それは、酒場での夕食どきのこと。
「…あ。………………コレきらい…」
お皿をフォークでつついていたゼシカが、急激に不機嫌になって呟いた。
隣に座っているククールがのぞきこみ、
「カリフラワー?何お前、そんなの嫌いなの」
「おいしくないんだもん」
「うまいじゃん。てかゼシカ、ブロッコリーは喰えたよな?ならこれも喰えるだろ」
「ぜんっぜんちがうわよ!とにかくヤダ食べられない。ククール食べて」
「しゃーねぇなぁ、子供かよ」
そんなことを言いながら「あ」と口を開いたククールの口に、ゼシカは当たり前のように
カリフラワーを突き刺したフォークを突っ込んだりする。
目の前でその光景を見(せつけられ)ているエイトとヤンガスは、脱力したようにハハハ…と
乾いた笑いをこぼし視線をかわすのだが、同席者の微妙な雰囲気にはまったく気付かない2人。
「………ゼシカ」
しばらくして、ふいにククールが悪ふざけを思いついた時の声でゼシカを呼んだ。
「なに……ンむ!」
振り向きざまのゼシカの開いた口に、今度はククールが素早くフォークを突っ込んだ。
テーブルに肩肘をついて楽しそうにニヤニヤしながら、思い切り眉をしかめるゼシカを見ている。
困惑したまま口に入れられたものをモグモグと咀嚼して飲み込んだゼシカは、
やっと大きな声でククールにくってかかった。
「ちょっと!!何するのよいきなり!!」
「オレもきらいなものおすそわけ~~」
「…かっこつけてるくせにニンジンが食べられないの?」
ゼシカがじっとりとした目で、飄々としているククールをにらむ。
「だっておいしくないもん」
「まったく、子供みたいなんだから…」
わざとらしくため息をはきつつ、もう一度差し出されたニンジン付きフォークをパクリとくわえるゼシカ。
遠い目をしてナカイイネーと笑っていたエイトが、いっそ開き直って言ってみる。
「………ゼシカがあーんしてあげたら、ククール食べるんじゃない?」
その瞬間の、ゼシカの反応ときたら。
「だ…っ、誰がこんなバカにそんなことっっ!!!!やめてよねエイトッッ!!!!」
派手な音立てて椅子から立ち上がって、たちまち顔を赤くしている。
「おっそれいい案だなエイト!オレ、ゼシカちゃんが食べさせてくれるんならなんだって食べちゃうぜ~♪」
ククールまでニヤけヅラ下げてそんなアホな発言をするものだから、今度こそエイトもヤンガスも、
早くこの場をお開きにするため、ひたすら食べることに専念するしかなかった。
再び痴話ゲンカと言う名のじゃれあいをはじめる2人。
関わるとなんとなく損した気になるから、もう放っておこう。
最終更新:2008年10月27日 04:27