「ククール!」
「お、ゼシカ…」
「なにやってるんだよ」
「見たら分かるだろ。着替えてんの。見んなよ」
「見てないっての。…めかしこんじゃって。どっか出かけるの?」
「ああ、まぁな」
「私、今日暇なんだけど」
「ああ、知ってるよ」
「……」
「よし!どうだ?この服。イケてるか?」
「女だ。女と出かけるんだ」
「そうだよ。わりいかよ…」
「デート…なの?」
「うーん。まぁ。俺としてはそのつもりなんだけど…な」
「……」
「そんなことより、どうかな?このカッコ」
「いいんじゃないの」
「ちょんと見てくれよ」
「…その上着。中のシャツの色と合ってないよ」
「そうかな…」
「そうだよ。あの、前に着てたビロードのマントみたいなやつの方がいいと思う…」
「あれ薄いから、ちょっと寒いんだよな」
「それくらい我慢しなさいよ」
「そうだな、そうするよ。せっかくだから」
「…楽しそうだね」
「そうか?」
「好きなの…?」
「はぁ?」
「今日のデートの相手のことだよ。あんたその子のこと…好きなの?」
「なに言ってんだ?いきなり…」
「どうなのよ」
「まぁ、な」
「…そうなんだ。付き合ってんの?」
「ちゃんと付き合っては…いない」
「そうなんだ」
「うん。…よし。これでいいか。このビロードのマントで」
「うーん…ビロードのマントより、騎士団の服のほうがよくない?」
「そうか?」
「うん、絶対そう。あんた持ってたよね、騎士団の服」
「ああ、持ってるけど…。着替えるからこっち見んなよ」
「見るわけないでしょ。でも、あのさ…相手の子はどうなのよ。その子はあんたのこと、どう思ってるの?」
「…どうかな。そんなこと分からない」
「分からないのにデートすんの?」
「分からないからデートするんだよ」
「ふーん。そんなもんなのかな…」
「そんなもんだよ」
「でも…なんかおかしくない?」
「なにがだよ?」
「相手の子だよ。好きでもないのにデートするなんてさ」
「そっか?」
「大丈夫?騙されてるんじゃない?」
「……」
「だってさ、おかしくない?どんな子なのよ。なんか、カルい女みたい」
「ゼシカ…そんなこと言うなよ」
「……ゴメン」
「もしかしたら…もしかしたら、相手の子も俺のこと好きかもしれないじゃないか」
「……」
「それに…」
「それに…?」
「…ホントはデートの約束なんてしていないんだ」
「えっ!?」
「ホントはこれから誘うんだよ。来てくれるか分からないけど…」
「…そうなんだ」
「うん…」
「ホントに…本当に好きなんだ。その子のこと」
「…あぁ。好きだよ」
「……」
「ずっと前から好きだった」
「そう…」
「久しぶりだなこの騎士団の服。…これでどうだ。完璧か?」
「うん。いいと思うよ」
「へぇ、ゼシカはこういうのが好みなんだ。…これなら、来てくれると思うか?彼女」
「大丈夫。絶対来てくれるよ。あんたなら…大丈夫」
「へへっ。サンキュ」
「…うまくいくといいね」
「ホントか?本当にそう思ってる?」
「思ってる…。思ってるよ」
「じゃあさ。着替えて来いよ」
「えっ?…なに?」
「……」
「なんでよ…」
「ゼシカ、俺と…デートしてくれよ」
最終更新:2008年10月22日 19:17