この70年代後半のアルバニアを描いた映画をみて思うのは、まったくこの時代に生まれなくてよかった、ということだ。
独裁政権下の共産主義が、子供の生徒会みたく幼稚に見えた。その幼稚さに逆らうことが、命をも奪われるかもしれないなんてバカらしい。仕事で区役所へ打ち合わせに行くだけで、ムカムカしているのだから、こんなに理不尽に拘束されたら、どうなるのだろう。これは実話に基づく映画だというが、ちょっと信じられない気がした。こうやって時代が違えば、今の自分の理解を超えた世界が存在していたことをも、引き受けることが出来るのだろうが、今現在直面している人達の世界を、一体どうやって受け入れることが出来ようか。それは想像すらおぼつかない事だ・・・。
生徒と共に丘の斜面に政治スローガンを石でかたどる。たったそれだけのために、人生の多くを費やし、社会への最大の貢献として認識される。生産性の対局にある、イデオロギーという魔物に半自動化された世界だ。
坦々と描かれたこの不条理さ。そのねらい通り、見る者を呆れさせ、苛立たせていたと思う。素直な作品だから、よりいっそうその場所での力強さを感じた。東京国際映画祭のフィナーレを飾るコンペティション・グランプリ作品。主演のアルトゥル・ゴリシュテトィによる挨拶によって上映が開始された。今回初めて参加した映画祭だったが、映画を見たい人はまだまだ多くいて、劇場で見る楽しさを伝えたい関係者も多くいるのだ。そんな当たり前のことを、ちょっとリアルに感じられる機会でもあった。 2001.11.04k.m
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