レイスケ)

「さぁな。だが、今は待つ時だ」(ガロ)

 

 


 

 

 ほどなくして、朱鶯が戻ってきた。

 さっさと火影室に戻った四人に、赤いウグイスは告げる。

 

<敵が出てきたよ。確か、霧隠れ:鬼兄弟だった>

「なんと!」(猿飛)

『さっそく契約違反か。んで、ナルト達は?』

<無事みたいだよ。ナルトが毒くらったけど、すぐ自力で血抜きしていた>

「瑠威姉ぇ、これ」(レイスケ)

「完全に別任務だな。これは、相手の経済事情も相まっての依頼内容違いと受け取っていいだろう」(ガロ)

『ガロの言う通りね。確か波の国はかなり文化レベルが低いはずだわ』

「ああ。医療設けるのに一苦労していて、死亡率も高い」(ガロ)

「この世界でも、貧困層が多い国ですな」(猿飛)

「でも、護衛対象は橋づくりの大工だよね?」(レイスケ)

『レイスケ、そこは考えてみて。地図の……ここが波の国でしょ?各国の都市がここと、ここと、ここ。で、この世界の主な交通経路は、馬車・徒歩くらいなもん』

「わかった!敵の狙いは流通経路を抑えることだね!」(レイスケ)

『流石、元神候補。そいうことよ、まぁ敵が何処のどいつか何となく目星ついてるけどね』

「どこじゃ?」(猿飛)

「落ちつけ、長よ。同じ長であったものとして、少し怖いぞ」(ガロ)

「……すまん」(猿飛)

『…………。はぁ、魂詰め過ぎはお互いさま。敵だけど、他にも同じ依頼内容のがあってね。ほら、これらよ』

 

 書類をいくつか取り出し、三人に見せる。

 依頼主は違うがタ―ゲットの名前はすべて同じだ。

 

「っ!ガトー・カンパニーか!」(猿飛)

『ええ』

「確かに、あの企業のやり方にはこの里の者たち(商店街)からも、ワシらに苦情が来ておる」(猿飛)

「潰していいよね?!」(レイスケ)

「……目を煌めかせて言うな、レイスケ」(ガロ)

「だって、仕掛けてきたのはあっちだもん!」(レイスケ)

『いいわよ、レイスケ。潰してしまいましょう』

「いいのですかな?あの企業のやり方はあくどいとはいえ、大企業であることは事実」(猿飛)

「やるなら今というだけだろう。手遅れになってしまわぬ内に、膿は出してしまうに限るというからな。特にガンは」(ガロ)

『ま、いい人材だけ引き抜いてしまいましょう。あれだけの大企業です。人事とか経理なんかもかなり優秀な人間でしょう。まずその合図として、頭をつぶしてきます。レイスケ、今から私たちは応援部隊として援護という名目で波の国に行きます。いいですか?』

「もちろんだよ!瑠威姉ぇ!!」(レイスケ)

 

「瑠威殿」(猿飛)

『言いたいことはわかっているつもりよ』

 

 抹殺ガトーという任務に盛り上がっているところに猿飛さんが、制止の声を挟んでくる。

 

『行きたいのは、やめておいた方が確かに彼らの力を引き出せる。けどね?それでいいんだとおごってしまったら、それは慢心なの』

「やらずに後悔するより、やって後悔をしようよ!行動しないなんて、愚の骨頂だよ!」(レイスケ)

「おい、猿飛のじじぃ。こいつらは止められんぞ。元一般人のくせに、こいつらは俺より厄介だ」(ガロ)

『厄介って、何よ』

「むー」(レイスケ)

「諦めきれぬであろうが。俺は魔王だから次があると分かっている。だが、ただの人間というものは次がないからこそ一生懸命に生きやがる」(ガロ)

 

 意外と良い事を言うな、ガロ。

 経験なんだろうが……

 

「わかった。ならば、敵は排除してこい。勧誘するかどうかは、瑠威殿に任せる」(猿飛)

『ありがとう』

「無茶はせんでくれ」(猿飛)

 

 

 どこまでも優しい猿飛さんだね。

 それは変わらないでほしいなぁ、戦闘時以外で。

 

『ガロ、後は頼む』

「任せておけ」(ガロ)

 

 私とレイスケはすぐに準備し、カカシ班を追いかけるように波の国へへと急いだ。

 

 

 次ページ:助っ人

 

最終更新:2017年07月08日 23:34
|新しいページ |検索 |ページ一覧 |RSS |@ウィキご利用ガイド |管理者にお問合せ
|ログイン|