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16-9

「ただいま…」
玄関から疲れた声で少年が帰ってきた。
「おかえり~シン。ご飯にする?お風呂にする?それともア・タ・シ?」
こなたは、バイト漬けで疲れ気味のシンに容赦なくジョークをぶつけてみる。
「アタシ。」
「なんですとぅ!」
「冗談だよ。」
疲れた状態でも冗談を冗談で返す辺り、シンも大分こちらの世界の住人になってきたとい
うことだろうか。
「おぉー、冗談か…ちょっと心の準備をしてしまったよ。」
「そりゃあ残念だったな。ところで…ゆたかそうじろうさんは?」
「ゆーちゃんはさっきまで起きてたんだけど、夜更かしは体に悪いから寝かせたよ。
 お父さんは書斎で執筆中~。」
「そっか。じゃあ…とりあえず何か軽く食べるものあるか?」
「はいはい、このこなた様に任せなさい!」
「悪いな、こんな時間に。」
「アハ☆この家の台所をシンに貸したらめちゃくちゃにされそうだしね。
 ちょっとまってて、軽く何かつくるから。」
そう言うと、半纏姿のこなたは台所へ消えていった。


「ある~晴れた日のことぉ~っと。でーきたっと。」
軽食、というには不釣合いな、立派な食事ができあがった。
こなたはたった今出来上がった料理を盆に載せ、シンのいる居間へと料理を運ぶ。
「できたよー、シン・・・って」
「ZZZzz・・・」
「あれま。この人、あたしの料理ほっぽって寝てるよ。」
そこには…帰ってきた時のままの格好で壁にもたれかかり、眠るシンの姿があった。
「ハァ…もう、そんなとこで寝たらかぜ引いちゃうよ~?」
「ZZz…」
「・・・。」
こなたの問いにもまったく反応がない。
(仕方ないか、ここ最近忙しそうだったからね)
そうじろうはいいと言っているが、シンは居候という身の上であるためバイト代を泉家に入
れていた。
それら掛け持ちのバイトがここ数日特に忙しかったらしい。遅い帰宅が続いていた。
(まったくこのツンデレ坊やは…)
そっとシンの顔に触れてみる。散らばった髪と白い肌。
この少年が、あのZAFTのエースのシン・アスカなのだ。
(…もっと…もっとゆるくなってくれなきゃ駄目だよ。
あっちじゃいっぱい辛い事があったんだから。
もっとゆるくて、もっと楽しい生活をおくってもらわなきゃ…)


―――シンがこちらの世界に来たあの日からだった。
『自分が彼をもっと楽しませなければならない』
はじめは、そんな義務感からだった。
(みんなと知り合って、友達になって。そんでもってフラグもいっぱい立てちゃってさ。)
まるでアニメのような展開に、当初は面白がって煽ったりもしていた。しかし…
(なんで、なんであたしにまでフラグ立てちゃうかな…)
ポスッ、とシンの肩に顔を預ける。寝息を立てる少年の息遣いがすぐ近くに聞こえている。
(学校では無理だけど…今だけ、今だけは…私のシン、だよね?)
顔を上げ、すぐ近くにシンの顔を見る。
象徴でもある赤い瞳は見えないが、その顔は安らいでいて優しい寝顔だった。
「…」
全く持って無意識の行動だった。
気がつくと―――彼の唇に自分の唇を重ねていた。
なぜだかわからない、突発的に出てしまった行動だった。
「あっ、ごめん…」
こなたは我に返り、すぐに顔を離す。
しかし。返事は規則正しい寝息のみだった。
「あ、アハハ…ですよねー…」
顔を真っ赤にしながら一人で照れてみる。
(なんでこんなことをしたんだろう…。あたしどうかしてるよね…)
家族。
それがシンとこなたの今の関係。その関係を変える力は、今のこなたには無いかも知れな
い。
(今はまだ無理だよね…でも…いつかは…きっといつかは…!)



「ほらっ!いつまで寝てるんだ!このラッキースケベ!」
「ふ、ふもっふ!?」

やがて、いつかは・・・。


【泉こなたのわがまま】終わり


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最終更新:2008年06月02日 15:27
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