18章 打ち上げシステム
注)この章で言う「ペイロード」とは打ち上げシステムと衛星のインターフェースや
フェアリングも含めた全ての機器のことを指す。
・打ち上げシステムの主な役割は、衛星をさまざまな環境から守りつつ、
目的の軌道の目的の速度まで到達させることである。
・今まで、打ち上げシステムと衛星本体は別々に開発されてきたが、そこにも、
より効率的にする改善の余地がある。
・打ち上げシステムの信頼性は85~95%程度だが、コスト的に考えて、より多くのコストがかかる
衛星自体の予算をそちらに回すことで全体の信頼性が上がるということもありうる
18.1 基本的な打ち上げロケットの考察
STEP1:要求、制約をまとめる
・重量
・軌道
・予算 等
STEP2:打ち上げシステムの使用可能な構成の分析や洗い出しをする
・衛星の燃料重量
・推力重量比
・信頼性 等を検討する
STEP3:衛星の概念的な設計を元に可能性のある打ち上げシステムを選定する
・設定可能な性能マージン
・打ち上げ予定vs打ち上げ可能日程
・予算 等を検討する
STEP4:選定した打ち上げシステムから衛星のサイズ設計と環境設計をする
・大きさと形
・最大化速度
・振動周波数と強さ
・投入軌道精度 等は最悪の方向に見積もっておく
STEP5:性能、コスト、リスク日程を考えイタレーションをする
・打ち上げ中、ロケットにかかる力は推力、重心にかかる重力、空力中心にかかる空気力の3つ。
推力の発生方向を調整することにより、姿勢や運動方向を調整する。
・全体の速度増分とは推進剤による速度増から、重力と空気抵抗による速度損失を引いたものである。
推力重量比が高いほど急激に上昇するため重力による速度損失は少ないが、
空気力(抵抗)は上がる。とはいえ重力の影響のほうが大きい。(Fig18-2)
・質量分率(Mass fraction)
・Propellant mass fraction …全重量に対する推進剤の重量の割合
・Structure mass fraction …フェアリングも含めた構造重量の全体重量に対する割合
・Payload mass fraction …全重量に対するペイロードの重量の割合
一般に Propellant : Structure : Payload = 0.85 : 0.14 : 0.01
18.2 打ち上げシステム選定プロセス
・まず最初にミッションの要求と目的を決める。それにより大きく打ち上げ戦略が変わる
・単機搭載かshareをするかの問題。短期搭載だと高価っが他からの悪影響がない。
shareだと安いが、他との影響の問題や、軌道が適合していないと不可能。
・ミッション要求の決定により、軌道要素(高度や軌道傾斜角、昇交点)のほか、
衛星機数や、寿命と補充戦略、データ転送法、打ち上げ日程などの特記パラメータも決まる。
・軌道投入、誘導、制御などどこまでが打ち上げシステムの仕事で、どこからが衛星の仕事かはっきりさせる
・CPUの発展により、衛星と打ち上げシステムの双方のCPU間のインターフェースが
複雑になりがちなのでそれを抑える必要がある。
・次にリスク少なく、ミッション要求を満たせる打ち上げシステムの構成を考える
・最近では「現存する打ち上げシステムに適合した衛星の開発」という流れ。
しかし、打ち上げ時のエラーにより数ヶ月から数年の時間がかかることもあるため、
代替の打ち上げシステムを早期から考えておく必要がある。
・打ち上げシステムの主な性能パラメータは
・どれだけの重さのものを上げられるか(performance capability)
・予定の日程に打ち上がるロケットがあるか(vehicle availability)
・衛星と打ち上げシステムの適合性(compatibility)
・予算(cost)
・打ち上げシステムの性能と衛星からの要求の差はperformance marginと呼ばれる
重要要素である。これは衛星設計中の重量増に対応するための余裕である。
理想的には打ち上げ時にはない(余裕ゼロ)ほうがコスト効率がいい。
・以下のことを考え、STEP2で選定した中からさらに候補を絞っていく
・公示されたコストと日程は合理的か
・各パラメータは過去のものと比較してどうか
・提供者は国営などによる特別待遇ではなく、市場原理に基づいて経営しているか
・リスクの源になる新しい要素や独特の要素はないか。
・3つの地上-目的軌道間移行のオプション
・一つの打ち上げシステム使った直接投入…小型衛星でで低軌道のときに使われる
・多段(多重)打ち上げシステムを使った投入…静止軌道など
・integral propulsion sysytem…二液エンジンやイオンエンジンを使い再点火を繰り返す。軌道修正可能。
・既存する打ち上げシステムの性能(軌道ごとの投入重量、フェアリング広さなど)がTable18-4、5にある。
・いくつか具体例を…
・Scout…最も小さく古いシステム。4段の固体燃料推進で4段目でスピン安定を図る。
・Delta…最新の3段システム。ジンバルで姿勢を制御しながら1,2段はとび、3段でスピン安定を取る
・Atras Centaur…液酸液水を使った推進が特徴
・Tian…弾道ミサイルから派生したロケット。多数を組み合わせて使用している模様
・Space Shuttle…ご存知スペースシャトル。多機能多目的。
・Pegasus…翼を使った空中離陸機。B-52をから射出される。
・その他Ariane(ヨーロッパ)、M-3、H-Ⅰ、Ⅱ(日本)は省略
・打ち上げ場の場所の表がTable18-6。自転速度を最大に使える赤道上が一番有利。
日本の打ち上げ可能時期は春と冬のそれぞれ45日ずつのみ。近隣漁業への影響のため。
・悪天候により打ち上げが延期され多大なコストが掛かることも…。
・アメリカなどでは数の少ない業者が多種にわたる打ち上げシステムを使うことで、ユーザーの要求に応えている
18.3 衛星設計外装設計と環境の決定
・18.1のSTEP4にあたる。
・主にフェアリングと衛星-ロケット間インターフェース、環境の3つ
・これによりペイロードの大きさや形状が制約される
・ペイロードを空力加重や温度などの環境から守る働きをする
・環境が問題なくなったら破棄される
・要求に合うフェアリングが見つからなかったら業者が作ってくれる。
・物理的な接続、スピンテーブル、分離システム、電気的インターフェースなどがある。
・これの重さにより衛星の重さの要求が厳しくなるので重要要素の一つとなる
・ロケット製造者はフェアリングが閉じても、ペイロードへのアクセス(物理的、電気的、電波的、光学的)
を確保しなければならない。
・衛星、ロケット間の情報のやり取りはミッション要求にもよるが、双方が話し合って決める。
・不純物(contamination)…要求値例 class10000
値が大きいとソーラーパネルや光学機器、熱制御材の性能低下に繋がる。
アウトガスの発生が少ない材料を使う必要あり。
・電波影響
誘導システムやその他の電波がペイロードのシステムを誤作動させる可能性がある。
軍事衛星なら砲誤発射の可能性もあるため厳重なシールドをすべき。
・温度環境… 要求値例 25~50℃(Delta-Ⅱ)
フェアリングの内壁からの放射熱や、フェアリングが外れた後の希薄空気の摩擦
などによる温度上昇。
・空力加重
フェアリングが守ってくれるため、あまり気にする必要はない。フェアリングが
外れるのは空力加重が0.5Paまで下がってから。
・圧力変化
フェアリング内の空気と外の空気の圧力差をなくすための圧力調整のため起こる。
ペイロードの仕切りとフェアリング間やフェアリング内と外気の圧力差により排気速度が決まる。
・加速度加重
静加重と振動(衝撃)荷重がある。強さの単位はGレベル。実際の加重についてのいくつかの例が
Table18-8にある。軸方向振動加重は1~3G、横方向振動加重は1~5G。
その他にも1段2段終了時に大きな軸方向衝撃が加わる(4~6G)
また、分離システムに使われているロケット点火システム(軽量で高信頼性)による衝撃もある。
・音環境
加速や推進システムによる音響環境。もしペイロードが音響に弱かったら
フェアリングにダンピング機能をつけるということも考えられる。
・軌道投入精度の表がTable18-10。近地点精度は0.2~数km、遠地点は100kmオーダー、軌道傾斜角は0.01degオーダー。
・打ち上げ場とロケットの両方への要求の融和が必要。
・ロケットへのペイロード搭載方法が二つ
・vertical…直立しているロケットの頂上にペイロードを配置する。アクセスの問題だが安全。
・horizontal…ロケットを横向きに配置してペイロードを取り付ける。アクセスは容易だが危険。
最終更新:2007年04月28日 23:40