2-無題3

その戦いでエイトたちは窮地に立たされていた。
相手の魔物たちは強敵ではなかったが、休みなく戦い続けた無理が祟って、全員が体力も魔力もほとんど使い果たしていた。
敵の放った毒がククールを襲い、また別の魔物の一閃が、ゼシカを限界まで痛めつける。
ククールは強烈な毒に耐えながら、残された魔力の全てでゼシカを回復した。
エイトたちは残された力を振り絞り、敵への攻撃をする。
エイトが斬り、ヤンガスが打ち、ゼシカがとどめをさす。魔物たちは塵となって消えて行った。
それを見届けると、激しい痛みと嘔吐感を耐えていたククールは前のめりに倒れた。
「ククール!!」
叫びながら、ゼシカは倒れ込むククールに駆け寄った。
毒に冒されたその顔は色を失って、額には汗が滲み出ている。
「エイト!どくけし草を…!」
ゼシカの訴えに、エイトは沈痛な面持ちで首を横に振る。
どくけし草はおろか、薬草も、魔力を回復する道具もない、とその顔は物語っていた。魔力を使い果たしたエイトがルーラを唱える事も出来ない。
状況は絶望的だった。そうしている間にも、毒はククールの身体を蝕んでいく。
ゼシカがククールに取りすがる。
「イヤ!イヤよ…。死なないで!ククールゥ…ッ」
大粒の涙がゼシカの頬を伝った。
「ゼシカ、オレの為に泣いてくれるのか」
ククールは苦痛に歪む顔をゼシカに見せまいと笑ってみせた。
その手がゼシカの頬を優しく包む。ゼシカはその手を握り返した。
「ククールを失いたくないの…。ずっと言えなかったけど…好きなの…。」
「ゼシカ…。オレもだよ。」
ククールは嬉しそうに笑った。不思議と穏やかな気持ちだった。

ヤンガスはどうする事も出来ずにククールとゼシカを見守っていた。自分の腑甲斐なさに歯噛みする。
とても見ていられないと後ろを向くと、エイトが何やらゴソゴソと、ズボンのポケットを探っていた。
「ウウ…、兄貴。こんな時に何をしているんでげすか?」
エイトはズボンのポケットからしなびた草を取り出した。
「あ、どくけし草…。」
エイトとヤンガスは顔を見合わせた。
ゼシカとククールを見ると、二人は今や熱烈に口付けを交わしていた。
「ゼシカの姉ちゃん、怒るでげしょうね…。」
エイトとヤンガスの脳裏にゼシカのスーパーハイテンション双竜打ちが鮮やかに浮かぶ。二人の背筋に冷たい汗が伝った。
そして---ふたりはそっと『どくけし草』を処分した。









最終更新:2008年10月23日 11:50
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