知人の、藤子漫画の心の師匠から、「シャドウ(ブラック)商会変奇郎」が面白い!と紹介され、文庫で全巻(といっても3冊だけど)そろえて、読了した。確かにオススメだけあって、面白かった!
まず驚いたのが、物語り開始早々、主人公が「ドーン!」を炸裂させるくだり。変奇郎、おまえもか!私はA作品を読んだのはこれが初めてなのでよく知らないのだが、「ドーン!」はA作品では定番の演出なのだろうか?
ともあれ、かなりのインパクトで登場する変奇郎(しかしなんだってあいつはあの恰好で夜の街を徘徊してたんだろう)。ダーティーな雰囲気が魅力的で、さっそく物語に引き込まれる。が、次の場面で変奇郎の素顔が出てきてびっくり!モミアゲのばしたプロゴルファー猿じゃないか!しかもなんとも下卑た表情。うーむ、愛せん。
と、第1話の変奇郎はただの妙な恐喝少年なので読者はおいてけぼりなのだが、それ以降の話では、行動の動機が自分や家族、友人を守るためへとシフトしていくので、すんなり感情移入でき、読むものを安心させる。また、素顔もどんどん可愛くなっていくので、気付けばばっちり魅力的な主人公となっているのだった。
さて、そうやって自分やまわりを脅かすものを、どう懲らしめるかというと、相手の弱味を握って、請求書をつきつける。ありていに言えば恐喝。この毒をもって毒を制する感じはいいですねー。中学生である変奇郎が、悪らつな大人たちの上をいく悪党ぶりで大金をせしめる様は、さながらあのアカギのようで、アレ風に言えば「さすが変奇郎!おれたちにできない事を平然とやってのけるッ そこにシビれる!あこがれるゥ!」てなもんです。
請求書。このアイデアは独特でいい。変奇郎の力を持ってすればもっとすごい事ができそうなのに、彼のする事といったら、小悪党に50万円ぐらいの請求書をつきつけること。この辺のリアルな感覚が大好きだ(もっとも、現在の金銭感覚とはずいぶん違うと思うけど)。ジャンプで連載されていたら、こうはいくまい。そして、逆らえば「ドーン!」が炸裂!これ、水戸黄門の印篭みたいで、かなり爽快。
また、請求額の内訳も面白い。「雑費」などのうさんくさい水増しがあったり、「先生にシカラレ料」「満賀くんショック代」などのものすごい直球なものなど、項目が変奇郎の個性全開で、いちいち楽しい。
そして、この物語の独特な雰囲気をつくりだしているのが、随所に登場する骨董品の数々だ。物語に登場する骨董品は、どれも作者が実際に所有しているものらしく、それだけに確かな存在感があるし、えも言われぬ不思議な雰囲気が、実に魅力的に描写されている。
それら骨董品のオーナーであるおじいちゃんも、キャラが立っていて面白い。髪型が変身後の変奇郎と同じなあたり、おじいちゃんもただならぬ能力を持ち合わせているのだろう。あまり表には出ないけど。
と、これほど楽しい作品なのだが、ひとつ残念な点は、最終回がまったく普通の話であること。もっと最終回らしい何かがほしかった。それこそ、変奇郎が逆に請求書をつきつけられる話、あれを最終回にもってきてもよかったような…。「もう二度とぼくの秘密をあばこうとしてはだめですよ!」で終わっているあたり、いい感じに読者をつきはなしてて、余韻のある最終回になると思うのだけど。
あと、疑問点というか突っ込みどころというか、なんで変奇郎っていつも学ランなんだろう??変身時はもとより、家族旅行や早朝ランニングの時まで、とにかく学ラン。当然夏でもばっちり学ラン。なぜなんだー!(笑) それにしても、学ランで「おいちにい!おいちにい!」とランニングする変奇郎は、かなりかわいい。
うーむ。A作品、初めて読んだけど、予想以上にいい感じですよ。ドーン!
最終更新:2006年09月13日 00:21