※こんなところで※






人気のない路地裏。店と店の間の狭い狭い空間。通りかかっただけでは、
人がなんとか通れるくらいの隙間がそこにあることすら気付かないだろう。
しかもかなり奥まで入り込むと、汚れた板や壊れた木材などが歩道をゆく者の視線を遮り、
その先は完全に死角のスペースとなる。
ククールはいつからこんな場所があることを知っていたのだろう?それとも偶然?
ただの買い出しのはずだった。ククールいわくデートがてらの。
気付いた時にはゼシカはそこにひきずりこまれ、逃げ場を失っていた。
お互いの身体をかなり密着させないといけないほどの狭いスペース。汚れた壁に押し付けられ、
なにごとかと見上げたククールの目には、すでに欲情が燃え上がっていた。

いきなりのキスがうっとりするほど優しかったから、それを許可してしまったのがそもそものミス。
調子にのった…のか、それともそれこそ計画通りだったのか。当然ながらククールの要求は
それだけでは納まらず、抵抗する間もあればこそ、たちまち彼の手はゼシカの身体中を撫で回しはじめ、
いつの間にやらしんぴのビスチェは中途半端に乱され、脱がされていた。
強引に剥き出しにされた両の乳房が布からはみ出し、超ミニスカートから伸びる眩しいニーハイの足元で、
引きずり落とされた下着がくしゃくしゃになっている。
ゼシカは始終抵抗した。
ククールの指先が背中のラインを縦にくすぐる。胸の先端を唾液でベトベトになるほどなぶり噛みついて、
残った指先はあってなきような短いスカートの裾から太ももを辿り、否応なしに濡れ始めた
割れ目をからかうようになぞっている。
噛みしめた唇の隙間から思わず恥ずかしい声が出ても、それでも理性だけはなんとか保った。
だってこんなところで。
数メートル先で雑踏を行き交う大勢の人たちの喧騒が聞こえるのに。
こんなところでスルなんて…!

「ぁふ…っ、は…っ、あ、アッ、ダメ…バカ…!」
「…誰もこんなとこでオレ達がセックスしてるなんて思わねぇって。
こんなすぐ誰かに見られちまうような 普通じゃないとこでさ…」
ククールは知っている。ゼシカが羞恥に悦ぶことを。だからわざとそんな言い方をする。
「仮に見つかったって…我慢できずにこんな場所でヤっちゃうほど、ゼシカは淫乱なんだって思われるだけだ」
「ち…っ、がう…っ」
ゼシカの腕が弱弱しく、自分の股間にある彼の手を押しのけようとする。
その瞬間ククールは一番長い指を、収縮を繰り返すそこにいきなり突き入れた。
指は卑猥な音すら響かせ、やわらかいその内へなんの抗いもなくスムーズに飲み込まれていく。
「――ッッッ!!!アッ、…ハ…ッ…いや…!」
「すんごい濡れてんな…」
「もう…ダメ…これいじょ…っ、あっ!そこイヤ!んん…っ」
「ココ触っちゃイヤ…?ゼシカがいちばん可愛く喘ぐとこなのに」
ゼシカは全身を震わせながら、なんとか快感をやり過ごそうと口唇を噛んで耐えた。
いちばん弱い一点を親指で刺激されて、頭の中が吹っ飛びそうになる。もう理性は風前のともしび。




本当は信じられないほど興奮しているのを自覚している。真昼間の街中。行き交う大勢の人との間に
ろくな隔たりもないこんな場所で、胸もアソコもさらけ出して、いやらしいことをして、興奮している。
もう身も世もなく声を上げて、啼いて、泣いて、没頭してしまいたかった。そんなことを
考えてしまうほど確かに自分は淫乱で、どんなに嫌がってみせたってククールにはお見通しなのだ…

「あっ、あっ、あ…っ、もうダメ…やめ、てよ…っ」
ゼシカは恥ずかしさのあまり両手で顔を覆って、泣きじゃくりながら懇願した。
3本に増えた指を容易に銜えこんでビクビクと腰を跳ねさせて悶えているくせに、
まだ言うか、とさすがのククールも不満気に眉をひそませる。
「めちゃくちゃ気持ちいいんだろ?なに意地になってんだよ、ホントにやめていいのか?」
「やめ…、だっ…、……だって…こんな…」
「挿れてほしくないのかよ、コレ…」
すっかり開ききって蜜をしたたらせるそこに、ズボンの中で熱く張りつめている塊を
グリグリと押し付け、ゼシカの入口を何度もくつろげる。切望しているその存在を誇張されて、
ゼシカはよだれを垂らすように自分の中からドクリと何かが溢れ出したのを感じた。

欲しい。助けて…死んじゃいそう…

「…ッ、もって…な」
「え?」
「もって…ない、でしょ…っ、つけなきゃ…ダ…」

そう。恋に溺れて、セックスに溺れて、現実を見失うようなことだけはやめようと約束した。
大切なかたき討ちの旅。世界を救う旅。世界は2人だけのものじゃない。大切な仲間との旅。
お互い気持ちを隠すことはもうできなかった。しかし、最低限の節度を、ケジメを、と。
ゼシカは訴えた。本当はしたい。それはもう否定しない。でも、それだけは譲れない。流されちゃダメ…

―――ふいにククールがニヤリと笑ったので、ゼシカはぎょっとした。
「…持ってる」
ズボンのポケットから出されてきた薄いビニールに、うそ、と口唇だけで呟く。
ククールの勝ち誇った笑みに呆然とする…
「つけるならいいんだよな?お前そう言ったよな?」
「い…っ、いつから…、アンタ…ッ、なんで…!?」
「さぁなぁ。…それじゃ、お許しも出たことだし…」
いつのまにか際どい部分に擦りつけられている生身のソレを握らされ、ゼシカは思わず悲鳴をあげた。
「ゼシカがつけてよ。だってゼシカのお願いだもんな?」
「い、イヤよッッ!!!!!!バカッッ!!!!!!!」
「それじゃあ挿れてやれねぇなぁ」
「イヤよ…そんなの…バカ…ッ。……いじわる…」
「“イヤ”って、どっちの意味で?」
顔を真っ赤にさせ涙を浮かべてうつむくゼシカがあまりにも可愛くて、
もっといじめたくなるのをククールはなんとか自重する。口で封を切り中身を取り出すと、
震える小さな手に自分の手を重ね、隆起しているそこに触れさせた。
彼女の指を操るようにして、「必需品」のアイテムを2人で一緒に装着する。
まさに「セックスをするための準備」を自らの手で彼のそこに施す、という倒錯的な行為に
ゼシカの息はますますあがった。私はなんてはしたないことを、という自嘲と羞恥の入り混じった困惑と
手にした熱い存在を欲してやまない欲望がぐちゃぐちゃになって、思考を侵していく。
そして、羞恥に身悶えながらもゼシカのつたない指先は自分の怒張にからみついたままで、
その幼さと卑猥さのアンバランスに、ククールの最後の理性も気前よくどこかに吹っ飛んで行った。




「…ッ…ゼシカ…叫ぶなよ」
ククールの余裕のない声が耳元でして、ゼシカはハッと我に返った。
―――そういえば。
そういえば、こんな狭い場所でどうやってするの?
寝転がれるスペースなんかもちろんない。後ろから…も、自分が下半身を付き出せるほどの幅がない。
密着したこの態勢から動きようがない。戸惑いながらククールを見上げた瞬間
彼の手が片方の太ももを胸に突くほど高く持ち上げて、ゼシカは目を見張った。
「えっ!?…ッ!!い、いや!ウソ…!!」
「なにが…」
「こ、こんなままで…っ!?む、無理よ…立ってなんて…」
ゼシカの訴えにククールはそういやはじめてか、と呟き、しかしかまわず腰を押し進めた。
先端が入口をくすぐり、わざと敏感な突起を弄ぶ。
「あぅ…っ!ん、んん…ッッ…やだ、イヤだやめて…」
「大丈夫だから。絶対支えててやるからオレにしがみついてろ」
「イヤ…ッ!!こわい…ッッ!!」
「怖くない怖くない」
ズル、と自分の中に分け入ってくるモノを眼下で驚愕の思いで見つめながら、ゼシカは必死で首を振った。
「…ホラ…ちゃんと入るだろ?」
「あ…あ…あ…ア…っ!!は…っ」
ゼシカは目を見開いたままククールの背にしがみつき、少しずつ、徐々に全長が埋め込まれていくのを
嫌というほど実感する。真横から侵入してくるよく知っているはずのソレが
いつもとは違う角度でゼシカの性感帯を擦りあげ、目眩がするほどの悦楽をもたらす。
ここまでなんとか(若干とはいえ)抑えてきた嬌声が、もうこらえきれないことを悟る。
雑踏から奥まった場所。か細い喘ぎなら届かなくても、悲鳴のように叫べば側を通りかかった
人の耳にはきっと聞こえてしまう…
「く、クク…!!動か…な、で…っ……ッ、こえ、が…」
「……バカ。動くに決まってんだろ…ッ」
腰ごと抱えあげた足を揺さぶり、ククールもゼシカも強烈な快楽に苦痛のような表情を浮かべた。
ゼシカは口唇を噛みしめ、出かかった大声を無理やり飲み込む。
目尻に涙をためて堪えているその表情はなんとも扇情的で嗜虐心を煽るが、ゼシカのそんな顔を
誰かに見られて嫌なのは間違いなく、声を抑えるなとうかつに言うわけにもいかない。
ククールは汗のにじんだ額をゼシカの額にコツンと合わせ、優しく微笑んだ。
「…ゼシカ。叫びそうだったらオレの肩噛んで。遠慮しなくていいから」
躊躇したが逆らえる術もなく、ゼシカは荒い息のまま喘ぎなのか返事なのかわからない声を漏らした。
とろんと とろけた瞳で、上着を脱いだ、ククールの肩にシャツごとカプリと噛みつく。
湿った吐息が肩や首筋に注がれ、ゾクリとククールは背筋を震わせた。
唐突に腰を揺すぶりあげ、最奥まで自身を突き入れる。
「―――ッッ!!!!ア、アァ…ッンンン…!!!!」
途端にゼシカは苦しそうなうめき声をあげ、ククールの肩に思い切り歯を立てた。そして爪を。
その痛みが、いっそうククールの動きを激しくする。ゼシカの止まらない涙がククールの肩を濡らす。
ククールも、ゼシカの肩に噛みついた。快楽の声を抑えるためではなく、所有の証として。

昼日なかの街中の路地で、カリスマとおいろけというエロスのスキルを極めた男女が
セックスに酔いしれていることに気づいた者がいたのかどうかは、定かではない。





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最終更新:2010年05月10日 02:52
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