無題5

冷たい風。
辺りの草木も、夜の紺色に染められてそよそよと揺れていた。
そんな中、膝を抱えて座る私はとてもちっぽけに感じた。
「こんなところにいたのか。風邪ひくぜ?」
「…うん。 もう少しだけ。
 もう少ししたら、戻るわ。」
そっけない返事。
でも、今はなんだか一人になりたい気分だった…。
「…チェルスのこと、考えてるんだろ」
「…うん。」
やっぱり、とでも言いたげにため息をつくのが聴こえた。
「私の、せいなのかな。」
「はぁ?」
「私が杖に操られないほど強かったらこんなことにはならなかったのかな。
 守って、あげられたのかな。」
「…あのな。」
呆れた声で言う。
「お前が杖に操られないほど強かったらオレ達はこんなに苦労してないっての。」
「……。」
「そう落ち込むなよ。
 結果はあくまで結果だからな。
 あえて悪く解釈する必要はないぜ?
 その暗黒神とかってのをちょっとずつ追い込んでるんだって
 そう思っておきゃあいいさ。 それに… 」
「?」
「ゼシカがそんなだと、 アイツらも調子狂うんだよ。
 二人と二匹とも、お前のこと心配してたぜ。
 だから、早くいつもの元気な顔見せてくれ。」
ほら、とククールの差し出した手に、そっと自分の手を重ねる。
立ち上がると、さっきよりも空が近く感じた。
今まで気付かなかったけど、こんなにキレイな星空だったんだ…。
満天の星空の下、彼に手を引かれて歩き出す。
このまま戻るのはもったいない気がした。

「ね、ちょっと散歩していこうか?」





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最終更新:2008年10月22日 19:19
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