※むかいあわせ※




                *
いつものようにククールにそっとベッドに横たえられ、キスをされ、身体を撫でられているうちに、
ふっと緊張の糸が解けた瞬間、ククール自身がゆっくりと押し入ってくる。
ここまでくると、もう恥ずかしいという気持ちは頭の中から消え去る。
ククールの優しい愛撫と最近ようやく慣れてきた身体は、もう痛みではなく、
息が詰まるような苦しさと同時に、息が詰まるような快感の波を与えてくれるから、
あとは はしたない自分を取り繕えもせず、それに没頭するしかできることはなくなるのだ。
熱くて火傷しそうなククールを体の奥に感じながら、次にくるであろう快感の波にそなえようと
荒くなる息をなんとか抑え込み口唇をかみしめ、キツく瞳を閉じる。名を呼ばれておそるおそる
目を開くと、ククールの優しい笑みが間近にあって、「動くよ」と言ってくれる…

…でも、今日は違った。
ククールがその状態で耳元に囁いたのは。
「――――起こすぞ」
「…え、
 …………キャ、あ、――んぅぅ…ッッッ!!!!!!!」
その言葉を理解しないうちに、素早く背中に腕を回され急に身体を起こされた。
彼自らも体を起し、私がククールに乗り、お互いが正面から座る態勢になる。
「…んッ、あ、あああッッ!!」
まだ全てではなく中途半端に入ったままだったククールが、私が上になったことによって
自重でいきなり最奥までズルズルと入り込んでくる。
その、擦られる快感…
「よいしょっと…。……大丈夫か?」
ククールの声は心配より楽しそうに聞こえた。でも、そんなことを気にするほど余裕がない。
いきなり深くまで繋がった衝撃で意識が飛びそうだった私は、その後私の様子を窺って
ククールが動かないままでいてくれたから、少しずつ荒い息を押さえていくことができた。
しばらくするとようやく自覚されてくる、今の自分がとらされている態勢。
目の前のククールがニヤリと意地悪く笑う。
「どーだ?これが対面座位っていうんだぜ」
「…ッ、し、しらな…。…いきなり、ひど…」
「イっちゃった?」
私は顔から火が出そうになって、でも、否定しなければと、顔を何度も横に振った。
「よく我慢できました♪」
「バ―――  ッッ!!」
バカと怒鳴ろうとしたら、いきなりククールが少し背を丸めて
私の胸の先端をいきなり舐めたから、怒声は甲高い悲鳴にしかならなかった。
「く、ククール……ッ!あ、ああ…っ!!!!」
「……ゼシカやらしーな」
「やめ、て…。…ん、あ、あ」
「感じすぎだろ…」



ビクッとして咄嗟に背をしならせると、よけいにククールの顔を胸にひきよせる形になってしまう。
片手で容赦なく揉まれ、硬くなっている所を強く摘まんだりひっかいたりされて、
一方は巧みな舌に舐められ、軽く、キツく、噛まれて…そんなの気持ちよくないわけがない。
いやらしくなんかない。しょうがないじゃない。私は声に出さず必死に言い訳する。
少し落ち着きつつあった下半身が、じりっ…と再び熱を持ち始めた。
気持ちいいけれど。
繋がっているだけ。
イヤだ…どうしよう。
このままじゃ物足りないなんて、言えるわけがない…!
ククールは、決定的ではないゆるやかな快楽をもたらす胸への攻めをやめようとしない。
私は焦らされる。
発散できない何かがククールを受け入れている場所に溜まっていく。
時折ククールが目線だけを上げて、私の表情をうかがう。
私はこの焦燥感を伝えたくて、目を眇めて必死で訴える。
早く、早く、終わらせて。
そこじゃないところを攻めて、と。
でもククールは私の無言の訴えを何度も無視し、今までにないくらいしつこく私の胸に執着した。

「は…ぁ、ん、ん、…くく…もう、ヤ…」
「いや?」
「イヤぁ…」
「こんなに濡れてんのに?」
「ッ!!」
突然手を取られ、まさに私たちが繋がっているその場所を撫でさせられて全身にザァッと鳥肌が立った。
咄嗟に払いのけるけれど、ククールは薄く笑いながらかまわず自分でそこに触れてくる。
いちばん私が乱れる一点と、いっぱいに開いてククールを受け入れている入口を。
「こん中…すげぇことになってんだけど」
「や…あっ…ああ…」
「ほら、蕩けそうになってる」
「いや…あ…だめ…そこ、弄っちゃ…」
「ん?何、もっと弄って欲しい?」
「あああっ…はあ…んうッ…あっ…やめてっおねがいさわっちゃダメ…!!」
「どうする?ココだけでいく?」
口唇を噛みしめて必死で頭を横に振ったら、涙が散った。
「じゃあ…どうしてほしいか言ってごらん」
耳たぶを舐めながら直接吹き込まれる悪魔のような優しい声。
頭の中はもうめちゃくちゃで、まともな思考なんて働かないのに、どうしてほしいのか、なんて。
―――それだけは、ハッキリとわかる。


その場所をなんて称すればいいのかわからなくて、未だ私のそこを弄んでいるククールの長い指に、
私は自分の震える指を這わせた。
「ここ、がいいの。ここ、が、イきたいの…」
かすかに残る理性は、自分がいま何を言っているのかを理解していて、
死ぬほどの羞恥を私に感じさせる。言わされているんだ、と言い訳すればするほど、
私のナカはどうしてなのか苦しいくらいに激しく反応した。
「……やらしーの」
ククールがクスリと笑う。泣きそうに顔を歪ませて、だって、と心の中でまた言い訳する。
「よく言えました♪」
両腕でぎゅうっと抱きしめられ、私も彼の背中に思い切り腕を回した。
途端に角度が少し変わって、快感が走り抜ける。
これ以上ないくらい密着する身体。気持ちいい。
下から揺さぶられて突き上げられて、感じたことのないような刺激に自我はすぐ吹き飛んだ。
ゼシカの好きなように動いてみて、と言われたのは覚えてるけど、自分がどうしたのかは覚えてない。
でも…今までした中で、もしかしたら一番気持ちよかったかもしれない。
それは、身体の快感だけじゃなくて、心も同時に達してしまいそうな幸福という意味で。

正面から抱きしめられる幸福。
正面から抱きしめることのできる幸福。
ククールの自分を見つめる目。切なくて見つめ返すと、必ずキスしてくれた。
そのまま終わりのない口付けに没頭して、達する瞬間まで舌をからませあって。
心が満たされる気がした。今まででいちばん。
ククールが、「ゼシカが一番好きな体位かも」と言ったのがわかる。
私は昔から好きだったの、この態勢が。
そう。
これは、…抱っこだ。
本当は甘えたの私が、思う存分甘えられる抱き合い方。
「愛されている」とこれほど実感できる態勢は、そうないと思う。

どうしてククールは私の何もかもがわかってしまうんだろう?
こんな風に愛されて、心も体も満たされて、気持ちよくないはずがない。

―――――そして今夜も 私の身体をイヤらしいモノに変えていく。







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最終更新:2010年05月10日 00:58
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