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12-801

「あ、雨…」
校門の外は土砂降りの雨。天気予報の嘘に、私はため息をつく。
鞄の中には折りたたみ傘があるけれどやっぱり雨は憂鬱だった。

そしてなにより、この大雨の中帰ったであろう小さな同級生の健康が心配だった、彼女は傘を持ってたのだろうか?
委員会の仕事など明日に回して、一緒に帰った方が良かった…。
もう一度小さなため息をついて、傘を取り出そうと私は鞄の中に手を入れた

「どうしたんだ?ため息なんてついて」
背後からの突然の声、振り返ると同時に二つの赤い瞳がすぐそこにあった。

「あ…アスカ先輩…」
息遣いを感じられる距離。顔が熱くなるのが自分でも分かった。
ごまかすためにすぐ顔を校門の方へと戻すと、彼も校門の外へと目線を移す。
「あー…雨か…しんどいな。傘無いし…」

「傘…無いの…?」
「あー、置き傘ゆーちゃんに渡しちゃってな」
照れくさそうに後ろ頭を掻きながら彼は柔らかい笑顔を浮かべた。
「あ…」
心配事の一つが消えて私は小さく声を上げた。同時に私の中に一つの案が浮かぶ。
それは私にしては凄く大胆な案だった。

「あの…」
(もし良かったら一緒に傘に入っていきませんか?)
「ん?」
彼の真っ直ぐな瞳に私は息を呑む。口は動いても、声が出ない。

「あの…傘…」
「もしかして…みなみも傘無いのか」
なんとか絞り出した声は、思い切り誤解されていた

「え…ちが…」
「うーん、よし!」
私の声は未だ出ないまま、彼は大きく頷いてこっちを見た。
「駅まで自転車で送るよ。そうすれば少しは濡れなくて済むだろ?」
「え…」

予想もしない台詞。再び顔が熱くなる、今度は火を吹きそうな程に。
「それじゃシンさんが遠回り―――」
「そうと決まれば駐輪場までダッシュ!」

私の言葉を聞かずに彼は校門から駆け出していく。
「ごめんね、あなたの出番はまた今度…」
その後ろ姿を見ながら、私は出しかけた傘を鞄の奥に押し込んだ。

「くーっ、やっぱり冬の雨は厳しいな!みなみ、ちょっとの辛抱だからしっかり掴まっててな」
コクリ
やっぱり声は出ないまま、私はただ頷く。
火照った頬に降る冷たい雨、流れていく風景、目の前には愛しい人の背中。

(もう少しだけ、こうしていたい)

そんなこと、声が出たとしても言えるわけがなかった。

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最終更新:2008年04月14日 13:25
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