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054360

「それでね、シンお兄ちゃんにチョコあげたんだ~。」
2月15日、朝。前日の成果を、嬉しそうにみなみに伝えるゆたかの姿があった。
「ところで・・・みなみちゃんはお兄ちゃんにチョコ渡したの?」
「・・・まだ渡せていないけど・・・」
渡せていない、と言ったは渡す意思はあるということだろう。
みなみはいつもの調子でつぶやく。表情は少し曇ってはいたが。
「ダメだよ!ちゃんと渡さないと!みなみちゃんなら大丈夫だよ!」
ゆたかは妙に張り切っていた。親友の恋を応援したい一心なのだろう。その顔はやる気に満ち満ちている。
「分かってる、分かってるけど・・・」
一方のみなみは顔を赤らめて俯いてしまった。
渡したいのはやまやまだったのだ。昨日も空時間の度に3年の教室を覘いていた。
が、いつもシンの周りには誰かが居る。結果・・・渡すタイミングはやってこなかったのだ。
「・・・渡したかったけど、渡せなかった・・・」
「うぅ~、そっかぁ~お兄ちゃん、人気者だからなあ~」
「そう、だから仕方ないから」
「でも・・・」
「大丈夫だから心配しないで…」
親友に余計な心配をかけないためにも、自分を諦めさせるためにも。自分を無理に納得させる。

放課後。
(結局渡せなかったな・・・もったいないけど帰って食べるしかないか・・・)
チョコを見つめながら一人歩く。
密かに気合を入れて作ったチョコだった。
あの人が笑顔で受け取ってくれたなら、そう思いながら綺麗にラッピングした。
(仕方ない、仕方ない・・・)
再び自分に言い聞かせる。その言葉に反比例するように、胸は苦しくなる。
―――その時だった。

ドン

「あ・・・すいませ・・・」
「悪い、俺もボケっとして・・・ってみなみか?」
燃える様な深紅の瞳に散らばった髪の毛。
ぶつかった相手は、今自分が考えていた相手、シン・アスカだった。
アスカ・・・先輩」
突然の事にみなみの頭は少しばかり混乱する。
と共に、反射的に持っていたチョコを隠した。
「ケガないか?」
「私は大丈夫です・・・先輩は・・・」
「ああ、俺なら大丈夫だよ。それなりに鍛えてるし」
ハハハ、とあの人が笑う。想像していた通りの魅力的なものだった。
やはり私はこの人の事が好きなんだ・・・。改めてそう実感した。
同時にゆたかの言葉が頭をよぎる。
ちゃんと渡さないと―――・・・。
「あ、あの!」
「ん?」
「えっと・・・先輩、チョコ・・・」
「チョコ?」
「あの、これ、よかったら・・・」
一世一代の勝負。まさに今のみなみの心情そのものだった。
隠していたチョコをシンの眼前に出す。
それだけの行動だった。だがみなみにとってはとてつもなく大変な事だった。
顔がどんどん熱くなる。まともに相手の顔も見れない。
でも今渡さなければもうチャンスは無いかもしれない・・・その思いと、何より親友の言葉がみなみを突き動かした。
「これ・・・俺に、か?」
「・・・(コク)」
少々驚いた感じのシンの言葉に、うなずく事でしか返答できなかった。
しばしの沈黙が、みなみには何十秒にも何分にも感じられた。
しかしその次の瞬間。
「サンキュ、みなみ。やっぱり、友達からもらえると嬉しいな~。」
照れながら頭をかきながら笑う。その笑顔は、想像より何倍も、何十倍も魅力的だった。

・・・同時に、背中を押してくれた親友に感謝の念を感じずにはいられなかった。
(ありがとう、ゆたか・・・)

帰り道。並んで歩くみなみとゆたか。
「そっか~渡せたんだ!よかったね!」
「うん・・・でもゆたかのお陰だから」
「私は何もしてないよ~」
「・・・いや、ゆたかがいたから・・・だから渡せた」
いつもあまり表情を変えないみなみ。
しかし今日ばかりはその表情が柔らかくなった事にゆたかも気づいていた。

一方・・・
「むぅ~、私が休んでた間にそんなフラグイベントが・・・」
後日その話を聞いたひよりは心底残念そうだったとか。

【end】

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最終更新:2008年02月19日 15:35
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