独占欲

旅を続けるエイト達一行。まだ日も高くそれほど疲れてはいなかったが、目的の町に着いたので休憩をとる事にした。
宿屋を探して歩いていると町の人々がこちらを見ている。特に男達の視線が集まる。
「・・・?なんだろ。旅人が珍しいのかな?」
「なんでげすかねぇ?」
エイトとヤンガスは不思議そうに辺りを見ていた。
そんな二人の会話も気にせずゼシカは始めて来た町を見物していると、ある事に気が付いた。
隣を歩くククールの顔が怖い。しかも妙に自分にピッタリくっついている。
「?ククール、どうかしたの?怖い顔しちゃって」
「・・・・・・」
顔を覗き込むと更に怖い顔になって睨まれてしまった。
機嫌悪、と思い少し離れて歩くがククールは離れようとしない。
「なによ?」
「いいからオレから離れんなよ」
は?意味がわからない。怒ってるかと思い距離を置いたに離れるなとは。
こんなククールと一緒に居てはこっちまでムッとさせられる。そんな事を考えていたらエイトとヤンガスが立ち止まりキョロキョロし始めた。
「どうした?」
不機嫌そうにククールが声を掛けると、エヘヘと緊張感の欠片も感じられない笑顔でエイトが振り返った。「宿屋がわかんない」
それほど大きな町ではないが複雑に作られている所為で道に迷ったらしい。
道の真ん中に立ち止まり地図とにらめっこをしていると相変わらず町の男達がチラチラとこちらを見ていた。
「だぁーっ!!てめー、今ヤラシイ目でゼシカの事見てただろ!!」
大声を上げ絶叫するククール。次の瞬間には呪文を唱え始めた。
あの詠唱は・・・グランドクロス!
慌ててエイトとヤンガスが止めに入る。
大騒ぎしている三人を端で見ていたゼシカが盛大な溜息を吐き出した。

どうやらククールの不機嫌な原因はゼシカの装備している魔法のビキニにあったらしい。町の男達はそれを見ていたのだ。
二人がかりでやっとククールを落ち着かせたが、息も荒くゼシカに歩み寄ってきた。
「・・・くそ!これでも羽織れ!」
ククールはマントを外しゼシカの肩に掛けてやる。そして手を取りズンズンと歩き始めた。
「ちょっ!ククール?」
「おい!エイト、早く宿屋見つけろよ!」
エイトを怒鳴りつけゼシカを人目につかない路地裏に連れ込んだ。
「ったく!だから魔法のビキニ買うの反対だったんだ・・・」
「でもコレ結構守備力高いし、可愛いし」
「確かに可愛いけど・・・可愛いけど・・・」
オレ以外の男の目に触れさせたくないんだよ、と頭を抱え込みブツブツ言っているククールを見ていたらゼシカはなんだか急に嬉しくて自然と顔がにやけて来てしまった。
「?なに笑ってんだよ」
「フフ・・・バカね」
そう言うとゼシカはククールの頬を両手で包み込んだ。
「ヤキモチ妬く必要なんてないのに」
私はアンタのものなんだから。最後の言葉は声にせずククールを見つめる。
「ゼシカ・・・」
「ククール・・・」
お互いの顔が少しづつ近づいてゆく。ククールの唇がゼシカのそれに重なり合う瞬間。
「ククール!宿屋見つかったよ!」
嬉しそうな声のエイトの邪魔が入った。
「てんめぇ~エイト・・・」
がくりと頂垂れるククール。ゼシカは顔を真っ赤にして苦笑いを浮かべている。「あれ?二人ともどしたの?」
そしてキョトンとしているエイト。
「続きはまたね」
ゼシカは残念そうにしているククールにそっと耳打ちし、エイト達の所へ走って行ってしまった。
その後ろでは凄い形相でエイトを睨むククールがいた。
そんな三人を眺めていたヤンガスが一人呟く。
「兄貴・・・絶妙のタイミングでがす・・・」












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最終更新:2008年10月22日 19:16
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