土竜の唄(高橋のぼる)
ゴリ
さて、自分は土竜の唄という漫画についてレビューをさせていただく。
先日ブックオフにて序盤部分を立ち読みし、先が気になりすぎて全巻購入してしまったという曰くつき?の漫画であるが、
まずは簡単にあらすじを紹介しよう。
~あらすじ~
警視庁谷袋警察署
百観音前交番勤務
"菊川玲二"(20)。階級は巡査。
警察学校創立以来、最低の成績で卒業。
月間の始末書枚数、ワースト記録樹立。
女子高生たちからは女好きの"エロ菊"と馬鹿にされ、
しょっちゅう署長に呼び出されては説教を食らっている、署内一の問題児である。
そんな玲二は、ある日署長から特命を受ける。
建前上は揉め事を起こした処分として懲戒免職となったが、
真実はヤクザ組織に潜入(モグ)りこみ、
組織を壊滅させるためのスパイ、「潜入捜査官(モグラ)」に任命されたのである。
モグラとしての最終目標は、関東全域を支配し、えげつなさでは天下一品、日本一凶暴なヤクザといわれる
「数寄屋会」四代目会長、"轟周宝"を挙げること。
数寄屋会壊滅を実現させるためには、轟周宝本人の犯罪の決定的な証拠が必要になる。
決定的証拠を押さえるには、決定的証拠を押さえることのできる場所にいなくてはならない。
かくして、潜入捜査官・菊川玲二の、怒涛のようなモグラライフがスタートしたのであった・・・。
要約するとこんなところである。
あらすじだけ見ると玲二がとんでもないろくでなしに見えるが、早まってはいけない。
その実彼は、鋭い洞察力と、誰に遠慮することなくハッキリと物を言う気高い心意気、
保身を全く考えず、自らの信じる正義をこれでもか、とまっすぐに突きつけることのできる、
警察官の鑑たる熱血漢なのである。
(万引き少女に悪戯した商店主に対し説教をかまし、署長との仲を誇示され、懲戒免職を盾に脅されるものの、
逆に拳銃を突きつけ、「人間侮辱罪でパクるぞコノヤロウ!」と啖呵を切る破天荒っぷりである)
この揉め事が原因で(建前上)懲戒免職を受けたわけだが、
どうしても納得できない玲二は、自らの上司である署長に対しても
「悪いものは悪い!あいつ(商店主)は一般市民ではなく隠れ犯罪者だ!そんなのも見抜けねぇのかバッキャロォーッ!!」
と臆せず激昂。それによりモグラとしての適性はばっちりと判断され、晴れて(?)潜入捜査官となるわけなのだ。
この土竜の唄、全体的にかなりぶっ飛んでおり、なんとまぁハチャメチャな作品である。
暴力表現を始め、話の展開、登場人物も破天荒で一筋縄ではいかない曲者ばかり。
基本的にヤクザサイドに単純な善人はおらず、ヤクザらしい様々な"悪"で満ち溢れている。
そのようなクセの強い登場人物の中でも特筆すべきは、恐らくこの作品の中で最も人気が高いであろう、
通称「クレイジーパピヨン」こと、"日浦匡也"の存在である。
(玲二はのちに轟周宝を護る数寄矢会直参四天王の一人、"阿湖正義"率いる「阿湖義組」に潜入するのだが、
日浦匡也はそこの若頭である)
とにかく男気あふれる人物であり、玲二と兄弟分の杯を交わすことになる超重要キャラクターである。
語るとキリがないため割愛するが、詳しい経緯や玲二との熱い友情話は、実際に手にとって読んで確かめてほしい。
さて、玲二の目標は、数寄屋会のドン、轟周宝を挙げることである。
轟周宝に近づき、証拠を押さえるためには、自分自身が組織に認められ、のし上がっていかなければならない。
当然潜入捜査官であることはバレてはいけないため、かなりのハンデを背負って任務にあたるわけであり、
話の中で幾度となく危機・逆境に陥るわけだが、そこを持ち前のぶっ飛んだ機転と強靭な精神力、
凄まじいまでの悪運、警察・ヤクザ両サイドからの助けで乗り越えていく。
この起承転結を終えるまでの伏線の張り方や演出、ミスリード、一巻ごとの引きもまた見事なのだ。
とにかく続きが気になってしょうがない漫画なので、ほとんどネタバレができないのが悲しいところである。
そしてこの作品で面白いところが、玲二が持つ二つの側面である。
先ほども書いたが、潜入捜査官として順調に轟周宝に近づくということは、
逆説的にいえば、ヤクザとして成功し、組織内でビッグになるということである。
玲二は一警察官として絶対の正義感を持ち、ヤクザのことを捕えなければならない"悪"だと断じているが、
そこでネックになるのが、前述した日浦匡也の存在だ。
話が進むにつれ、互いに互いのためなら自らの命すら惜しくないほどの、かけがえのない絆が出来上がってしまった玲二とパピヨン。
いずれはモグラの正体がバレるわけであり、その瞬間こそが土竜の唄という作品の最大の山場となるはずだが、
どうやってその流れに持っていくのか、オチはどうつけるのか、その後の二人の関係がどうなるのか、など、
やはり気になって気になって仕方がないわけである。恐ろしい漫画だ。
この漫画、恐らく作画で敬遠する人が多いと思うが、話はとんでもなく面白い。ゴリラが保証する。
(ただ過剰な暴力表現が多いためそこらへんは要注意)
あと女性が大してエロくないので、それ目当てで読むのもあまりオススメしない。
まぁなにはともあれ、組員の方々には一度は読んでもらいたい漫画の一つである。
熱い男たちの織りなすハチャメチャなドラマを、是非とも味わってもらいたい。
最終更新:2011年01月29日 08:09