背の高さこそ若干の差はあるがそのスタイルも近いものがある。
確かに妹の言うとおりかもしれない。親子だけあり、瓜二つだ。
「じゃあお母さんがあたしの制服を着たら高校生に見えるかしら」
「あはは、どんだけー」
二人の他愛も無い会話。
そこに、居間に入ってきた当の母・みきが参加する。
「あら、おもしろそうね。お母さんも着てみようかしら」
『え゛ぇ!!』
「冗談よ冗談。お母さんが女子高校生に見えるわけないでしょう、もう。」
「あ、あはは、、ですよねー・・・」
「ん~でも・・・お母さんなら・・・」
母の冗談について妙に真面目に考え込むつかさ。
「オイオイ、いくらなんでも・・・いやでも・・・あるいは?」
似ているといわれた当人・
かがみも、頭の中で想像してみる。
『意外とイケるかも・・・?』
どこぞの双子タレント宜しく声を合わせて納得する二人。
「もぉ~!お母さんをからかっちゃダメよ!」
恥ずかしそうに二人をたしなめる。
「あはは、ごめんなさ~い」
「ご、ごめんなさい」
二人は年甲斐もなく恥ずかしがる母を微笑ましく思っていた。
が、一方で『制服を着た母はかがみに似ているのか?』という疑問がちょっと気になってもいた。
翌日。
いのり、
まつりは外出中。かがみ・
つかさはまだ学校であるし、父ただおも神社の関係で不在である。
その柊家に、妙に嬉しそうな女性の姿があった。
(うーん、結構イケるかしら・・・?)
居間には、陵桜学園の制服を着たみきが嬉しさ半分・恥ずかしさ半分、といった風で手鏡を覘いていた。
しかしその姿はどこからどうみても多少大人びている高校生にしか見えず、髪を下ろしたかがみにそっくりだった。
(うーん、やっぱり親子だし、ね。似てるわね~)
しみじみと親子である事を実感する。
と、その時だった。不意に玄関の扉が開く音がした。
「ただいま~」
「お邪魔します」
声の主の一人はつかさだった。まずい。非常にまずい。
冗談とはいえ、制服を着ているところをみられるのは母親の威厳にかかわる。
(えっと、ど、どうしようかしら!?)
アタフタしている間に、居間に声の主二人が入ってきた。
「あ、つかさ・・・これはね、えっと・・・」
弁解をしようとするみきが声を出すか出さないかのタイミングで、もう一人の声の主が口を開いた。
「あれ?かがみ、もう帰ってたのか?さっき用事があるとか言ってたのに・・・」
何度かみたことがある顔だった。確か・・・
「ただいま、お姉ちゃん。今日はシンちゃんと宿題するんだ~」
そう、シン・アスカといった。よくつかさとの会話に出てくる転校生だ。
嬉しそうに彼の話題を話すつかさをみきはよく覚えている。
(彼がね・・・ていうか二人とも私って気づかないのかしら・・・)
みきの心配をよそに、二人は机の上に宿題を広げ始めた。
「お姉ちゃん、もし分からないことあったら教えてもらってもいいかな?」
「頼むかがみ、今日の宿題歴史なんだ・・・」
二人は完全にかがみと思い込んでいるのだろう、宿題の応援を要請してきた。
「え、えっと、じゃあ分かるところだけならね」
「わー、ありがとう!」
「すまないな。・・・ってかえらい素直だな・・・」
「かが・・・いいえ、私はいつも素直よ」
みきの中で何かが弾けた。もうこうなったらかがみのつもりで押し通そう。そう決めた。
幸い、つかさ達の言葉によるとかがみは今日は遅くなるらしい。
頃合を見計らって着替えてしまえばきっと大丈夫だろう・・・。
「じゃあ、俺はとりあえずテキストやるから、つかさはプリントの方だな」
「うん、そうするね」
「二人とも、がんばってね」
好きな人と並んで勉強をしている、嬉しそうな娘を見るのは、母としても嬉しいものだった。
(何とか仲良くなってほしいんだけどね・・・・・・よし、じゃあ・・・)
親心とも、お節介ともいえるものだったが、みきの頭にある作戦が浮かんだ。
・・・
「ふぁ~疲れた~」
「何なんだマグナカルタって・・・新型MSの武装か!?」
だいぶ煮詰まっているらしい。つかさのシャーペンはさっきからピクリとも動かない。
シンはブツブツと歴史用語をつぶやいている。二人の頭から立ち上る湯気が見えてきそうだった。
「二人ともお疲れ様。コーヒー淹れてきたわよ。」
「わっ、ありがとうお姉ちゃん」
「おー、サンキューな、かがみ!」
みきの差し入れに場の空気が緩む。しばし休憩・談笑っといった感じだ。
「ねぇ、
アスカく・・・シン。ちょっと聞きたいことがあるんだけど・・・」
「?」
カップのコーヒーを口に含んだシンに対し唐突にみきが問う。
「シンは彼女いるの?」
『ブッ!!』
思わず噴出すつかさとシン。それもそうだろう。
二人にしてみれば、まさかかがみがこんな事をいうとは思いもよらないのだから。
「な、なんだよいきなりアンタは!」
「お、お姉ちゃん、どんだけー・・・」
顔を真っ赤にして照れる二人にみきは続ける。
「何って・・・シンに彼女がいたらちょっといやかなぁーって」
「なっ・・・」
「・・・・」
手を遊ばせながら聞くその姿はまさに恋する乙女そのものだった。
・・・その行動をとるのがかがみならば、だが。
(こいつ・・・こんなヤツだったっけ?)
シンの目の前には眼を伏せながら恥ずかしそうにするかがみ(=みき)がいる。
「ねぇ、いるのかな・・・?」
上目遣いで恥ずかしそうにこちらを見ている。
おかしい、いつものかがみではない。その表情としぐさにはかがみのそれとは違う一種独特の可愛さがある。
その魅力に中てられたのか?シンは恥ずかしくなりつい眼をそらしてしまった。
「そ、そりゃ・・・・・・いないけど・・・」
「え!そうなの!?」
なぜか、シンの隣に座っていたつかさの顔がパァっと明るくなった。
「こっちに来てからはな・・・」
「そうなんだ~、うんうん、そっか~。」
飼い主に頭を撫でられた子犬のように嬉しそうだ。
それも仕方の無いこと、学校でシンは女子の間で密かに人気者だった。
彼の友人にもそれぞれ魅力を持った女子は多いし、なにより・・・
(てっきりこなちゃんと付き合ってるのかとおもってたな・・・)
親友と好きな人が毎朝登校してくるのを、内心複雑な思いで見ていた。
一番近くにいて、一番仲のいい恋敵。
しかし、今それが思い過ごしだったことに心から安堵したのだ。
本当に。本当に嬉しかった。
・・・しかしなぜそんな事で嬉しいのか・・・シンには全然わからなかった。
夕方。
「じゃあ俺は帰るな。またな、つかさ。かがみにも・・・よろしく言っといてくれ」
「うん、分かったよ。また明日ね、シンちゃん」
手を上げて家を出てゆくシン。それに手を振りながら笑顔で見送るつかさ。
亭主を送り出す若妻のようにも見えなくもないか。
「いい子じゃない、アスカ君」
「わっ!お母さん!?いたの!?」
振り返るとそこにはいつの間にか着替えを終えたみきが立っていた。
「失礼ね、ずっといました。」
「え?ずっと??・・・私が帰ってきた時にはでもお姉ちゃんしか・・・」
「あら?かがみはまだ帰ってきてないわよ?」
「え・・・だって一緒に宿題・・・」
状況がよく飲み込めない。そんな顔のつかさ。
頭の上にはハテナがたくさん浮かんでいた。
「あら、家にはお母さん"しか"いなかったわよ?」
「ええーっと・・・じゃ、じゃあまさか私が一緒の宿題してたのって・・・」
「フフフ・・・」
「エェーーーーーーーー!!!??」
「そういうこと♪」
つかさはようやく理解した。自分がシンと共に勉強していたのは姉・かがみではない。
母・みきだったと言うことを・・・。
「ひ、ひどいよぉ~お母さん!」
「ごめんね、お母さんもついつられちゃったわ(場の空気的な意味で」
「う、うぅ~・・・」
「でもよかったじゃない。アスカ君に彼女がいなくって。ね?」
「う。。。。うん、そうだけど、そうだけど・・・」
納得いかない、そんな感じのつかさをみきは強引に?丸め込む。
色々な意味で、母親の凄さを知ったつかさだった。
「あ、この事はかがみには内緒、ね♪」
【終わり】
最終更新:2008年02月19日 15:38