ネオリベ現代生活批判序説


  • 著者・編者・訳者:白石嘉治・大野英士編
  • 出版社:新評論
  • 2005年10月
  • 価格 2310円

「ネオリベ」という言葉の響きやこの本を読んでいる中で抱く印象は、かつての労働者階級による闘争的な空気が再び起こっているかのような緊張感だ。

けれど事態はそれほど単純ではないようだし、一体自分にはこの状況が理解できているのか、またはこれから先の進捗に間違った判断はしないか、そもそも「かつての闘争」なんて言える様な歴史理解すら出来ていないのではないか。

一方で、漠然とした不安を抱えながら生きているのが現代社会のバランス感覚なのであって、真実を理解しないまま表層の空気のみを感じ取るナイーブさだけが発達してしまっているのだろう。なんていう冷めた自分もいる。

「かつての闘争」が失敗し、イデオロギーを語ること自体がタブー視され、そんな中でネオリベラリズムという市場原理をひたすら重視した経済思想が世の中を造りこんでいく「さま」と、その「グロテスクさ」は充分に感じられた。

もはや右とか左とか言う明解な線引きでは理解できない。その複雑さは、構造改革だとか、聖域なき改革だとかの「もっともらしさの裏側」を暴くこともしないワイドショーを見続けて、「そのウラを読む」という作業を空虚にさせてしまう思考停止を生む。イデオロギーは要らない。けれどその感覚が、経済至上主義の入り込むスキ間をたくさんつくってもいた。

例えばサンボマスターが、ニートや引きこもりを「なまけ」だと切り捨てるだけの大人たちを批判する姿勢がある。大人たちがアルバイトや派遣などで社会的保証のない不安定な雇用しか与えず、一方で潤沢な自身の資産から同じ若者をスポイルしている矛盾した仕組みに抵抗する感覚をそれは与えてくれた。

きっと皆どこかで矛盾を感じているのだろう。けれど明確な答えがどこにもないから考えることも面倒になってしまうのだ。自分もそうだ。しかも未来を不安にさせるものだから、もっと今だけに閉塞していってしまう。「そんなこんな」が、てんこ盛りな本だ。2006-09-07/k.m

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カテゴリー-社会


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最終更新:2008年04月11日 08:06