第二章1-2強者と弱者
その戦火の中、ここでまた一つの悲劇が起こる――――――。
―――とある町
天気は、晴れのち、積乱雲がそびえ立つ。
戦という言葉が当てはまらないほどののどかな空気が流れ、平和そのものを感じる。
“ノビス=ハイム・ビレッジ”
言い換えれば、ノビスビレッジと呼ばれている村。
この村の西側には蒼くエメラルドブルーと呼ばれている海と接し、また土地にも恵まれており、漁業・農業をしている人が目立つ。
緑の木も色んな種類が植えられている。ジャングルまでとは言わないが、十分自然に囲まれた村である。
先ほども言うようだが、まさに平和の色に染められているようだ―――。
その中―――、
ビュッ!カンカン!!
木で作られた剣が交わす音が鳴り響く。
その音に気付いた農夫2人が畑作業を止め、身体を起こす。
「ハハハッ、またあいつらダ。」
「若けぇっていいもンだ。」
「よかよか。この音いくら聞いても飽きないダ。ハッハッハッ。」「ハハハッ。」
と言うと、笑顔で再び畑作業に戻る。
しばらくすると、太陽の光が生命の力を感じさせるほどさらにきつくなる。
シュッ! バッ!! 「ゼィ!!」
ビュッ!!! カキン!!
「シッ・・・お前、強くなったな。」
互い息を切らし、互いの力量を確認し合う。
「ああ・・・ダアッ!!」 「ぬ!」
と、かけ声ともに力を振り絞って大振りする。
カカッ!! バキッ!!
「何!?」
ついに木剣が折れてしまい、手ぶらの状態になってしまう。
「俺の勝ちだな。」
「何の!!まだまだぁ!!」
捨て身覚悟で突進し、「ぐふっ!」相手を突き倒してしまう。
「ぐぇ!!」
相手を倒すと早々と腕十字固めをし始める。 ピキッ!(関節の音)
「俺の勝ちだ!!」
「おい、ずりーぞ!てめぇ!!」
「はぁ?剣だけが闘いじゃねぇんだ!!わはははは!!」
高笑いしてる青年。
と、その高笑いしてる顔に影が寄ってくる。
「アホぅが!」と言い終わった時点で、どこからか杖の先端が、
ゴンッッ!!
高笑いしている青年の額を強く打ち付ける。
「~~~~~~~~~ッッッッ!!!」
あまりにもの激痛でうずくまるく。
「少しくらいは手加減せんか!!」
この声の主はジェクナと呼び、今となってはごく普通の老体である。
ジェクナの特徴的な部分と言えば、右眼がなく、前戦での称号とも言えよう。
しかし、ジェクナは事実を教えてくれない。だが、刻がくれば―――。
―――事実とは・・・?
「お前らは、子供か!」
「バル・・・、ものすごい痛そうだな。。」
バル―――呼び名はバルだが、本名はバルトフェル。
「なんで、俺だけ叩かれるんだよ!!」
ジェクナに向かって言う。
「こうしなければ、その腕ひしぎは解いてくれなかろう。」
「っち・・・。」ポカッ「いで!」
「お前はジェクナじぃに愛されているんだよ。ハハハッ。」
背後で微笑する青年は、レイン・クラウディア。
バルとレインは、お互いライバルであり良き親友でもあり、血は違うが、切っても切れぬ兄弟のような絆を持っている。
「もう日が暮れる。飯の準備でもしなさい。」
ジェクナは、そう言うと小屋の中へ入る。
「へいよ「はーい」」
カチン
コチン
小屋の中には小さなのっぽの古時計が飾られており、秒針が刻(とき)を刻む。
―――カチン
―――コチン
――――音無き運命の鐘が鳴る。 ポーー・・・ン
ポォーーー・・・ン・・・・・
ソウ、悲劇ノ刻ハ来タリ ポーー・・・ゥン―――
この日の夜により悲劇の村が生まれる。
―――ノビス山の山頂
ノビスビレッジの東側にある山々にただ一つだけ山頂に岩がそびえたつ。
その岩の頂点に立つ黄色く輝く鎧を纏いし者が何やらと祈りを捧げている。
「―――神よ・・・。
これから起こる我らの非行なる行為を許したまへ。
罪は我らが背負い、罰は汝らに与らんを――。ファラーム。」
一人の部下が祈りを捧げている人物に伝言を済ませる。
「テイト様、各軍侵攻準備完了しました。後は命令を。」
すると、偶然なのか必然なのか月の光がその黄色く輝く鎧を照らし始めると、さらに輝きを増すようになる。
「神より許しは出た。」
「ファラーム!!」
そう言うと部下は闇へと紛れ込むように下がっていく。
―――ノビスビレッジ
カンカンカン!!カンカンカン!!!!
何やら警報の鐘が鳴る。
―――その時、一瞬だった。
これからの歴史に刻む一瞬の悲劇が起こったのだ―――。
火矢が、火の塊がノビスの空から降り注ぐ。
次々とワラで出来た屋根に突き刺さり、火が燃え上がる。
ノビスは、殆どの家や小屋はワラで出来ているため、燃えやすいのだ。
一気に火が回り、数分で火の村と化した。
村の人々は慌てて消火活動をしようとする。
―――が、気付けば、時は既に遅し。
村の人々の目の前に騎士団が出現したのだ。
「な、なンだ。オマエ達は・・・。」「え?エ?」「ッ?!」「」「」
村の人々は現在の状況を把握することが出来ず、混乱する。
静かにテイトは言う。
「神の意思に謀反する者は、罰を与えるべし。」
テイトは冷やかな視線で村の人々を見下すと、手を上にあげると斬るように振る。
それに合わせて、突如現れた騎士らが突進し村の人々を斬り始める。
「うぁぁーーー!!」「ギャアァァー!!」
「うゲ!!」 ザシュッ!!ビシュッ!!
「こ、この子だけは―― 」 非情にも騎士は母子を斬る 「ッ!!」
子を庇う母までもが騎士によって子とともに真っ二つに斬られる。
「ヒィーーッ!」「アナタぁぁーー!!」
転倒してしまった子供や老人は無残にも騎士らに踏み潰される。
グチャ
「うぁぁ、と、父さんの、、カタキだァア!!!」子供がそう叫ぶと手に持っているナイフを騎士へとぶつけに行く。
しかし、弱者は皮肉にも弱者なりの運命があるのだ―――。
こうしてノビスビレッジは一夜にで火を海となり、村の人々の血の臭いが漂い、魂のない人の形をしたモノがあちこちに散らばっていた。
中には返り討ちされた騎士もいるが、強者は生き残り、力無き弱者は明日という命はないということを大きく意味している。
―――ノビス西森
森に火の手が回る前に動物やモンスター達が逃げ出していく―――。
その背景には、侵略の炎に喰い尽くされしノビスビレッジがはっきりと見える。
その中―――。
森の中を必死で駆け抜けようとする2人の少年の姿があった。
「ハァハァ・・・ッ!!」
「うぅッ・・。ジェクナじぃちゃん・・・・。」
レインは負傷してしまったバルを抱えながら、ノビスビレッジより西側へと逃げ走る。
ノビスの西側には森があるが、早足でほぼ一刻くらい進むと海が見えるのだ。
しかし、そう簡単には逃げ切ることは出来なかった。
追手が直ぐそこまで来ているのだ。
テイト様により、“一人も残さずに皆殺ししろ。”
追手は3人、鎧を着た重装騎士。
手柄を取るため、人を斬る快感、弱者を追いかける快感を求めて執拗と追いかける。
ハァ・・・ァハァ・・・。
レインとバルの息が刻々とあがってしまう。
やっとの思いで海岸へと着くが、ついには息が切れてしまい、足も動かなくなってしまう。
レインとバルの背後には海岸――小波がうねる。
ザザァ・・・。
「・・・クッ。」「レ、レイン・・・。」
バルとレインは歯をガチガチと震わせ、目には恐怖の涙が溜まっている。
「ハハッ!!少年ぇぇぇん!!お前の命は我らが背負うぞォォォ!!」
と、言うと騎士らは剣を上へとかざす。
「我らがヴォルマルフ陛下のために、死ねぇーい!!」
騎士らの剣は大胆と大振りし、レインとバルを斬ろうとする。
ズチャァァ・・!!
・・・ォォォ。
ついにはその少年までもが斬られてしまう。
「ハハッ!!よし、撤退するぞ。」
ゴォォォォォ・・・・。
すると辺りには、不気味なほどの静けさが漂い始める。
風の音なし。
「む。なんだ不気味なくらいのこの静けさは。」
ただ、肌が風を感じるような気がする。
何度も言うが、風の音はなし―――。
気のせいかと思った騎士は何気なく撤退しようとする。
「うぅ・・・。うぐぅうゥゥ・・。ガフッ。ゴハッ!!」
3人のうち1人の騎士が口から・・・そして、鼻、耳、目からも大量の水を吐きながら溺れたかのように暴れ苦しみ始める。
「ッッ?!ダレス!!」 「ガハッッ!!ヒゥッ!!!」 「ヒッ・・・、誰だ!!」
ダレスはこのまま溺死したかのように苦しみながら絶命してしまう。
騎士2人の恐怖心が高まり始める。
ゴゥォォオオオ――――ッッッ!!!!
「な、なんだッ!!俺の頭に話しかける人はァァァ?!?!」
「え・・?」
【―――・・・・は燃ゆる。】
「ぐぅッ!!あ、熱い。体の中が熱いぃぃいイイイッッ!!!」
騎士の体の中から灼熱の炎が燃え始める。 「――――アツイヨオオオオォォ!!!」
その炎は悪魔の笑みが映っているようだった。
そして、悪魔の炎に囚われし者は数秒で灰と化した。
「お、オイ・・・。な、なんなんだよ!!」
【罪無き尊し命を絶つ者よ。】
「ヒッ!どこだッ!!名を名乗れ!!」
1人生き残った騎士の頭に話しかけるような声。
周りには、灰と化した者、陸上にで溺死した者。
「エ?」
――――他、なし。
(な・・?! 俺が斬った少年がいねぇ!!)
ドドドド―――・・・。
【吾が、ペイン。】
すると、闇の中から騎士の目の前へとじわじわと黒き布を纏いし者が現れる。
「ひッ、ひぃ・・・。うあああああアアッッ!!!」
恐怖により闇雲と剣を振り回すが、それは空振りされてしまうのである。
黒い影の接近が止まらない。
黒き布を纏いし者は、手を騎士の顔へと差し延べる。
ゴオオオオッッッ――――!!!!
【うぬの―――の苦しみを・・・。】
うぁああアアアアアアアアァァァァァァ―――――・・・・・・。
悲鳴が響く中、空に神々しく輝く月はこの夜いちばんの月だった。
ザザァ・・・。
ビュゥゥ―――――。
静かにそっと風が吹き始める――――――――――。
――――強者とは、何か。
強者が生き残るためには“戦わなければならない”のか?
――――弱者とは、何か。
弱者が生き残るためには“逃げる“ことなのか?
もし、このような理屈を運命と言うならば、運命というのは皮肉なものである――――――。
最終更新:2008年12月06日 00:14