6-無題2



「なぁ、ゼシカ。オレたちさ、パーティ組んでからあれだけいろんなコト話したのに
まだ一回も使ってないコトバがあるのに気づいてたか?」
ゼシカはオレの手を取って起き上がるとベッドからおりて、オレと向かい合う。

「ホントに短い言葉だけど、でもきっと…すごくドキドキするって思うんだ」
オレは下を向いて考え込んでしまったゼシカに、ヒントを出してみる。
「あっ」
今のヒントでわかってくれたのか、顔を上げたゼシカはうれしそうに笑った。

「…そっか。ホント、あんなにたくさん話したのに…まだ一度も、言ってなかったんだね」
思い出し笑いするみたいに、くすっと小さく笑って。

「どきどきしてきたかな?」
「うん。してきたみたい」
手を上げかけたゼシカよりも一瞬早く、オレは彼女の左胸に自分の右手をあてる。

「…ホントだ」
深く息を吸い込んだゼシカの胸がふくらむと、オレの右手もそれに合わせて押し戻される。
深く息を吐いたゼシカの胸がへっこむと、オレの右手も向こう側へ吸い込まれる。


「ククールだって」
オレの左胸に自分の右手をあてて、ゼシカが言った。

右手に感じるこの音は、自分の鼓動なのかそれともゼシカのモノなのかはわからなかったが…
そんなコトは、どっちでもいいような気がしていた。
だってオレたちの胸は今、きっと同じ速さで鼓動しているはずだから。
そうだよな?ゼシカ。

オレたちはまっすぐ見つめ合って、大きく深呼吸する。
ずっと言いたくて、ずっと言えなかった、魔法の呪文を唱えるために。

「ゼシカ」  「ククール」
二人で終わらせよう。
そして、二人で始めるんだ。


 『 好 き 』








最終更新:2008年10月24日 17:30
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