8章 宇宙環境と生存能力
8.1 宇宙環境
- 地球近傍の宇宙や大気環境はパフォーマンスやシステム寿命にかなり影響する。
・具体的にはサイズ、重量、複雑さ、コストへ影響。
・費用のかかる機能不良、コンポーネントやサブシステムの欠損さえありうる。
・その他にもプラズマや放射線物質の例
8.1.1 プラズマと宇宙機の帯電
・太陽風と地球磁場の影響で地球の夜側に磁場が引き伸ばされる。(=Magnetotail)
・薄いプラズマシートがこのMagnetotailを分岐させる。(Fig.8-1)
・太陽風と地球磁場の相互作用→太陽風の運動EがMagnetotailの磁気Eに変換
→無限に蓄積できないため、Magnetic Substormがそれを消散
→電圧を与えられたプラズマが発生!
→地球の静止軌道に拡がる。
→宇宙機表面が強い負電圧に帯電してしまう。
- 有害な表面帯電は主に10~20keVの電子が支配的な軌道で発生する。
- 低軌道:高緯度で帯電が発生する。
→低温、低密度のプラズマを通過する宇宙機とオーロラの電子の衝突によるもの
- 高軌道:深夜から夜明けに対応した経度間で極磁気嵐(Magnetospheric Substorm)の間、発生する。
- 宇宙機の設計では次の点に注意!
①プラズマによるDifferential Charging(何コレ?)の電位を機能停止電位より十分下に保つ。
②結果として生じる静電気的放電に耐えられるようにする。
8.1.2 捕捉された放射線
- ヴァンアレン帯は宇宙機にとって永遠の危険!
- 電子は内部域と外部域を中心とする2つのドーナツを合わせたようなエリアに優先的に入る。(Fig.8-2)
→ヴァンアレン帯の詳細はWikipediaが分かりやすい。
- Magnetic L-shell:ダイポール軸のまわりで磁場線を回転させることで生じる面
→式(8-2)を満たす。
→一般化されたLの概念は地磁気場の高周波が、帯電粒子のダイポール軌道から運動を乱れさせる
方法を説明している。
→この概念は捕捉放射線環境をマッピングするためのL値の代わりに用いられる(?)
- The National Space Data Centerによるヴァンアレン帯の基準モデルの説明が続く。
- 宇宙機の適切なシールドを決定するには、シールドの厚さの関数として軌道上での線量率を計算。
→時間平均の宇宙環境に対して放射線輸送計算を適用
→計算例(Fig.8-4)
・総放射線量は次の3つ:①陽子線量 ②電子線量 ③制動放射X線量
→③はシールド物質と電子の相互作用により生じる
・放射線量は高度にかなり依存
→計算例(Fig.8-5)
・静止軌道では透過する放射線より低エネルギーのイオンが有害
→温度上昇を引き起こし、赤外線背景を強める。
8.1.3 太陽粒子現象(SPE)
→SPE:エネルギー粒子流束の急激な増加。数時間から数日続く。1年に2,3度程度。
→・太陽光線関連のコンポーネントの劣化
・光学センサ関連のノイズ
・宇宙飛行士の病気
- SPEの過程を示しているのがFig.8-6
- フレア発生後、相対性的エネルギーを持った陽子が地球に飛来する。
→SPE後、陽子流束が暗騒音を減衰させる。
①最大強度
②継続時間
③最大エネルギーのコンポーネントや重原子核が多量に存在すること
8.1.4 銀河宇宙線(GCR)
・原子核数や種類は太陽系のものに比例する。エネルギースペクトル表はFig.8-8参照。
→宇宙線は太陽周期の変調を受けることが分かる。
- たった1つの粒子ですら電子機器(RAM、マイコン…)の機能劣化を引き起こす。
→Single-event Phenomena(SEP)
→電子機器に及ぼす3つの影響とは?
①Bitflip(or Single-event Upset, SEU):パーツに損傷を負わせるでもなく、干渉するわけでもない。
②Single-event Latchup, SEL:機器がハングアップし超過電流が発生、電源をリセットしなければならない。
③Single-event Burnout, SEB:機器の復旧不可能。
→その機器にどれくらいの頻度でSEPが発生するかを評価するには?
①外部環境
②宇宙機内の電子機器に達するまでに入射エネルギースペクトルや粒子強度がどう変化するか
③電子機器がイオン化する放射線にどう反応するか
→ところがSEUくらいしか予測することができない。式(8-3)参照。
→そのエネルギーが電子機器内に蓄積してしまう。(Fig.8-9)
→GCRが電子機器の空乏領域の電子正孔対を離れると、電場が対を掃きだす(?)
- GCRが暗騒音の発生源であることも設計段階で考慮しなければならない。
8.1.5 大気圏上層部
- 宇宙機への影響:空力的抵抗や揚力、熱の発生、腐食作用
→打ち上げや再突入時に重要となってくる。(→Sec.6.2.3)
→弾道係数、対気速度、大気密度などに依存
■~120km
・強い抵抗
・寿命が短く軌道の実用的重要性はない。
■120~600km
・エネルギー源が様々なため大気密度も様々であり、摂動(Perturbation)が発生する。
→予測方法は2種類ある。
・地球の熱圏に含まれる。
→高度によって温度が急激に変化する。(極紫外線や地磁場の影響)
→極紫外線は宇宙機の寿命に影響を及ぼす。さらに地上での予測が困難。その様子はFig.8-10~8-13を参照。
→太陽活動極大期では宇宙機の劣化が加速する。極小期は逆。
→宇宙機の弾道係数が小さいと、大気に即反応し、劣化が早い。
→結局のところ、実際の寿命は設計パラメータや詳細な軌道データ、太陽周期に対する打ち上げ日などに影響される。
■600km~
・弱い抵抗
・軌道の寿命は10年以上→摂動はごくわずか
- 原子状酸素:大気圏上層部の重要な要素。紫外線により酸素分子が解離することで発生。
→センサのパフォーマンスの劣化、損失を引き起こす。
→さらに活発に励起した構成物質を生み出し、多量のバックグラウンド放射線を放出し、光学系と干渉してしまう。(Shuttle Glow)
→Fig.8-14で高度と原子状酸素量の関係を示す。
→高度170km付近で量が極大となっていることが分かる。
- 原子状酸素量は太陽周期で大きく異なることから、宇宙機の素材は太陽周期を考慮して選ぶべきである。
→平均太陽活動極大という条件で選ぶことはさらに活発な活動も考えられるため、不適当である。
8.1.6 微小重力
- 軌道上で微小重力が起こる理由として、宇宙機が常に自由落下していることが挙げられる。
→微小重力の正体がつらつらと…ここでは割愛。
- 低軌道における重力の影響は10^-6程度(1μG)まで減らすことができる。
→この条件化では普通地上では起きないような化学変化や製造過程が可能である。
→全く新しい科学分野である!
8.2 過酷さと生存要求
- Survivability:敵対するエージェントからの厳しい環境にシステムがさらされても意図した機能を達成するための能力
- Hardness:システムが生き抜かねばならない環境のストレスレベルを決定づける特性
- 軍事や商用衛星は高いストレスレベルの環境でもニーズを満たすため生き残らねばならない。(Ex. 核戦争)
→そのためにどうなれば機能劣化が起こるかを理解しそれを防ぐように設計しなければならない。
→これらの生存性を考えるのは設計の手始めにするべきである。
→しかし生存性を高めることは重量やコストの増大につながる。
→核兵器、レーザー兵器、高速ペレット弾、高出力マイクロウェーブ兵器、ホーミング兵器、ビーム兵器
- ココはどちらかというと特殊な宇宙環境を生き抜く感じです。8.1がメインのようです、はい。
最終更新:2007年04月20日 18:24