仲間とともに渋谷でデートクラブを経営し、ヤクザへ上納金を納める毎日を送る上條(鬼丸)は、ある日、荒野(千原)という男と出会う。無表情にヤクザを殺すミステリアスな男で、二人は反発しながらも似たものを感じ行動を共にするようになる。し かし、デートクラブの女・アリス(緒方)が大量のLSDを手に入れてから事態は急展開する。阪本順治の「王手」、「ビリケン」で脚本を手掛けた豊田利晃の初監督作。
どこから来たのか、何をしたいのか、不可解な男、荒野(千原)。荒野(千原)は、上條(鬼丸)のもう一方の気持ち<虚像>。 渋谷の街で上條(鬼丸)といえば泣く子も黙る様な存在でありながら、チンピラからあがれず、坂の上のやくざの親分にお伺いをたてる日々。田舎の母親に対してもどこか後ろめたさがある。そんな上條(鬼丸)のやりきれない思いが荒野(千原)という男になって現れたのだろう。 「やくざはいらん」といい冷徹に殺していく姿はやくざになりきれない上條(鬼丸)そのものではないか。 ラストで、親分の事務所から出てきて坂を下りてくる途中、上條(鬼丸)は荒野(千原)を刺すが、荒野(千原)は死なず、坂を下り、渋谷の街に戻る。坂の上=やくざの世界であり、坂の下=社会。荒野=上條はやくざの世界からは脱せられたが、社会が彼を受け入る事を拒んだという事なのだろうか。 バイオレンスムービーと一言でくくられない、その奥に現在の若者の救いようのない日常がよく表されている作品である。
NHK朝の連ドラ「ほんまもん」にも出演している千原兄弟(千原浩史)がいいアジ出しています。
2002.02.09i.m
カテゴリー-映画