●悪の華(押見修造)
byマカロニグラたん
「クソムシが」というセリフとその人物のみが描かれたシンプルかつ斬新な表紙の本作品。
表紙&タイトルで漫画を選ぶ私が衝動買いしないわけがありませんでした。
ボードレールという作家の同名の作品『悪の華』を題材にしているようですが、私はそれを読んだことがないので、
そこには触れずにレビューしていこうと思います。
主人公である春日春男がある日の放課後、忘れ物を取りに戻った教室で、
ひそかに好意を寄せている佐伯奈々子が忘れていった体操着を見つけるところからこの話は動き出します。
教室には春日以外誰もいない。罪悪感を感じつつも春日はその体操着を手にとってしまった。
そのとき、ドアの方から物音がして、その音に驚いた春日は体操着をとっさに制服の中に隠してしまう。
幸い誰も入っては来なかったが、制服から体操着を出すところを誰かに見られてしまうかもしれないと恐れ、
体操着を制服の中に入れたまま家へと帰ってしまう。自分の部屋に着くと、ベッドの上に体操着を並べて自己嫌悪をした。
翌日にこっそり返そうとするも、クラスでは盗難騒動になっており、とても返せる雰囲気ではなくなっていた。
その放課後、帰路で春日を待っていたのはクラスの嫌われ者である中村佐和。
『私見てたんだよ。春日君が佐伯さんの体操着を盗んだところ』そう笑顔で告げる中村は春日に“契約”を持ちかける。
その契約とは、春日が体操着を盗んだことをバラさない代りに、中村のありとあらゆる命令に春日が従うということだった。
この契約によって春日は中村にありとあらゆる変態行為を強制されます。
この変態行為とそのときの心情描写がこの漫画の面白いところで、人によっては好き嫌い分かれるところだと思います。
その変態行為のほとんどが佐伯絡みであって、春日は後ろめたい気持ちと恥ずかしさを同時に感じることになります。
また、春日がその変態行為を完遂できなかった場合には容赦ない罵倒や嫌がらせが行われます。
こちらも読者としては面白く、つまり春日がどっちに転んでも読者は楽しめることになります。
しかし、話が進むにつれてこの変態行為の強要の裏には中村の佐伯に対する嫉妬のようなものがあるのがわかってきます。
春日に変態行為を強要する中村の目的は、その行為を通じて春日の心の奥にある変態性を引きずり出し、
「真の変態」である春日を目覚めさせ、同じく「真の変態」である自分と世界を共有させることであると思います。
果たして春日は「真の変態」なのか? 2巻のラストで少し変化がありますが、これからに注目です。
だいぶ話は変わりますが、もしこの漫画をジャンル分けをするとしたら、何に入るかと考えました。
その結果、この漫画は「恋愛」ジャンル入るという結論に達しました。
変態の歪んだ性癖と、歪んだ愛情表現。それがこの漫画の真骨頂である、そう考えたからです。
普通の恋愛漫画や小説はどうも受け付けない私ですが、この変態恋愛漫画は大丈夫なようです。
おそらく私も変態的な要素を持っているからでしょう。ですが、多かれ少なかれ人は変態的な要素を持っているものだと思います。
それを自覚しているか否かは様々であるとおもいますが、自覚するきっかけがあればそれは表に出てくるのです。
その隠された変態の性質によっては、この本でそれを自覚することになるかもしれません。
この本を読んで変態に目覚める、もしくは自分の変態としての領域を広げてみませんか?
なんか宗教勧誘っぽくなてしまったので、ここらへんで打ち止めにしたいと思います。
前にも述べたように、この漫画は好き嫌いが分かれる漫画だと思います。
このレビューを読んで、少しでも面白そうだと感じたあなたは“変態の素質アリ”です。
ぜひ誰にも見られない場所でコソコソ読んでみてください。
面白いと感じるなり、気持ち悪いと感じるなり、きっと何かしら感じるものがあるハズです。
最終更新:2011年01月29日 06:38