無題2

宿屋。
夜まで休むの時間、ゼシカとククールの二人だけがそこに居た。
二人は机を挟んで呪文書に目を通していた。
おもむろにゼシカが口を開く。
「ククールってさ・・・」
「ん~?」
間の抜けたような声でククールは返事を返す。
ゼシカは次の言葉を言わないまま、じっと雑誌を持ったククールの手を見つめる。
その視線に気付いたククールは、ぱたんと呪文書を閉じ、身を乗り出した。
「何?」
「・・・手、おっきいよね」
「手?」
「うん。だって、ほら」
ゼシカはククールの手をとると、自分の手と合わせた。
「こんなに違うよ?」
ゼシカの指はククールの指の第一関節くらいまでしかなかった。
確かに、ククールの手は大きい。
大きいというか、前まで弓術をしていたせいもあって、指が長いのだ。
手だけ見るとよくサルの手とからかわれ、昔は悩みの種になったものだ・・・

「あたし、手が大きい人、好きなんだよね」
「・・・ふ~ん」

「あたしの手ってさ。何か不揃いなんだよね。指だけこんなに細くってさ・・・」
「いいじゃねーか。、ゼシカの手、好きだぜ?」
ゼシカがはっとしたように顔を上げる。
そこには頬杖をつきながら柔らかい顔でゼシカを見つめるククールが待っていた。
「そ、そんな・・・冗談やめてよ」
「冗談なんかじゃ、ないぜ?」

そっとゼシカの手をとる。
触れた瞬間、少しびくついた。
ゆっくりと手を撫でながら、指と指の間にそっと指を差し込んだ。
「あ・・・」
ゼシカの呟きも無視して、包み込むようにぎゅっと握る。
少し戸惑いながらも、ゼシカの指が握り返す。

「ゼシカの手、冷たくて気持ちいいぜ・・」
「ククールの手、あったかいね・・」
お互いの手の感触に、しばし意識を任せる。
まるで手から二人の心が伝わってくるようだった。





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最終更新:2008年10月22日 19:19
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