7-無題2

「リブルアーチは今日も恐ろしいほどの快晴。」

兄を助けられなかった私は、また賢者の子孫を見殺しにしてしまった。
私は呪いから数日間かけてようやく立ち直り、まともにご飯が食べられる程度に回復した。
それでも不意に、チェルスの死を悼む気持ちが私を襲う。
助けられたかもしれないのに、と後悔しては前に進めない。
分かっていても気分は沈むんでいく。

まだ目が覚めたばかり、ベッドで寝返りを打ちながら私はそんなことを考えていた。
今日は出発の日、私たちはこの町を出て北へ向かう。


軽いノックをして、仲間が泊る部屋に入る。
「心配かけちゃった、みんなごめんね」 苦笑いを浮かべて、自分でも少ししおらしいと思う。
そんな私を、仲間たちは何事もなかったかのように受け入れてくれた。
エイトとこれからの進路について軽く相談しながら、自分の役目について考える。
レオパルドを追って…
もう兄さんやチェルスのように被害者を出しては…
どうしよう、上の空だな私…

ふと、離れた所にいたククールと目が合った。
「ゼシカ、かなりやつれたんじゃないか?」
「そうね。私、寝たきりだったから…」
身支度と整えながら、鏡に映った自分のこけた頬に気が付いた。
お腹もぺたんこ、お陰で今朝はコルセットをきつく巻かなければならなかった。
「おう。首とか腕とか腹とかよ、上手い具合に胸以外が痩せてるぜ。いいダイエットになっ」 ガッ
とりあえず手近にあった腕輪を投げておいた。


「あの、話続けてもいいかな…」 おずおずとエイトが話しかける。
「いいわ。あの馬鹿はほっといて、続けましょ」 牽制のつもりでひと睨みしておく。
「うん。それでね、防具なんだけど、ちょっと、あのぅ…」
「何?何か買う?また資金繰りが苦しいの?」
「いや、そうじゃなくて、僕からはすごく、いっ言いづらいんだけどさ」
「?」 エイトの様子がおかしい。
夏だとは言え不自然な汗がだらだらと。

「むっつりすけべのエイト君が、これを着ろってよ」
ククールが大きな袋から取り出したのはなんと
「なにこれ…水着ィ?!」
「ごめんゼシカ…。これ、着て…?」

「お断りよ!街中で水着なんて、水着なんて…
 私がかわいそうな娘みたいじゃない!」 
「ごもっともです…」 小さくなるエイト。
「一応守備力はあるんだぜー」
「買うのも勇気が要ったでゲスよー」 外野からのヤジ。
「ククールとヤンガスは黙ってて!
 エイトもエイトよ!なんでこんなん買ったのよ!どうせ王様と、ククールにやりこめられたのね!」
「そっ、そういう訳でも、ないつもりだけど…」 図星のようだ。
「とにかく、私絶対着ないわよ!!」 フーッ!と威嚇する。
「いや、だって、踊り子の服とかも…着てたし…」 弱弱しい反論。
「あれはまだスカートがあったじゃない!!」
「これだってあるでガスよ?」
「ないのと同じよ!!」


あーテンションが上がってきた。
もしかしたら髪が逆立ってるかもしれない。
背中を伝う汗が気持ち悪い。嫌だな暑いわ…。

「そう…芸術、ゲイジュツだ!
 ゼシカの彫刻のような美しい身体を見せびらかそうぜ!」
「別に興味ないわ!」 思いつきで言ってるでしょアンタ!
「俺は興味があるんだよ!」
「だったら鏡でも見てなさいよ!!」
「へぇ、嬉しいな。俺の肉体が芸術だなんて、言うじゃないか」
「なっななな」 何を言ってんのよ!
「意外とばっちり見てるんだな、そういうとこ」 髪をかき上げる仕草がなんかむかつく。
「…ククールは自意識過剰すぎるのよ!」
「俺はただ、自分の見た目に自身を持ってるだけだぜ。
 ゼシカも内心はそういうとこあるだろ?」
「なっ、無いわ!」 
「…もしかしてダイエット成功したけど、着こなせるかどうか不安か?」 カチン。
「あーもーわかった!!着るわよ!着ればいいんでしょ!!」
ククールの手から水着をひったくり、ドアを乱暴に閉める。

 ゼシカのいない室内からは歓声が上がっていたことは言うまでもない。







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最終更新:2008年11月03日 00:34
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