普段は煩く口説き文句を並べ立ててくるククールが、今日はやけに無口だ。そういえばトロデ王も今日は静かだわ。
昨夜泊めてもらった川沿いの教会で、何かあったのかしら。
「ねえ、昨夜トロデ王と何かあったの?」
皆とちょっと離れて、一番後ろを歩くククール近づき、そっと聞いてみた。
「何だよ、唐突に」
「だって二人とも、あんまり喋らないから、ケンカでもしたのかと思って」
「ケンカって、ガキじゃあるまいし……。ああ、でもオレのことが気になって仕方ないゼシカの気持ちに気づかず悪かったよ」
どうしてこの人って、こういう言い方しか出来ないんだろう。
「いいわよ、もう。喋らないでいてくれた方が静かでいいわ」
「まあ、そう言うなよ。オレのこと心配してくれる気持ちは嬉しいよ。昨夜何があったか聞きたいんだろ? 大きな声で言えるようなことじゃないから、ちょっと耳貸してくれないか?」
それは聞きたいけど、耳貸せって……。
「そんなこと言って、キスとかしてくるつもりじゃないでしょうね」
「チッ、鋭いな」
今、すごく小さくだけど、舌打ちしなかった!?
「やっぱりそういう魂胆なの!? もういい、もし指一本でも触れてきたら、メラで焼くからね!」
「いや、冗談だって。指一本触れない。どの部分でも触れないから、信じてほしい。約束破ったら、ヒャドも付けていいから」
「ほんとに?」
「騎士の名にかけて誓ってもいいぜ」
一応仲間になったんだし、そこまで言うなら、信じてあげてもいいかなって思う。だけど、これでもし嘘吐いたら、絶対にパーティーから叩き出してやるわ。
そう思って耳を近づけた私がバカだった。
「rやめrくぁwせdrftgyふじこlp;@!」
思わずありえない悲鳴をあげてしまい、皆の注目を浴びてしまった。
「魔物か!?」
「ち、ちがう、ごめん、変な虫が出ただけ!」
悪い虫っていうのは、こういう男のことを言うんだわ! 睨み付けてやっても、ククールは全く悪びれない。
「指一本、触れてないだろ?」
人の耳に息吹きかけるなんて気持ち悪いことしておいて、よくも言えたわね!
もういい! 二度とククールのことなんか、気にするもんですか!
最終更新:2008年10月24日 17:06