全てのオーブが揃ったのはオーブを探しはじめて2日目の昼を過ぎた頃だった。一行は昼食を済ませ後片付けをしていると、エイトがみんなを集めてこう言った。
「明日はいよいよラプソーンとの決戦になると思う。だから明日まで各自、自由行動にしようと思うんだけど。どうかな?」
「いいでがすね」
「・・・なんかそれって死ぬ前にやり残した事やって来い、って言われてるみたい」
ゼシカは苦笑いを浮かべている。
「あ、そーいう意味で言ったわけじゃ」
慌ててエイトがフォローすると
「あはは、わかってる。冗談。私死ぬつもりなんてないもの」
あまりのゼシカらしい発言にみんなでクスクスと笑い合った。
ククールはゼシカが死んだらオレも後を追ってやるよなどと冗談を言ってゼシカを怒らせていた。
「では、そういう事でよろしいですね陛下」
「うむ。ワシはミーティアとふしぎな泉に行っておるぞ」
「では、わたしもお供します」
どうやら、トロデ、ミーティア、エイトは泉でゆっくりするらしい。
他のメンバーはどうするのだろう。聞かなくても大体わかるが一応ゼシカはヤンガスに聞いてみた。
「アッシは兄貴と一緒に行くでがすよ」
やっぱり。
自分はどうしようかとゼシカが思案に暮れているとククールが話し掛けてきた。「ゼシカちゃん、オレには聞いてくんないの?」
「・・・」
ククールの顔をチラリと見やり、どうせカジノか酒場だろうと思いながら一応聞いてみる。
「・・・で、アンタはどーするの?」
然して期待もしていなかったせいか、とても意外な答えが返ってきた。ククールはゼシカの質問に満足気に笑うと彼女の手を取りその指先にキスをした。
「ゼシカ姫のお供をしたいと存じます」
リーザス村の東、リーザス像の塔に2人は来ていた。ゼシカの兄サーベルトの墓参りの為だ。
「兄さん、明日で全ておわるからね。そしたら、また此処に帰って来るから・・・」
途中で摘んだ小さな花を墓に供え手を合わせる。
後ろでは「お兄さんにオレの事紹介してくれよ」と言っているククールを無視してゼシカは立ち上がる。
「ね、もうひとつ付き合ってよ」
そう言うとククールを塔の中へと促した。
リーザス像までの長い道、ゼシカは幼い頃の思い出を語りながら歩いた。
サーベルトと一緒に塔まで来て遊んだこと、その事で母に叱られたこと。年に一度の聖なる日の祭りのこと。
リーザス像の元に着いた頃にはすっかり日も西に傾いていた。
ククールがぽつりと呟いた。
「へぇ・・・綺麗だな」
「でしょ?私も此処からの眺めが好き」
ゼシカは塔の端に腰掛けククールに笑い掛けた。夕日を受けたゼシカの髪がいつもよりも赤く輝いて見えた。
ククールもゼシカの隣に座る。風や木々の揺れる音、鳥の囀り、世界は平和そのものに思えた。
暫らくの沈黙が続き、ゼシカはククールの肩に頭を預け目をつぶった。
「・・・寝てるのか?」
「うぅん・・・。もう少しこうさせて・・・」
その後はただ何をしゃべるでもなく2人は暮れてゆく空を眺めていた。
最終更新:2008年10月23日 11:52