一万HIT記念

「ゼシカ、俺とつきあわね?」
 これがここのところ、ククールの『挨拶』だった。
「なあ?」
 暇な証拠だ。
「イヤ」
「…ノーカウントかよ。それはあまりにもつれねーんじゃね?」
「ありえないもの」
「なんで?」
「興味ないし」
 その淀みない応えに、あっちゃーっとククールは大げさな演技で天を見上げる。
「体験してもいないのに、切り捨てるのは如何なモノかと」
「今日はしつこいわね。一体、何が言いたいの」
 ウンザリぎみのゼシカに、ククールはニッと笑う。
「そこでだ。いきなり深い仲になるのは恋愛未経験のゼシカちゃんにはステップが高かろうというわけで、俺考えたわけよ」
「相手があんたという時点で終わってんだけど?」
「試してみよーぜ」
「は?」
「だから、お試しで俺と付き合ってみんの。それで良けりゃあ、正式に恋人になる」

 ハー…、今度はゼシカが溜息をつく番だった。
 何を言い出すかと思えば…。
「……。」
「OK?」
「つまり、今日一日付き合ってあたしがやっぱりイヤだったら、ちゃんとあきらめてくれるってことなのね?」
「いちにちぃ!?」
「何よ、まだなんかあるの?」
「ゼシカちゃんよお。一日で恋愛の良さの何が分かるっての?」
「なにそれ」
「無理だね、短すぎる」
「じゃ、二日?」
「あのですね、ゼシカさん」
「…一週間」
「……。」
「何よ、その目。じゃー、あんたは一体どのくらい付き合えばお試し完了出来る思ってるの?」
 応えてククールはサラッと言った。
「一万回」

「いちまんっ!?」
 何ソレ、一万て一体何週間…いや何ヶ月…もしかしなくても年単位…
 そこまで思わず考えて、不意に違和感に思い当たる。
 ゼシカは上目遣いでククールを睨んだ。
「一万『回』って言わなかった?」
 一万日じゃなくて、一万回。
「ああ、言ったさ」
「何よソレ?」
 彼は笑みを浮かべて、飄々とした仕草で、「もちろん、ナニだ」とワケ分からない。
 しかも、怪訝な顔をしているゼシカを面白そうに見下ろして、クックと笑う。
 ゼシカはそんなことされるとムカッときて、
「腹が立つわね、はっきり言いなさいよ!」
 そう言うから、ククールはちゃんとゼシカにも分かるよう『はっきり』言った。
 それは、Sで始まる卑猥な単語で
「このっ!」
 ゼシカの頬がたちまち赤く上気する。
「何考えてんのよ、この馬鹿! 誰があんたなんかと付き合うもんですか!」







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最終更新:2008年10月22日 22:30
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