特許権侵害差止請求事件(平成19年11月08日最高裁判所第一小法廷判決)

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特許権侵害差止請求事件(平成19年11月08日最高裁判所第一小法廷判決) - (2007/11/13 (火) 13:19:22) の編集履歴(バックアップ)


主文

本件上告を棄却する。 上告費用は上告人の負担とする。

理由

  • 上告代理人上山浩、同松山遥、同川井信之の上告受理申立て理由(排除された部分を除く。)について
1 本件は、インクジェットプリンタ用インクタンクに関する特許権を有する被上告人が、上告人の輸入販売するインクジェットプリンタ用インクタンクについて、被上告人の特許の特許発明の技術的範囲に属するとして、上告人に対し、そのインクタンクの輸入、販売等の差止め及び廃棄を求める事案である。
2 原審の適法に確定した事実関係等の概要は、次のとおりである。
(1)本件特許権
被上告人は、発明の名称を「液体収納容器、該容器の製造方法、該容器のパッケージ、該容器と記録ヘッドとを一体化したインクジェットヘッドカートリッジ及び液体吐出記録装置」とする特許(特許第3278410号)に係る特許権(以下「本件特許権」という。)を有している。


4 論旨は、原審の特許権行使の可否に係る判断基準、及びこれに基づいて本件特許権の行使が制限されないとした判断について、法令違反をいうものであるが、採用することはできない。その理由は、以下のとおりである。
(1) 特許権者又は特許権者から許諾を受けた実施権者(以下、両者を併せて「特許権者等」という。)が我が国において特許製品を譲渡した場合には、当該特許製品については特許権はその目的を達成したものとして消尽し、もはや特許権の効力は、当該特許製品の使用、譲渡等(特許法2条3項1号にいう使用、譲渡等、輸出若しくは輸入又は譲渡等の申出をいう。以下同じ。)に及ばず、特許権者は、当該特許製品について特許権を行使することは許されないものと解するのが相当である。この場合、特許製品について譲渡を行う都度特許権者の許諾を要するとすると、市場における特許製品の円滑な流通が妨げられ、かえって特許権者自身の利益を害し、ひいては特許法1条所定の特許法の目的にも反することになる一方、特許権者は、特許発明の公開の代償を確保する機会が既に保障されているものということができ、特許権者等から譲渡された特許製品について、特許権者がその流通過程において二重に利得を得ることを認める必要性は存在しないからである(前掲最高裁平成9年7月1日第三小法廷判決参照)。このような権利の消尽については、半導体集積回路の回路配置に関する法律12条3項、種苗法21条4項において、明文で規定されているところであり、特許権についても、これと同様の権利行使の制限が妥当するものと解されるというべきである。
 しかしながら、特許権の消尽により特許権の行使が制限される対象となるのは、飽くまで特許権者等が我が国において譲渡した特許製品そのものに限られるものであるから、特許権者等が我が国において譲渡した特許製品につき加工や部材の交換がされ、それにより当該特許製品と同一性を欠く特許製品が新たに製造されたものと認められるときは、特許権者は、その特許製品について、特許権を行使することが許されるというべきである。そして、上記にいう特許製品の新たな製造に当たるかどうかについては、当該特許製品の属性、特許発明の内容、加工及び部材の交換の態様のほか、取引の実情等も総合考慮して判断するのが相当であり、当該特許製品の属性としては、製品の機能、構造及び材質、用途、耐用期間、使用態様が、加工及び部材の交換の態様としては、加工等がされた際の当該特許製品の状態、加工の内容及び程度、交換された部材の耐用期間、当該部材の特許製品中における技術的機能及び経済的価値が考慮の対象となるというべきである。
(3) これを本件についてみると、前記事実関係等によれば、被上告人は、被上告人製品のインクタンクにインクを再充てんして再使用することとした場合には、印刷品位の低下やプリンタ本体の故障等を生じさせるおそれもあることから、これを1回で使い切り、新しいものと交換するものとしており、そのために被上告人製品にはインク補充のための開口部が設けられておらず、そのような構造上、インクを再充てんするためにはインクタンク本体に穴を開けることが不可欠であって、上告人製品の製品化の工程においても、本件インクタンク本体の液体収納室の上面に穴を開け、そこからインクを注入した後にこれをふさいでいるというのである。このような上告人製品の製品化の工程における加工等の態様は、単に消耗品であるインクを補充しているというにとどまらず、インクタンク本体をインクの補充が可能となるように変形させるものにほかならない。
 また、前記事実関係等によれば、被上告人製品は、インク自体が圧接部の界面において空気の移動を妨げる障壁となる技術的役割を担っているところ、インクがある程度費消されると圧接部の界面の一部又は全部がインクを保持しなくなるものであり、プリンタから取り外された使用済みの
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