語り手がバトンタッチしていく『パレード』と似た構成。あの小説もひとつの家族というか共同生活を描いていたけど、今回も家族だったり、共同生活だったりする。
かっこよく働く女性がいて、綺麗なカップルがいて、幸せな家族がいて、屈託のない上品な会話があって。誰もが少し上を見ながら自分を思い出す仕草のよう。
一方で闇の部分は大きく、耐え難い過去もあり、伝えることの出来ない不安を誰もが抱えている。大げさな悲劇を夢想し、今いる場所の平凡を案ずるよう。
その技法はさらに成熟し、まるで精密な記録だったかのように、今読むと感じられるかも。舞台になっている小日向とか茗荷谷は結構仕事先の近所なので、なんか新鮮。2006-02-01/k.m
カテゴリー-小説