予選会場に戻れば、十三試合目の我愛羅対リー。
しかもほぼ我愛羅の勝ちで、リーが粘っているだけ。
……我愛羅君が落ち着いているから、リーはあの大ダメージを受けていない。
人は失敗を重ねないと強くなれないのだが…………。
だが、我愛羅君のコントロールがまだ甘くて、砂の塊でリーの足を握りつぶしてしまった。
おい!こういう時の為の医療系忍術だけどさぁ!!
リーが運ばれていくのを確認し、レイスケに後は任せたと目配せをして追いかける。
既に彼は医務室に運ばれ、今から応急処置をしようという事になっていた。
やっぱり、綱手さんがいないのがかなり痛い。
って、火影共々そこで項垂れてんのよしなさいよ!
『火影様!』(上居)
「おお、ルイ殿」(猿飛)
『いいからその位置変わりなさいな!』(上居)
駆けつけてきた猿飛さんを退け、上忍連中に怪訝な目を向けられながらもまずリーの意識状態を確認する。
ただ気絶しているだけならばいいが、今回は出血もひどければ筋肉繊維組織はズタズタだ。
瞬時に結界を張り、周りから見えなくさせる。
そして、そのまま医療忍術を行使した。
自然治癒力を向上させるのではいけない。
そうしたら筋肉の中に砂粒が残ってしまう。
ならばと、私はチャクラを彼の血液と溶け合わせ、その間に滅菌されたガーゼを挟んで循環させ、足部分の傷をまさに血を血で洗う。
外に出てくる血はほんの数量ずつだから、出血死とかショック死にはならない。
ガーゼを通したことで、そこに取り出せるだけの砂粒がたまっていく。
ある程度溜まったところで、今度はガーゼを取り外し筋肉繊維組織を整え始める。
筋肉構造は既に前世でも頭に叩き込んでいるからな。
完璧に直してやる。
いい感じに整ったところで、血液を押しとどめながら、皮膚の修復をしていく。
あとはうっすら残るものの、きれいに修復された足を私は見て、力を抜いた。
『ふぅ、これでよし。だけどもう少し残ってるな……これ以上はスペシャリストでもいないと』(上居)
「ルイ殿、ちとやりすぎです」(猿飛)
『仕方ないでしょ。忍者やめるやめないの話まで発展しそうなのよ、この子の怪我』(上居)
私は唖然としている上忍連中に振り返り、
『まず、私のこの能力は他言無用!よろしくね』(上居)
「……それはないでしょう、ルイ殿」(猿飛)
『……まー、説得力ないか。ここに居る上忍ならばいいでしょうからね。医者とか看護師を遠ざけておいてくれてうれしいよ。心置きなく説明できる』(上居)
つまり、赤の他人の一般人をのけておいてありがとうと、ルイは言っているのだ。
「さて、皆驚きすぎだが、ルイ殿は下忍などではない。暗部総隊長にして、木の葉のナンバーⅡじゃ」(猿飛)
『それなのに、下忍でもこき使うつもりの猿飛さんの方が鬼畜ですよ。まー、任務だと思えばいいんですけどね』(上居)
「……なるほど。暗部総隊長クラスならば、あの綱手様と同レベルの医療忍術を使えるのもうなずける」(ゲンマ)
「ルイ~、俺は俺は!!」(ガイ)
『…………ガイ、場違いだ。感動する前に冷静になれ。それとも、暗部の特別訓練受けてみるか?』(上居)
「喜んで!」(ガイ)
『……』(上居)
下忍に変化したままの状態で、上層部の方たちと話すのは端から見ると異様だろう。
結界を張っておいて正解だった。
しかし、ガイめ。
ニュアンスでわからんものかね?
ゲンマは冷や汗たらしてるぞ?
暗部の特別訓練といえば、この木の葉では一番つらい訓練だ。
前にカカシに課すと宣言した訓練で、彼はものすごく嫌がっていた。
……どのみち、この二人には強くなってもらうしかない。
『猿飛さん、あと二組はどうするので?残っているのは三名だから誰かもう一回戦わなくてはならないでしょう?』(上居)
「もちろん、ルイ殿の出番じゃ」(猿飛)
『……鬼畜だわ、やっぱり』(上居)
「下人の子たちは既に力の限り戦っておる。ならば、唯一余裕があるだろうルイ殿に戦ってもらうまでじゃて」(猿飛)
「そうだろうとは思いましたが……」(ゲンマ)
やり過ぎであることに変わりはない。
しかし、残っているのは音忍。
上居の状態である瑠威ならば、どのような手加減もできるし、対処もできるだろう。
戻れば、既に次の試合は決着がついていた。
チョウジ対ドス。
原作通りの組み合わせであり、その勝者も原作通り。
音が残ったというのがかなり嫌だが、次の試合の方がもっと嫌だ。
「最後戦っていないものは一名。よって、既に戦い勝者となったものから対戦相手が選ばれます」(ハヤテ)
会場が少し混乱の色をにじませるが、威守班は冷静だ。
電光掲示板に堂々と名前が表示される。
キン対上居。
『……。レイスケ、行ってくるから後よろしく』(上居)
大半の者が自分に当たらなくてよかったと思っているが、長門達やレイスケ、カカシはそう思っていなかった。
なにしろ何度か医療忍術を行使してチャクラ消費を行っていることを知っているかだら。
だが、それも杞憂だ。
「まさか、ハンデをもらえるなんて幸運ね」(キン)
『そう言えるのも今の内よ?』(上居)
試合開始と同時に、私は瞬身してキンの首に手刀を叩きこんだ。
長門よりも早いその動きは、上忍の誰も追う事は出来ず。
さっさと身をひるがえしながら、私は予選の終了をハヤテさんに促した。
早く倒し過ぎたか。
会場に居る者は皆、目を見開いていた。
だが、こういう意味でキンとやらは本当についていない。
音の忍びを本当にこのままあの変態野郎の元に返すと?
しても彼ならば切り捨てるだけだ。
ならもっと、苦しんでもらおう。
ハヤテさんの指示の下、予選の終了がつげられ、勝者のみ一階に集められた。
本戦の日付のみ言い渡され、解散となる。
ゲンマあたりに分身を差し向け、拘束してもらう。
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