無題1

「また最近ククールの悪い癖が再発したでげす。何かあったんでげすかなあ。」

ヤンガスのその言葉で、あたし、気がついたんだ。
原因はあたしの、この言葉
「もうあたしに構わないでよ!」
あいつは、そう、と返しただけだった。
それからというものの、酒場に入り浸るは、ナンパはするは、
挙句の果てに二日酔いで次の日まともに戦えない。
(やっぱり軽率な男だったのね。)こう思った。
だけど今考えてみると、あいつ、報われなかったんだね。
小さいころに両親は死に、たった一人のお兄さんからも相手にされない。
さびしかったんだ。愛に飢えてたんだね。
あたしは正反対。
優しくて頼りになる兄はいたし(もういないけど)、けんかばかりしてた母からもそれなりの愛情を注がれてたと思う。
酒場に行く前のあいつの目、見たことあるよ。
さもこれから楽しいとこに行きますよ~って感じの目。
だけどその奥底に、どこか満たされない思いがあったんだね。
そうおもうと、きゅうにあいつが可哀そうになってきた。
だからあたし、謝ることにしたんだ。
飲めないお酒も、頑張って付き合うようにしよう。ポーカーの相手をしよう。
それであいつが、満足できるなら、なんでもしよう。

夜遅くに、酒場から帰るあいつを待ち構えた。
びっくりしたことに、あいつ酒を飲んでいなかったんだ。
二日酔いの振りまでして、誰かに構ってほしかったんだね。
「ククール、ちょっといいかな?」
するとあいつは、すなおにあたしについてきて外に出てくれたんだ。
「ごめんね。」
「なにが」
「こないだのこと。後から考えたら・・・」
「謝ったって、ゼシカにはなにもできないよ。俺が悪かったんだ。」
「できるわ!例えば・・・」

こんなこと。

二人は、唇を重ねた。

満月の夜の下だった。





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最終更新:2008年10月22日 19:18
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