○水俣市環境基本条例
 わたくしたち水俣市民は、ふるさとの豊かな自然の恵みにはぐくまれ、生活を営んでき
た。しかし近年、産業活動による環境破壊と健康被害の大きさで世界に類例のない水俣病
を経験したことから、環境破睦の悲捗さとその復元の困難さを深く認識してきた。また、
産業公害の発生は、市民連帯感の喪失、経済基盤の脆弱化など地域社会にも大きく影響す
ることを身をもって経験してきた。
 このことは、現境への配慮に欠けた物質的な豊かさや人間のためだけの快適性、利便性
を追及するのではなく、良好な環境の確保に努める責務があることを教えている。もとよ
り、多様な生命の存立基盤である自然環境と社会の営みは密接な関係があり、また、良好
な自然環境が保たれる折り合いの水準を高めていくためには、人間は生物の一員であると
の認識を持つことが求められている。
 わたくしたち市民は、健康で文化的な生活を確保するとともに、循環する自然の生態系
に配慮しながら、経済の発展が自然環境と調和し適正に維持され持続することが可能な社
会を築いていかなければならない。ここに、水俣病の経験を貴重な教訓として、良好な現
境を確保し、海、山、川のある自然環境を市民の生命基盤として次の世代へ引き継ぐため
、この条例を制定する。
第1章総則
(目的)
第1条 この条例は、水俣病の経験を貴重な教訓として、自然環境を継承しつつ市民の健
康で文化的な生活の確保に寄与するために、市、事業者及び市民の責務を明らかにすると
ともに、良好な環境の確保に関する施策の基本となる事項を定めることを目的とする。
(自然環境の継承)
第2条 わたくしたちは、良好な環境の確保は多様な生命の生存が自然の生態系の微妙な
均衡の下に成り立つ有限な自然環境を基盤とするものであること及び自然環境が健康で文
化的な生活に欠くことのできないものであることから、市民共有の生命基盤として次の世
代にこれを継承していくことができるよう努めるものとする。
(自然環境と調和し持続可能な社会の構築)
第3条 わたくしたちは、良好な環境の確保は人の活動が環境に影響を及ぼしつつ行われ
ているものであることから、自然環境に配慮しながら、健康で文化的な生活を確保し、経
済の発展が自然環境と調和し適正に維持され持続することが可能な社会を築いていくこと
に努めるものとする。
(定義)
第4条 この条例において「良好な環境」とは、自然の多様な生命が生存できる自然環境
及び自然環境が持続することが可能で市民が健康で文化的な生活を営むことができる社会
環境をいう。
2 この条例においてr事業者」とは、市内において事業活動を行うものをいう。
(市の責務)
第5条 市は、施策を実施するに当たって、良好な環境の確保に努めなければならない。
2 市は、良好な環境を確保するための基本とたる計画(以下「基本計画」という。)を策
定し、これを実施しなければならない。
3 市は、教育活動及び広報活動等を通じて、市民の環境に関する意識の啓発に努めなけ
ればならない。
(事業者の責務)
第6条 事業者は、この条例の精神を重んじ、その事業活動によって環境を損なわないよ
う自己の責任において、必要な措置を自ら進んで講ずるとともに、市の実施する施策に協
力しなければたらない。
(市民の責務)
第7条 市民は、この条例の精神を重んじ、日常生活において環境に深く配慮し、自ら進
んで良好な環境の確保に努めるとともに、市の実施する施策に協力しなければならない。
第2章施策の基本
(市の施策)
第8条 市は、第5条第2項に規定する基本計画に基づき、次に掲げる事項について必要な
措置を講ずるものとする。
(1)水俣病の教訓の継承に関すること。
(2)公害の防止、廃棄物の適正処理、都市及び農村の景観の形成、文化財の保護その他社
会環境に関すること。
(3)森林、地下水、河川及び海岸の保全及び再生、河川等の水質浄化、海洋の汚染防止、
野生動植物の保護その他自然環境に関すること。
(国及び他の地方公共団体との連携)
第9条 市は、良好な現境を確保するため、必要があると認めるときは、国又は他の地方
公共団体と連携してその施策を推進するとともに、必要な措置を講ずるよう要請するもの
とする。
(水俣病の教訓の伝達と活用による国際貢献の推進)
第10条 市は、人類への警鐘となった水俣病の教訓並びにその教訓に基づいた地域環境の
保全及び再生の取り組みを、広く日本のみならず国際社会に伝えるよう努めるものとする
(自主的な活動の促進等)
第11条 市は、良好な環境の確保に係わる活動を積極的に行うものに対し、その自主的活
動を促進するため必要な措置を講ずるよう努めるものとする。
(財政措置)。
第12条 市は、第8条第1項各号に掲げる良好な環境の確保に関する施策の推進につき、必
要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。
(指導等)
第13条 市は、環境の低下及び悪化を防止し、又はこれを除去するため、事業者及び市民
に対し、必要な指導、助言及び勧告を行うことができる。
2 市は、前項の規定による勧告を受けた者がその勧告に従わないときは、その旨及びそ
の勧告の内容を公表することができる。
第3章水俣市環境審議会
(審議会の設置及び権限)
第14条 水俣市に、水俣市環境審議会(以下「審議会」という。)を設置する。
2 審議会は、市長の諮問に応じ、基本計画その他良好な環境の確保に関する基本的事項
を審議する。
3 審議会は、良好な環境の確保に関する事項に関して、市長に意見を述べることができ
る。
第7編厚生(水俣市環境基本条例)
(審議会の組織等)
第15条 審議会は、委員10人以内で組織する。
2 審議会の委員は、良好な環境の確保に関し、識見を有する者の中から市長が任命又は
委嘱する。
3 審議会の委員の任期は、2年とする。ただし、補欠委員の任期は、前任者の残任期間と
する。
4 審議会の委員は、再任されることができる。
(委任)
第16条 この条例に定めるもののほか、この条例の施行に関し必要な事項は、市長が別に
定める。
附則
1 この条例は、公布の日から施行する。
2 水俣市特別職の職員で非常勤のものの報酬及び費用弁償条例(昭和35年告示第9号)の一
部を次のように改正する。、
別表中r水俣病資料館協議会委員」の次に次の1項を加える。
環境審議会委員
日額
5,900円

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最終更新:2008年09月24日 21:18