目の前に張り出されるトーナメント表。
本来、予選の時にひくものだが、今回は上役たちの話し合いで決まっていた。
「では、今年の組み合わせをここで決めるとしよう。誰か、よい組み合わせはあるかの?」(猿飛)
「今回は14名。少し多いとお見受けするが……」(風影)
火影邸の一室にて、この会議は行われていた。
出席者は火影、風影、そして主だった上忍(特に参加している班の上忍)、砂の上忍一人、暗部総隊長(もちろん私)である。
威守上忍としての私は分身。
本体の暗部総隊長としての私は、皆が知っている龍のお面をつけて出席していた。
*以降、翠の時は翠と表示
長門達は再不斬と白に加わり、護衛や敵の観察をしている。
選手たちの顔ぶれを考えれば、木の葉崩しとやらが始まるタイミングもわかる。
大蛇丸はドスを消さなかった。
つまり、彼を囮にしてでも計画を進める気なのだ。
流石は人体実験をするだけの狂人というだけある。
そうなると、既に獄中のキン達は運がいい方だろう。
各自が思考していると部屋に一人入室してくる。
「面倒なの事になってるのぉ。三代目、ただいま自来也、里へ戻りました」(自来也)
「おお。良いとこに戻ったな、自来也。翠殿から報告は受けている」(猿飛)
「自来也様が戻られたという事は、百人力だな」(アスマ)
木の葉の大半は安堵の声を漏らしているが、そんなことはない。
余裕ができたわけではないのだ。
ただの戦力追加である。
「木の葉の皆様、少し落ち着いて状況を考えてくれないか。たとえ伝説の戦力が来たといっても、抑えられるのは一か所」(バキ)
「なにぉ!自来也様ならば、一か所のみならず二、三か所!」(ガイ)
「青いな」(風影)
砂の忍びから咎められた事で木の葉の上忍の雰囲気が一気に悪くなる。
そこに長門達からの報告が(私限定で聞こえる)入る。
「落ち着け!」(猿飛)
『……残念ながら砂の皆様の言うとおり、どうやら油断はまだできないようだ』(翠)
「どういう事です、翠総隊長」(紅)
『今回の中忍試験には護衛もかねて暗部を配置するつもりだ。その前段階の情報収集として今里に何人か放っているのだが……どうも向こうは虐殺でもするつもりのようだ』(翠)
「「「「「「「!!!?」」」」」」」
『既に里に潜伏した集団が合計500名。里の近くで待機している者が、600名。そう驚くことではない。里を潰したいというのならば、それが一番簡単だろう。まぁ、今回はその為の戦力がどこに配置されているか、その敵のチャクラ性質、集団の構成状況を先に掴んでいる』(翠)
「翠殿、対処できるか?」(猿飛)
『それは暗部でという事でしょうね。対処は出来ますが、圧倒的に数が足りません。里の内部では、敵のほとんどの集団がバラバラで潜伏しております。此方は当日を待って迎え撃った方が確実に、より安全に打倒する事が可能でしょう。そちらは上忍・中忍の皆様に任せたいと存じます。なので、特別暗部の一部が里の外への対処をいたしましょう。此方の方が600名と頭数も多く厄介です。其方を蹴散らしてごらんに入れます。しかし、万が一もありますでしょうから、口寄せの術をマスターしておられる自来也様には、城壁の近くで待機していただきたい』(翠)
「作戦がこうもスラスラと……」(バキ)
作戦を言ったが、この作戦の穴に気づくものはいる。
「大蛇丸本人の対処は誰が行うんじゃ?まさか、三代目にやらせるわけにもいくまい」(自来也)
「自来也、ワシはもとよりそのつもりで……」(猿飛)
本人はそう言うが、周りの者達は猿飛さんの体力がすでに一回戦分くらいしかないというのを分かっている。
大体、大蛇丸本人を抑えても、その取り巻きもついてくることこの上ないのだ。
『火影様、僭越ながら大蛇丸は私がお相手しましょう。火影様は上忍たちと共にいていただきとうございます』(翠)
「しかし、奴にはわしが引導を渡さねば……」(猿飛)
「火影殿。ここは総隊長殿の意見を聞き入れたらどうです?敵は1100名以上。大半を木の葉の特別暗部部隊が受け持つとしても、指令伝達がままならなければ意味がないであろう。微力ながら砂も協力させていただくが、皆の士気が心配だ。やはり500名の軍勢を目の前にして臆さない人間がいるだろうか。鼓舞するためにも、貴殿はそちらに行くべきだろう」(風影)
「火影様。ここは自重なさり、翠総隊長にお任せいたすこととしませんか」(カカシ)
「俺もカカシの意見に同意だ。引導がどうのという前に、火影様の体力の方が持たねぇ。どう考えたって、ミイラ取りがミイラになるだけだ」(ゲンマ)
「相手は500名なのよね。なら、上忍だけで対処なんて不可能だわ。中忍も動かさなきゃいけない。いえ、下忍にすら非戦闘員の誘導を行ってもらわないと……」(紅)
「……という事は、里の忍び総出になるな」(ガイ)
「こりゃぁ、久しぶりの大仕事じゃのぉ。いい加減、腹をくくった方がええですぞ」(自来也)
そう。
この作戦は忍び総動員で行わなければならない。
だから……
懸念していた事を証拠を突き付けられるように、また長門達から知らせが入る。
『火影様。もっと厄介になりました』(翠)
「今度はなんじゃ?!」(猿飛)
室内にいた皆の視線がこちらに向く。
『狙いがもう一つ増えました。やつら、その時の混乱に乗じてサスケ以外の下忍も攫うつもりです。このままでは雨隠れの里の二の舞になります』(翠)
「ちっ、ゲスな奴らだ。いや、そもそもの狙いがサスケだったからそれ事てぇか」(自来也)
元からそのつもりの奴らだ。
しかも何度も来るという質の悪いストーカーとも言ってもいい。
里の何より大事な民、そしてこれからの未来を託すこととなるであろう下忍達を標的にされる。
この対策としてはやはり上忍や中忍が一緒に行動せねばならない。
しかし、それにはより複雑に情報伝達がなされなければいかず、この情報伝達が上手くいかないとカカシがまだ下忍や中忍だった時の戦争のようになってしまう。
そのことを各々が分かっていた。
これを打開するにはどうするか。
大きな戦力が陣取り、リーダーシップを持って指揮すればいいのである。
それはすなわち、火影様を除いて他ならない。
「……わかった。大蛇丸の奴は翠殿に任せる。わしは皆と共にあろう」(猿飛)
室内に安堵の声が漏れる。
『ありがとうございます。して、対戦相手の順番でしたが、それを踏まえるといかように?』(翠)
「奴らがくるってぇもんで、この中忍試験が中止になるのはわかる。なら最後にして他の下忍達を見ておきたい」(ゲンマ)
『流石に最後に持っていくのは警戒されますでしょう』(翠)
「だろうな。更にこの作戦を知っている事で、試験に皆身が入らない。今年は流して次に行くべきだ。後処理もあるだろうしな」(シカク)
流石、シカマルの父親。
ごたごたは続くと言っているのだ。
まー、責任とかいろいろあるだろうしね。
「なら程よく進んだくらいかしら?それくらいが観客も盛り上がっていて尚更、相手も漬け込んできやすいと思うの」(紅)
「ああ、それくらいが妥当だ。で、問題は待機している選手の中にサスケがいるってことだが……。カカシ、ちょい耳を貸せ。これで何とかなるだろ」(シカク)
そこからは、どう大蛇丸をだまそうかという話となり、トーナメント表が決定されるのだった。
そんな会議で決まったトーナメント表に、当の選手たちは大騒ぎだ。
「で、俺の順番は?!」(ナルト)
「顔動かしてばかりいないでちゃんと見なさいよ」(サクラ)
「……ナルトは一試合目だな。サクラは……七試合目だ」(サスケ)
「そういうサスケは、五試合目か……。やべぇ俺三試合目だ」(シカマル)
「頑張れよ、シカマル。僕はポテチ食べてみてるからね」(チョウジ)
「少しはダイエットしたら?」(いの)
「…………」(ネジ)
長門達の雨班、砂の我愛羅班、そして威守班は無言でトーナメント表を見ていた。
第一試合 ナルト対ネジ
第二試合 ルイ対葉菜
第三試合 シカマル対テマリ
第四試合 ドス対レイスケ
第五試合 サスケ対出居
第六試合 羽場対我愛羅
第七試合 サクラ対カンクロウ
以上がトーナメント表となる。
まぁ、本来の試合になったのはナルトのみ。
さぁ、どうなるかな。
次ページ:第一試合へ