ONE OUTS

ONE OUTS(甲斐谷忍)

by佐藤潤P

この漫画は、野球漫画であり、野球漫画ではありません。
作者の言葉を借りれば「この作品は野球版『アカギ』」です。
題材こそ野球を用いていますが、スポーツとしての野球よりも勝負事としての野球が描かれ、
作者も「あらゆる野球漫画へのアンチテーゼとしてこの作品はつくられている」と語っており、
その理由として大きく分けて3つの事柄について述べています。
まず1つは主人公であるピッチャー、「渡久地東亜(とくちとーあ)」が豪速球を投げないこと。
実際、作中で渡久地はプロ野球の投手としては、お世辞にも速いと言えない120km/hそこそこの速球しか投げることができません。
次に、努力と根性が必ずしも勝利に結びつくとは限らないこと。
そして最後に最も重要な事柄として、主人公が悪党であることを挙げています。

賭け野球で負け知らずの渡久地は、沖縄で弱小球団「埼京彩珠リカオンズ」の中心選手である「児島弘道」と出会い、
リカオンズが優勝するための何かを渡久地から感じた児島の手によってプロ野球の世界へと足を踏み入れることとなります。
しかし、これを良く思わない球団のオーナー「彩川」は渡久地をすぐに追い払うために、
渡久地の提案したアウト1つにつきプラス500万円、1失点につきマイナス5000万円、年棒や契約金は一切無し、
圧倒的にオーナー側有利である「ワンナウツ契約」を受諾。
実際の野球の中で行われる渡久地と彩川オーナーとの心理戦や、相手チームとの騙し合い、
野球規則の細部の記述までを用いての頭脳戦が物語のメインです。

精密なコントロール、長年のギャンブル経験で磨かれた勝負師としての才覚、鋭い洞察力と心理操作術、
動揺やプレッシャーとは全く無縁の強靭な精神力、野球の常識を覆す発想力などを武器に、プロの選手達を翻弄する姿は快感です。
野球知識ありきで読まなくてはならない野球漫画が多い中、この作品では、分かりにくいルールや作戦に関しては作中で説明が行われ、
野球を知らない読者のためにも配慮されており、読者を置き去りにしません。
同じ甲斐谷忍氏の作品である「LIAR GAME」や福本伸行氏の「アカギ」や「カイジ」などのギャンブル漫画が好きな方だけでなく、
ありきたりな野球漫画に飽きてしまった方にも是非。
最終更新:2011年01月29日 06:47
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