○
熊本県環境影響評価技術指針
平成12年12月20日
告示第1011号の2
目次
第1章 総則(第1条・第2条)
第2章 環境影響評価の項目及び手法の選定に関する指針(第3条―第11条)
第3章 環境の保全のための措置に関する指針(第12条―第15条)
第4章 事後調査の項目及び手法の選定に関する指針(第16条)
附則
第1章 総則
(趣旨)
第1条 この技術指針は、熊本県環境影響評価条例(平成12年熊本県条例第61号。以下「条例」という。)第4条第1項の規定に基づき、対象事業に係る環境影響評価の項目並びに当該項目に係る調査、予測及び評価を合理的に行うための手法を選定するための指針その他の環境影響評価及び事後調査を適切に行うために必要な技術的事項について定めるものとする。
(用語)
第2条 この技術指針で使用する用語は、熊本県環境影響評価条例施行規則(平成12年熊本県規則第56号)で使用する用語の例による。
第2章 環境影響評価の項目及び手法の選定に関する指針
(項目及び手法の選定に関する指針)
第3条 条例第4条第2項第1号に掲げる事項については、この章に定めるところによる。
(事業特性及び地域特性の把握)
第4条
事業者は、対象事業に係る環境影響評価の項目並びに当該項目に係る調査、予測及び評価の手法を選定するに当たっては、当該選定を行うに必要と認める範囲内で、当該選定に影響を及ぼす対象事業の内容(以下「事業特性」という。)並びに対象事業実施区域及びその周囲の自然的社会的状況(以下「地域特性」という。)に関し、次に掲げる情報を把握するものとする。
(1) 事業特性に関する情報
ア 対象事業の種類
イ 対象事業実施区域の位置
ウ 対象事業の規模
エ 対象事業の工事計画の概要
オ その他の対象事業に関する事項
(2) 地域特性に関する情報
ア 自然的状況
(ア) 気象、大気質、騒音、振動その他の大気に係る環境(以下「大気環境」という。)の状況(環境基本法(平成5年法律第91号)第16条第1項の規定により定められた環境上の条件についての基準(以下「環境基準」という。)の確保の状況を含む。)
(イ) 水象、水質、水底の底質その他の水に係る環境(以下「水環境」という。)の状況(環境基準の確保の状況を含む。)
(ウ) 土壌及び地盤の状況(環境基準の確保の状況を含む。)
(エ) 地形及び地質の状況
(オ) 動植物の生息又は生育、主な動物群集又は植物群落、植生及び生態系の状況
(カ) 景観及び人と自然との触れ合いの活動の状況
イ 社会的状況
(ア) 人口及び産業の状況
(イ) 土地利用の状況
(ウ) 地歴の状況(土地利用の経緯)
(エ) 河川、湖沼及び海域の利用並びに地下水の利用の状況
(オ) 交通の状況
(カ) 学校、病院その他の環境の保全についての配慮が特に必要な施設の配置の状況及び住宅の配置の概況
(キ) 下水道、し尿処理施設及びゴミ処理施設の整備の状況
(ク) 文化財の状況
(ケ) 環境の保全を目的として法令等により指定された地域その他の対象及び当該対象に係る規制の内容その他の状況
(コ) その他の事項
2 事業者は、現地の状況を確認すること及び入手可能な最新の文献その他の資料により前項第2号に掲げる情報を把握することとし、必要に応じ、県、関係する市町村、専門家その他の当該情報に関する知見を有する者から聴取するよう努めるものとする。この場合において、事業者は、現地の状況の確認の方法及び当該資料の出典を明らかにできるよう整理するものとする。
(環境影響評価の項目の選定)
第5条 事業者は、対象事業に係る環境影響評価の項目を選定するに当たっては、別表第1から別表第30までに掲げる一般的な事業の内容によって行われる対象事業に伴う環境影響を及ぼすおそれがある要因(以下「影響要因」という。)についてこれらの表においてその影響を受けるおそれがあるとされる環境の構成要素(以下「環境要素」という。)に係る項目(以下「標準項目」という。)に対して、必要に応じ、項目の削除又は追加を行うことにより選定するものとする。
2 事業者は、前項の規定による選定に当たっては、対象事業に伴う影響要因が当該影響要因により影響を受けるおそれがある環境要素に及ぼす影響の重大性について客観的かつ科学的に検討するものとする。この場合において、事業者は、事業特性に応じて、次に掲げる影響要因を物質の排出、土地の形状の変更、工作物の設置その他の環境影響の態様を踏まえて適切に区分し、当該区分された影響要因ごとに検討するものとする。
(1) 対象事業に係る工事の実施
(2) 対象事業に係る工事が完了した後の土地又は工作物の存在及び当該土地又は工作物において行われることが予定される事業活動その他の人の活動であって対象事業の目的に含まれるもの(別表第1から別表第30までにおいて「土地又は工作物の存在及び供用」という。)
3 前項の規定による検討は、次に掲げる環境要素を法令等による規制又は目標の有無及び環境に及ぼすおそれがある影響の重大性を考慮して適切に区分し、当該区分された環境要素ごとに行うものとする。
(1) 環境の自然的構成要素の良好な状態の保持を旨として調査、予測及び評価されるべき環境要素(第4号に掲げるものを除く。以下同じ。)
ア 大気環境
(ア) 大気質
(イ) 騒音
(ウ) 振動
(エ) 低周波空気振動
(オ) 悪臭
(カ) (ア)から(オ)までに掲げるもののほか、大気環境に係る環境要素
イ 水環境
(ア) 水象(地下水の水象を除く。以下同じ。)
(イ) 水質(地下水の水質を除く。以下同じ。)
(ウ) 水底の底質
(エ) 地下水の水象及び水質
(オ) (ア)から(エ)までに掲げるもののほか、水環境に係る環境要素
ウ 土壌に係る環境その他の環境(ア及びイに掲げるものを除く。以下同じ。)
(ア) 地形及び地質
(イ) 地盤
(ウ) 土壌
(エ) その他の環境要素
(2) 生物の多様性の確保及び自然環境の体系的保全を旨として調査、予測及び評価されるべき環境要素(第4号に掲げるものを除く。以下同じ。)
ア 動物
イ 植物
ウ 生態系
(3) 人と自然との豊かな触れ合いの確保を旨として調査、予測及び評価されるべき環境要素(次号に掲げるものを除く。以下同じ。)
ア 景観
イ 人と自然との触れ合いの活動の場
(4) 環境への負荷の量の程度により予測及び評価されるべき環境要素
ア 廃棄物等(廃棄物及び副産物をいう。以下同じ。)
イ 温室効果ガス等(排出又は使用が地球環境の保全上の支障の原因となるおそれがある物をいう。以下同じ。)
(5) 文化財の保全を旨として調査、予測及び評価されるべき環境要素
4 第1項の規定による項目の削除は、次に掲げる項目について行うものとする。
(1) 標準項目に関する環境影響の程度が極めて小さいことが明らかである場合における当該標準項目
(2) 対象事業実施区域又はその周囲に、標準項目に関する環境影響を受ける地域その他の対象が相当期間存在しないことが明らかである場合における当該標準項目
5 第1項の規定による項目の追加は、次に掲げる項目について行うものとする。
(1) 事業特性により、標準項目以外の項目(以下この項において「標準外項目」という。)に関する環境影響が相当程度となるおそれがある場合における当該標準外項目
(2) 対象事業実施区域又はその周囲に、次に掲げる地域その他の対象が存在し、かつ、事業特性が次のア、イ又はウに規定する標準外項目に関する環境要素に係る環境影響を及ぼすおそれがあるものである場合における当該標準外項目
ア 標準外項目に関する環境要素に係る環境影響を受けやすい地域その他の対象
イ 標準外項目に関する環境要素に係る環境の保全を目的として法令等により指定された地域その他の対象
ウ 標準外項目に関する環境要素に係る環境が既に著しく悪化し、又は著しく悪化するおそれがある地域
6 事業者は、第1項の規定により項目の削除及び追加を行うに当たっては、前条の規定により把握した事業特性及び地域特性に関する情報を踏まえ、必要に応じ専門家その他の環境影響に関する知見を有する者の助言を受けて行うものとする。
7 事業者は、環境影響評価の手法を選定し、又は環境影響評価を行う過程において項目の選定に係る新たな事情が生じた場合にあっては、必要に応じ第1項の規定により選定した項目(以下「選定項目」という。)の見直しを行うものとする。
8 事業者は、第1項の規定による項目の選定を行ったときは、選定の結果を一覧できるよう整理するとともに、選定項目として選定した理由及び同項の規定により項目の削除を行った場合にあってはその理由を明らかにできるよう整理するものとする。
(調査、予測及び評価の手法の選定)
第6条 事業者は、対象事業に係る環境影響評価の調査、予測及び評価の手法を選定するに当たっては、次に掲げる事項を踏まえ、選定項目ごとに次条から第11条までに定めるところにより選定するものとする。
(1) 前条第3項第1号に掲げる環境要素に係る選定項目 汚染物質の濃度その他の指標により測られる環境要素の汚染又は環境要素の状況の変化(当該環境要素に係る物質の量的な変化を含む。)の程度及び広がりに関し、これらが人の健康、生活環境又は自然環境に及ぼす環境影響を把握できること。
(2) 前条第3項第2号ア及びイに掲げる環境要素に係る選定項目 陸生及び水生の動植物に関し、生息種又は生育種及び群集又は群落の調査を通じて抽出される学術上又は希少性の観点から重要な種の分布状況、生息状況又は生育状況及び学術上又は希少性の観点から重要な群集又は群落の分布状況並びに動物の集団繁殖地その他の注目すべき生息地の分布状況について調査し、これらに対する環境影響の程度を把握できること。
(3) 前条第3項第2号ウに掲げる環境要素に係る選定項目 地域を特徴づける生態系に関し、前号の調査結果その他の調査結果により概括的に把握される生態系の特性に応じて、上位性(生態系の上位に位置する性質をいう。以下同じ。)、典型性(地域の生態系の特徴を典型的に現す性質をいう。以下同じ。)及び特殊性(特殊な環境であることを示す指標となる性質をいう。以下同じ。)の視点から注目される動植物の種又は群集若しくは群落を複数抽出し、これらの生態、他の動植物との関係又は生息環境若しくは生育環境を調査し、これらに対する環境影響その他の生態系への環境影響の程度を適切に把握できること。
(4) 前条第3項第3号アに掲げる環境要素に係る選定項目 景観に関し、眺望の状況及び景観資源の分布状況を調査し、これらに対する環境影響の程度を把握できること。
(5) 前条第3項第3号イに掲げる環境要素に係る選定項目 人と自然との触れ合いの活動に関し、野外レクリエーションを通じた人と自然との触れ合いの活動及び日常的な人と自然との触れ合いの活動が一般的に行われる施設又は場の状況を調査し、これらに対する環境影響の程度を把握できること。
(6) 前条第3項第4号に掲げる環境要素に係る選定項目 廃棄物等及び温室効果ガス等に関し、それらの発生量その他の環境への負荷の量の程度を把握できること。
(7) 前条第3項第5号に掲げる環境要素に係る選定項目 文化財及び埋蔵文化財包蔵地の種類、位置又は区域並びに文化財にあっては指定の区分を調査し、これらに対する環境影響の程度を把握できること。
(手法の簡略化及び重点化)
第7条 事業者は、対象事業に係る環境影響評価の調査及び予測の手法(標準項目に係るものに限る。)を選定するに当たっては、各標準項目ごとに別表第60までに掲げる標準的な調査及び予測の手法(以下「標準手法」という。)を基準として選定するものとする。この場合において、事業者は、次項に定めるところにより必要に応じ標準手法より簡略化された調査若しくは予測の手法(以下「簡略化手法」という。)を選定し、又は第3項に定めるところにより必要に応じ標準手法より詳細な調査若しくは予測の手法(以下「重点化手法」という。)を選定するものとする。
2 簡略化手法は、次の各号のいずれかに該当すると認められる場合に選定するものとする。
(1) 当該標準項目に関する環境影響の程度が小さいことが明らかであること。
(2) 対象事業実施区域又はその周囲に、当該標準項目に関する環境影響を受ける地域その他の対象が相当期間存在しないことが想定されること。
(3) 類似の事例により当該標準項目に関する環境影響の程度が明らかであること。
(4) 当該標準項目に係る予測及び評価において必要とされる情報が、標準的な調査の手法より簡易な方法で収集できることが明らかであること。
3 重点化手法は、次の各号のいずれかに該当すると認められる場合に選定するものとする。
(1) 事業特性により、当該標準項目に関する環境影響の程度が著しいものとなるおそれがあること。
(2) 対象事業実施区域又はその周囲に、次に掲げる地域その他の対象が存在し、かつ、事業特性が次のア、イ又はウに規定する標準項目に関する環境要素に係る相当程度の環境影響を及ぼすおそれがあるものであること。
ア 当該標準項目に関する環境要素に係る環境影響を受けやすい地域その他の対象
イ 当該標準項目に関する環境要素に係る環境の保全を目的として法令等により指定された地域その他の対象
ウ 当該標準項目に関する環境要素に係る環境が既に著しく悪化し、又は著しく悪化するおそれがある地域
(調査の手法)
第8条 事業者は、対象事業に係る環境影響評価の調査の手法を選定するに当たっては、前条に定めるところによるほか、次の各号に掲げる調査の手法に関する事項について、それぞれ当該各号に定めるものを選定項目について適切に予測及び評価を行うために必要な範囲内で、当該選定項目の特性、事業特性及び地域特性を勘案し、当該選定項目に係る予測及び評価において必要とされる水準が確保されるよう選定するものとする。
(1) 調査すべき情報 選定項目に係る環境要素の現状に関する情報又は気象、水象その他の自然的状況若しくは人口、産業、土地利用、水域利用その他の社会的状況に関する情報
(2) 調査の基本的な手法 国、県又は関係する市町村が有する文献その他の資料の入手、専門家からの科学的知見の聴取、現地調査その他の方法により調査すべき情報を収集し、その結果を整理し、及び解析する手法
(3) 調査の対象とする地域(以下「調査地域」という。) 対象事業の実施により選定項目に関する環境要素に係る環境影響を受けるおそれがある地域又は土地の形状が変更される区域及びその周辺の区域その他の調査に適切な範囲であると認められる地域
(4) 調査に当たり一定の地点に関する情報を重点的に収集することとする場合における当該地点(以下「調査地点」という。) 調査すべき情報の内容及び特に環境影響を受けるおそれがある対象の状況を踏まえ、地域を代表する地点その他の調査に適切かつ効果的であると認められる地点
(5) 調査に係る期間、時期又は時間帯(以下「調査期間等」という。) 調査すべき情報の内容を踏まえ、調査に適切かつ効果的であると認められる期間、時期又は時間帯
2 前項第2号に規定する調査の基本的な手法のうち、情報の収集、整理又は解析について法令等により定められた手法がある環境要素に係る選定項目に係るものについては、当該法令等により定められた手法を踏まえ、適切な調査の手法を選定するものとする。
3 第1項第5号に規定する調査に係る期間のうち、季節による変動を把握する必要がある調査の対象に係るものについては、これを適切に把握できるよう調査に係る期間を選定するものとする。
4 事業者は、第1項の規定により調査の手法を選定するに当たっては、次に掲げる事項を踏まえて行うものとする。
(1) 調査の実施に伴う環境への影響を回避し、又は低減するため、できる限り環境への影響が小さい手法を選定するよう留意すること。
(2) 調査により得られる情報が記載されていた文献名、当該情報を得るために行われた調査の前提条件、調査地域の設定の根拠、調査の日時その他の当該情報の出自及びその妥当性を明らかにできるようにすることとし、この場合において、希少な動植物の生息又は生育に関する情報については、必要に応じ、公開に当たって種及び場所を特定できないようにすることその他の希少な動植物の保護のために必要な配慮を行うこと。
(3) 長期間の観測結果が存在しており、かつ、現地調査を行う場合にあっては、当該観測結果と現地調査により得られた結果とを比較できるようにすること。
(予測の手法)
第9条 事業者は、対象事業に係る環境影響評価の予測の手法を選定するに当たっては、第7条に定めるところによるほか、次の各号に掲げる予測の手法に関する事項について、それぞれ当該各号に定めるものを当該選定項目の特性、事業特性及び地域特性を勘案し、当該選定項目に係る評価において必要とされる水準が確保されるよう選定するものとする。
(1) 予測の基本的な手法 環境の状況の変化又は環境への負荷の量を、理論に基づく計算、模型による実験、事例の引用又は解析その他の方法により、定量的に把握する手法
(2) 予測の対象とする地域(以下「予測地域」という。) 調査地域のうちから適切に選定された地域
(3) 予測に当たり一定の地点に関する環境の状況の変化を重点的に把握することとする場合における当該地点(以下「予測地点」という。) 選定項目の特性に応じて保全すべき対象の状況を踏まえ、地域を代表する地点、特に環境影響を受けるおそれがある地点、保全すべき対象への環境影響を的確に把握できる地点その他の予測に適切かつ効果的であると認められる地点
(4) 予測の対象とする時期、期間又は時間帯(以下「予測対象時期等」という。) 供用開始後定常状態になる時期、工事の実施による環境影響が最大になる時期その他の予測に適切かつ効果的であると認められる時期、期間又は時間帯
2 前項第1号に規定する予測の基本的な手法については、定量的な把握が困難な場合にあっては、定性的に把握する手法を選定するものとする。
3 第1項第4号に規定する予測の対象とする時期については、供用開始後定常状態に至るまでに長期間を要する場合又は予測の前提条件が予測の対象となる期間内で大きく変化する場合にあっては、必要に応じ同号に規定する時期での予測に加え中間的な時期での予測を行うものとする。
4 事業者は、第1項の規定により予測の手法を選定するに当たっては、次に掲げる事項を踏まえて行うものとする。
(1) 予測の基本的な手法の特徴及びその適用範囲、予測地域の設定の根拠、予測の前提となる条件、予測で用いた原単位及び係数その他の予測に関する事項について、選定項目の特性、事業特性及び地域特性に照らし、それぞれその内容及び妥当性を明らかにできるようにすること。
(2) 対象事業以外の事業活動その他の地域の環境を変化させる要因によりもたらされる当該地域の将来の環境の状況(将来の環境の状況の推定が困難な場合及び現在の環境の状況を勘案することがより適切な場合にあっては、現在の環境の状況)を勘案して予測が行われるようにすること。この場合において、将来の環境の状況は、県又は関係する市町村が有する情報を収集して推定するとともに、将来の環境の状況の推定に当たって、国、県又は関係する市町村が実施する環境の保全に関する施策の効果を見込むときは、当該施策の内容を明らかにできるよう整理すること。
(3) 対象事業において新規の手法を用いる場合その他の環境影響の予測に関する知見が十分に蓄積されていない場合において、予測の不確実性の程度及び不確実性に係る環境影響の程度を勘案して必要と認めるときは、当該不確実性の内容を明らかにできるようにすること。
(評価の手法)
第10条 事業者は、対象事業に係る環境影響評価の評価の手法を選定するに当たっては、次に掲げる事項について留意するものとする。
(1) 調査及び予測の結果並びに第13条第1項の規定による検討を行った場合においてはその結果を踏まえ、対象事業の実施により当該選定項目に係る環境要素に及ぶおそれがある影響が、事業者により実行可能な範囲内でできる限り回避され、又は低減されており、必要に応じその他の方法により環境の保全についての配慮が適正になされているかどうかを評価する手法であること。
(2) 国、県又は関係する市町村が実施する環境の保全に関する施策によって、選定項目に係る環境要素に関して基準又は目標が示されている場合には、当該基準又は目標と調査及び予測の結果との間に整合が図られているかどうかを評価する手法であること。
(3) 事業者以外の者が行う環境の保全のための措置の効果を見込む場合には、当該措置の内容を明らかにできるようにすること。
(手法選定に当たっての留意事項)
第11条 事業者は、対象事業に係る環境影響の調査、予測及び評価の手法(以下この条において「手法」という。)を選定するに当たっては、第4条の規定により把握した事業特性及び地域特性に関する情報を踏まえ、必要に応じ専門家その他の環境影響に関する知見を有する者の助言を受けて選定するものとする。
2 事業者は、環境影響評価を行う過程において手法の選定に係る新たな事情が生じたときは、必要に応じ手法の見直しを行うものとする。
3 事業者は、手法の選定を行ったときは、選定された手法及び選定の理由を明らかにできるよう整理するものとする。
第3章 環境の保全のための措置に関する指針
(環境保全措置に関する指針)
第12条 条例第4条第2項第2号に規定する環境保全のための措置に関する指針については、この章に定めるところによる。
(環境保全措置の検討)
第13条 事業者は、環境影響の程度が極めて小さいと判断される場合以外の場合にあっては、事業者により実行可能な範囲内で選定項目に係る環境影響をできる限り回避し、又は低減すること、必要に応じ損なわれる環境の有する価値を代償すること及び当該環境影響に係る環境要素に関して国、県又は関係する市町村が実施する環境の保全に関する施策によって示されている基準又は目標の達成に努めることを目的として環境の保全のための措置(以下「環境保全措置」という。)を検討するものとする。
2 事業者は、前項の規定による検討に当たっては、環境影響を回避し、又は低減させる措置を検討し、その結果を踏まえ、必要に応じ、損なわれる環境の有する価値を代償するための措置(以下「代償措置」という。)を検討するものとする。
(検討結果の検証)
第14条 事業者は、前条第1項の規定による検討を行ったときは、環境保全措置についての複数の案の比較検討、実行可能なより良い技術が取り入れられているかどうかの検討その他の適切な検討を通じて、事業者により実行可能な範囲内で対象事業に係る環境影響ができる限り回避され、又は低減されているかどうかを検証するものとする。
(検討結果の整理)
第15条 事業者は、第13条第1項の規定による検討を行ったときは、次に掲げる事項を明らかにできるよう整理するものとする。
(1) 環境保全措置の実施主体、方法その他の環境保全措置の実施の内容
(2) 環境保全措置の効果及び当該環境保全措置を講じた後の環境の状況の変化並びに必要に応じ当該環境保全措置の効果の不確実性の程度
(3) 環境保全措置の実施に伴い生ずるおそれのある環境への影響
(4) 代償措置にあっては、環境影響を回避し、又は低減させることが困難である理由
(5) 代償措置にあっては、損なわれる環境及び環境保全措置により創出される環境に関し、それぞれの位置並びに損なわれ、又は創出される当該環境に係る環境要素の種類及び内容
第4章 事後調査の項目及び手法の選定に関する指針
(事後調査の項目及び手法の選定)
第16条 条例第4条第2項第3号に規定する事後調査の項目及び手法の選定するための指針については、この条に定めるところによる。
2 事業者は、予測の不確実性の程度が大きい選定項目について環境保全措置を講ずることとする場合又は効果に係る知見が不十分な環境保全措置を講ずることとする場合において、環境影響の程度が著しいものとなるおそれがあるときは、対象事業に係る工事の実施中及び土地又は工作物の供用開始後において環境の状況を把握するために事後調査を行うものとする。
3 事業者は、事後調査の項目及び手法の選定に当たっては、次に掲げる事項に留意するものとする。
(1) 事後調査の必要性、事業特性及び地域特性に応じ適切な項目を選定すること。
(2) 事後調査を行う項目の特性、事業特性及び地域特性に応じ適切な手法を選定するとともに、事後調査の結果と環境影響評価の結果との比較検討が可能となるようにすること。
(3) 事後調査の実施に伴う環境影響を回避し、又は低減するため、できる限り環境への影響が小さい手法を選定すること。
4 事業者は、事後調査の項目及び手法の選定に当たっては、次に掲げる事項を明らかにするように努めるものとする。
(1) 事後調査を行うこととした理由
(2) 事後調査の項目及び手法
(3) 事後調査の結果により環境影響の程度が著しいことが明らかになった場合の対応の方針
(4) 県、関係する市町村その他の事業者以外の者(以下この号において「県等」という。)が把握する環境の状況に関する情報を活用しようとする場合における当該県等との協力又は当該県等への要請の方法及び内容
(5) 事業者以外の者が事後調査の実施主体となる場合にあっては、当該実施主体の氏名(法人にあっては、その名称)並びに当該実施主体との協力又は当該実施主体への要請の方法及び内容
(6) 前各号に掲げるもののほか、事後調査の実施に関し必要な事項
附 則
この告示は、平成12年12月21日から施行する。